公務員だからつくれる支援の「形」

行政

ルポvol.20  【行政1】

「私の上司は、スーパー課長なんです!」。江戸川児童相談所の児童福祉司・白田有香里さん(vol.16にて記事掲載)は、きっぱり言う。「どんな人ですか?」と尋ねると、「意見したら『それいいね! 区長に提案してくる』と、自電車に乗って区役所までピューッと…」。

 

紹介いただいた同児童相談所援助課長の上坂かおりさんは、対面してみれば、にこやかな人だった。これまで、江戸川区の消費者センター、保育課、生活保護課の窓口で、何万という人たちの相談を受けてきたというが、いろいろな人生のこんがらがった話に、じっくり耳を傾けてきた聞き上手の雰囲気が漂う。

 

相談窓口で聴いた何万人の声を受けて、支援事業を企画

しかし、支援事業のことになれば、熱をおびた話し手に変わる。

本庁の子ども家庭部児童女性課(現:児童家庭課)に勤務していたとき、主にひとり親家庭を対象とした学習や食などに関する支援事業をさまざまに企画し、次々に立ち上げて軌道に乗せたという。画期的に思えたのは、ボランティアが直接家庭に入ってサービスを行う仕組みをつくったこと、事業の運営を有能な民間企業に委託したこと。江戸川児童相談所に異動したときは、その事業を利用し、家庭復帰等をした子と家庭を支える「処方箋」として活用されていること。

 

これらの事業が成功しているのは、上坂さんが、長年の窓口業務より保護者のニーズを把握し、事務職として行政手続きに熟知した上でシステムを構築しているからだと思う。加えて、行政組織内外を縦横斜めに駆け巡り、キーパーソンや団体をつなげてくネットワーク力がすごい。

やはり「スーパー公務員」な人である。

ただ、こうも思う。困った人が目の前にいる。自分の仕事で、助けられることがある。いかにうまくそれができるかと、日々、ひたすら考えて奔走しているうち、いろんな支援の「形」をつくってしまった。それが、上坂さんの軌跡ではないかと。

 

(上坂かおりさんへのインタビューは、2021年7月27日に行いました)

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