江戸川区に、国際スクールを

外国人

ルポvol.22  【外国人4】

“インド系日本人初の政治家”よぎさん

象の顔を持つヒンドゥー教の神様ガネーシャが、着飾って鎮座されている。

その福徳の神をお迎えする祭りの当日、東葛西にある江戸川印度文化センターのホールは、インド独特の色彩で華やいでいた。東京都内の自治体で、インド人人口が最大(5000人を超える)である江戸川区のあちこちの家々で見られる光景かもしれない。

 

案内する同センター館長のプラニク・ヨゲンドラさん自身は、インド出身者らしい風貌だが、七福神の「エビスさん」にどこか似ている。目元に、温厚な人柄が漂う。愛称は「よぎさん」。

 

2019年5月から2021年6月まで、「インド系日本人初の政治家」である江戸川区議会議員として活躍。7月の東京都議会選挙で20,109票を得て落選するも、インド人に限らず外国人コミュニティを駆け巡り、いろんな人たちの困りごとに耳を傾ける日々は変わらない。インド各州のコミュニティをまとめた全日本インド人協会の設立者で、初代会長でもある。

 

江戸川児童相談所の上坂かおりさん(vol.20)に取材した際、同施設にかかわるインド人・外国人の子どもと家族のために通訳などでひと肌脱ぐ、よぎさんのことをうかがう。この親身で多忙な人に、外国人コミュニティの課題を教えてほしい思い立ち、取材を申し込むと、すぐに快諾いただいた。

 

インド最高峰の大学に学び、金融界トップで働く

よぎさんは、知性の人である。

学歴と経歴がものすごい。「東のオクスフォード」といわれるインド・プネ大学に学んで、山ほど学士号と修士号を取得。物理学と数学、語学では日本語とドイツ語、ついで経済学の膨大な知識を、頭にすっぽり収めた。平行して民間学校に通い、ITのディプロマ(資格免状)を取得した19歳のとき、もうIT企業で働き始める。

 

1990年代の後半に国費で2回日本に留学し、2001年に大手IT企業から日本に派遣されるなり、この国に魅了されたという。2003年から日本に滞在し、グローバル大手IT企業に勤務。2010年にみずほ銀行国際部の監査役に就任し、以降、銀行業界で活躍する。2019年に楽天銀行企画本部の副部長に就任。

 

銀行界トップの「仕事人」として走り続ける人生もありえた。

しかし、「外国人コミュニティと日本の架け橋」を目指し、やがて専念する。

 

「日本の教育を変えたい」と、政治の世界に

2005年、江戸川区のインドコミュニティに住まい、地元の自治会に積極的に参加。2011年の東日本大震災では、東北の被災地に飛び、在日インド人たちとカレーの炊き出しを行った。

2012年、日本へ帰化。同年、東葛西で母親と共同でインド料理店「レカ」を開店する。これまでにないインドの「おふくろの味」が評判を呼び、メディアにも取り上げられる人気店に。江戸川区産業省にも表彰される。2016年には、店舗兼自宅内の2階に、「江戸川印度文化センター」を開設。以降、コロナ禍で一時休館するまでの3年間で、毎週のヨーガ、言語教室、インド音楽教室をはじめとするライブやイベントを150回ほど開催した。

 

そして、政治の世界にチャレンジ…。

 

つまり、よぎさんは、異国人の視点を持ちながら、日本における、企業、地域社会、政治の世界を、20年かけて体験してきた。だからこそ、この社会の弱点をズバリ突く。

活動のメインテーマは、「多文化共生」「防災」、そして「教育」。離婚後、ひとり親として育てていた息子さんが学校でいじめにあう。その怒りが、政治家よぎさんの出発点だった。

 

(よぎさんへのインタビューは、江戸川印度文化センターにて、2021年9月9日に行いました)

コメント

タイトルとURLをコピーしました