「ヤングケアラー」ってなに?  IN足立

ヤングケアラー

【日本の場合】

アンケート調査で「中高生25人に1人が、ヤングケアラー」

日本では、これまでヤングケアラーの存在が国にはあまり見えておらず、長らく対応自体がなされてきませんでした。ようやく2021年4月、内閣府が、「子供・若者育成支援推進大綱」において、虐待、貧困、ひきこもりの子どもや若者と共に、ヤングケアラーに向けた支援に取り組む方針を示しました。同年5月には、ヤングケアラーへの支援施策を提示。これをまとめるにあたって、国は、ヤングケアラーの実態調査を行いました。

この結果から、日本での実態を見ていきたいと思います。

 

調査は、2020年12月21日からのもの。全国の中学校、全日制高校、定時制高校、通信制高校を対象にアンケート調査を、さらにその学校に所属する中高生13,777人にweb調査を実施しました(参照文献:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2021)『ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)』)。

 

 

「世話をしている家族の有無」を尋ねると、「いる」と回答したのは、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生で4.1%。この結果から、25人に1人がヤングケアラーに該当する子どもだと推定。国の担当者は、「こんなにいるのか」と驚かれていました。

 

では、ヤングケアラーは、誰をケアしているか。

いずれの学校種でも「きょうだい」が最も高く、ついで「父母」となっていました。

世話を必要としている家族(父母)の状況では、「身体障害」が最も高い。精神疾患や依存症、要介護の状態にある人も多くなっていました。その世話の内容では、いずれの学校種でも「家事(食事の準備や掃除、洗濯)が最も高い。また、精神疾患の親御さんが多かったことから、感情面のケアをしているお子さんも少なくありません。

祖父母がケアの対象の場合、いずれの学校種でも、「高齢(65歳以上)」が最も高く、「要介護」「認知症」も多い。

 

毎日深夜までケアするも、6割が「相談しない」と回答

どのくらいの頻度や時間でケアをしているのか。

いずれの学校種でも、世話の頻度は「ほぼ毎日」の割合が最も高い。また、平均1日あたりに世話に費やす時間については、平均4時間ほど。学校から帰宅して、すぐにケアに取りかかっても、自分の用事も含め、終わるころには深夜近くになるでしょう。

 

子どもは、世話をすることで、どのような影響を受けているか。

世話をしている家族が「いる」場合、「いない」場合に比べ、「遅刻・早退」「欠席」など、

すべての項目で負担になっているとの回答率が高い。ケアをすることで、子どもは学校教育の機会を逃し、健康状態がかんばしくなくなる、同年代の仲間との関係を築く機会が制限されやすく、孤立しやすい状況にある傾向に思われます。

 

世話について相談した経験があるか。

「ある」が2~3割、「ない」が5~6割。相談した相手は、「家族」が最も高く、次いで「友人」が高い。ヤングケアラーは、ケアの専門家や行政側の具体的な支援を届けられる人とつながっていない状況です。

 

支援の考え方を社会で共有し、子どもの権利を守る意識を

このような状況を見ると、ヤングケアラーの社会的認知を高めていかなければなりません。ただ、大人がするような重いケアが問題であるということ指摘すること。また、親をバッシングしたり、「可哀そうな子ども」とみなすニュアンスがあると、忠誠心を持って家族を支えるお子さんの誇りを傷つけてしまいます。

 

特に支援で柱の一つとなるのは、子どもの権利(子どもの権利条約/国連総会で採択され、1990年に発効)です。子どもには、「健康を守る権利」「教育を受ける権利」「育つ権利」などさまざまな権利があります。これらが侵害されている子どもに、その権利が守られるために必要な支援が行われ、権利の回復・補償に努めなければなりません。

 

子どもの意見表明の権利もあります。子ども自身がどうしたいのか、どういう希望を持っているのかということを、子どもの声に耳を傾けて一緒に考えていくことも、支援の起点となります。

 

市町村に相談窓口を設け、学校でカウンセリングの機会を

私が所属している一般社団法人日本ケアラー連盟では、さまざまなヤングケアラーの支援策を、提案しています。

 

まずは、早期に発見すること。ヤングケアラーを発見できる可能性があるのは、子どもの身近にある学校と、医療・保険・福祉の関係の支援者、ご家族の周りにいる地域の人です。このような人たちにヤングケアラーのことを正しく理解してもらい、その発見に協力してもらうことが必要になります。

 

そして、発見されたヤングケアラーを支援につなげていくため、相談・通告できる相談窓口を、市町村に設けることです。そして、行政機関が中心となり、状況を把握して支援計画を立てること。

 

学校に協力してもらい、学習機会を逃しがちなお子さんに柔軟に対応し、また、安心して話せる場所、カウンセリングの機会を設けること。また、スクールソーシャルワーカーなどを通して、学校、家庭、保健、福祉、医療など、さまざまな機関をつないで、多機関で、家庭をサポートすること。

 

子どもらしく遊べる場所、過ごせる場を、地域の子ども支援団体のみなさんが協力してつくること。

 

ぜひ、ヤングケアラーが未来を描ける学校と社会の構築に向けて、一緒に考えていただければ大変嬉しく思います。

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