ヤングケアラー支援は、「家族まるごと」で

ヤングケアラー

ルポvol.40-1 【ヤングケアラー5】

今やブームとさえいえる「ヤングケアラー」。救いの手が差し出されつつ、「家族の世話をする、可愛そうな子ども」というイメージが独り歩きしている。そして、「子育てや家事ができない親」が、非難を浴びる。「支援」という名目で、その親子の特定が、まるで「犯人探し」の様相を呈し始めている。もっと実像を、見なければならないのではないか。

 

精神疾患の親の視点から考える

そんな中、「親の気持ち、子どもの気持ち」をズバリ聞いてみようと、オンライン企画を立てたのが「あだち子ども支援ネット」(代表・大山光子さん)。2023年1月21日、「ヤングケアラーLab」の最終回(昨年5回)として、ポルテあすなろ(足立区六月町)にて開催された。精神障害者の親の視点で、親子それぞれの立場が具体的に話される。

 

前半の講演者は、精神障害者の出産や育児を応援する「子育てピアサポートグループゆらいく」代表の水月琉凪さん。自らが双極性障害・ADHDという精神障害を抱える親だ。講演では、当事者としての心情を率直に打ち明ける。家族や周囲による病の無理解から、母子共に追い詰められていく経緯が苛酷だ。水月さんが提案する支援策は、病の渦中にあったとき、切実に望んだことである。

 

後半の講演者は、「精神疾患の親を持つ子どもの会(こどもぴあ)」を支える横浜創英大学教授の横山恵子さんだ。精神疾患者の恋愛・結婚の意識・現状・課題について、統計を交え報告しつつ、精神障害がある人が子どもを育てる意義を説く。そして、必要なのは、専門家・地域社会・当事者がつながった「家族丸ごと支援」であることも。

 

「ヤングケアラー」は、「家族とは何か」を問う物語

講演を聞いて、思う。水月さん親子が、孤絶した状況の中、生き抜けたのは、お互いに掛け合った「言葉」が支えになったからだ。横山さんが、支援の本当の意義を知ったのは、出会ったお子さんの「言葉」からだった。「ヤングケアラー」という言葉の背後に、深淵な人間ドラマがある。それは、「家族」の意味を大いに揺さぶり、考えさせてくれる。

 

(以下の文章は、2023年1月22日、あだち子ども支援ネット主催で行われた「ヤングケアラーLab」での講演内容をまとめたもの)

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