精神障がい者が、「家庭」をつくるために

ヤングケアラー

ルポvol.40-2 【ヤングケアラー5】

<講演・横山惠子さん>

精神疾患は、5人に1人発症

琉凪さんの話に、本当に胸を打たれてしまって。私たち支援者が代弁するよりは、当事者の方にお話しいただくのが、一番ストレートに心に響くと思います。精神疾患を持ちながら子育てすることや、親子支援、家族丸ごとの支援が、どんなに大切なことでしょう。

 

精神疾患は、誰もがかかりうる、本当にありきたりな病気です。日本で419万人、30人に1人存在するとされ、生涯を通じては5人に1人が発症します。年代では、10代半ばで半分、20代半ばで4分の3。しかし、これは回復する病気なのです。

 

精神疾患を持つ人たちが、どんな風に恋愛し、結婚、子育てしているか。彼らの恋愛・結婚は、これまで支援される機会がありませんでした。当然、子育て支援も乏しい。ここ最近、「ヤングケアラー」は注目されてきましたが、親の支援への視点は薄いなと思っています。

 

リカバリー(回復)できる病気

人を愛する、家族を持つということは、当事者の回復にとって、とても大切なことです。

 

「リカバリー(回復)」という言葉があります。精神疾患のある人のリカバリーということを、アンソニーという人が言っていますが、疾患による限界があっても、満足のいく、希望のある、そして貢献する生き方ができると。

 

リカバリーの段階には、①希望、②エンパワメント(力を引き出すこと)、③自己責任、④生活の中の有意義な役割、があります。「生活」の中に、仕事、愛すること、夫婦の関係、家族、子ども、スピリチュアリティ、生きがいが含まれるのです。

 

精神障がい者も、結婚を望む

どれくらいの人が結婚しているかですが、国民全体の有配偶率は、40歳から44歳の男性が6割、女性が7割。では、精神障がいを持つ方となると、やはり大変少なくて、調査時点で、海外15.1%、日本4.6%となります。精神障害者保健福祉手帳を持っている人たちで、65歳未満の方は27%。このように、精神障害者の結婚・同居率は低い。発症年齢が低い場合ほど、その傾向にあります。

 

2017年の障害者総合研究所による研究ですが、恋愛に関する意識調査では、交際中の人は2割。つまり、8割が交際していませんが、その7割が交際を希望しているということです。

 

また、交際の経験のない人は、身体よりも精神の障がい者が多い。一方で、出会う場が少ないということで、当事者が運営する「めんちゃれ」(横浜)という婚活サイトや婚活パーティーを使う方もおられる。問題は、「交際が怖い」ということです。交際の経験がないほど、精神疾患が交際の支障になると感じてしまう。その支援では、ただ出会いの場をつくるだけでなく、実際に、結婚、子育てしている方のお話を、十分にお伝えしていくことが大切なのかなと。

 

当事者が恋愛することに対して大変消極的というよりは、周囲が抑制する傾向もあります。例えば、作業所の中で「恋愛禁止」としたり、親御さんも「症状が悪くなるのでは」と心配して止めたりしてしまう。実際に結婚した方に聞くと、結婚の際に反対されたり、妊娠すると「堕した方がいいんじゃないか」と露骨に言われたというケースもありました。

 

人を愛するということは、人間らしく生きること。大切な人や家族の関係も、良質にしていきます。やはり、そのことを応援することが大事なのです。

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