ルポvol.21 【ヤングケアラー2】
家族などの世話を担う「ヤングケアラー」は、「可哀そうな子」ではない。
「任されてしまう子」である。賢く、心優しいゆえに。
宮崎駿監督の映画『となりのトトロ』でいうなら、幼い妹のメイの世話を焼く、しっかり者の姉サツキを連想する。入院して不在の母親の役割を背負って、人知れず悩んでいる。父親も家族も、彼女の苦しい心中に気づいていない。
ニュースで聞く機会が増えたものの、まだ十分に認知されていない「ヤングケアラー」。ケアが必要な家族の世話をしている18歳未満の子どものことである。サツキと違って、トトロも村人も助けに来てくれない孤立した状況で、過重すぎる仕事を担い、家族から寄りかかられている存在だ。
8月22日開催の「ヤングケアラーシンポジウム」を丸ごと記録
2021年8月22日、ヤングケアラーの現状や課題を伝えるシンポジウムが、足立区で初めて開催された。主催はヤングケアラーシンポジウム実行委員会、共催はあだち子ども支援ネットと足立区竹の塚地域学習センター。
今回、その模様を、4階ホールで即席につくられたスタジオに足を運んで取材した。
当初は、同センターの会場に、100名の参加者を集める会となる予定だったが、コロナ禍でオンライン開催に切り替わった。
第1部は、立正大学社会福祉学部教授で、一般社団法人日本ケアラー連盟理事の森田久美子さんの講演。「1990年代から支援が行われてきたイギリスの状況」と「日本での調査報告」から見えてきた課題を話された。イギリスの国を挙げての法律整備や支援メニューが重厚である。日本のアンケート調査では、この国のヤングケアラーがかなり多いことに改めて驚く。
第2部は、「当事者・支援者によるお話と意見交換」。企画者である、あだち子ども支援ネットから、代表・大山光子さん、平島芳香さん(元ヤングケアラー)、橋本久美子さん(ソーシャルワーカー)がそれぞれ講演。後にその3名と森田さんとの意見交換が行われた。当事者の平島さんから、従来の支援への違和感が率直に語られ議論が深まった。行政、専門家、地域の大人が、ヤングケアラーをどう支え、寄り添っていくか、本音トークが次々と出て、聞きごたえあり。
(取材は、2021年8月22日、足立区竹の塚地域学習センターにて行いました)
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