労働組合が、子ども食堂で「学習支援」

貧困

ルポvol.54-3 【貧困】

 

労働組合が、子ども支援?! 実は、公的な組織の地域活動には、大きな可能性を秘める。

その実例を、連合東京(日本労働組合総連合会東京都連合)の真島明美さんが報告。話題は、同会を母体とする「子ども若者支援プラットフォームHOPEの取り組み」を軸に、足立区をはじめとする東京都内の「子ども食堂での学習支援」について。

 

この講演は、2月13日、般社団法人「あだち子ども支援ネット」(代表・大山光子)が主催した「コネクトリンクフォーラム「貧困を語る」で行われた講演の1つ。NPO法人「友愛会」の田中健児さん、キュレーター・エデュケーターの川原吉恵さんに続く第3段。


<講演・真島明美さん>

「足立区」に受け入れられて

連合東京の真島明美でございます。「子ども若者支援プラットホームHOPE(通称ホッペ)」についてお話いたします。

 

その前に自己紹介ですが、私、実は上京して初めて仕事についたのが足立区なんです。ここにはとても馴染みがありまして。その当時から労働組合の活動をしてましたから、前の会社を退職するとき、「連合東京(日本労働組合総連合会東京都連合)があるよ」と紹介されて、現在に至ります。足立区は、人を受け入れてくれる土地柄というか、当時の同期の人たちとの付き合いも続いています。

 

なぜ、労働組合が「子ども食堂」?

では、私どもの取り組みについての説明に入ります。「なぜ労働組合が「子ども食堂」を?」と思われるかもしれません。連合(日本労働組合総連合会)は、働く者の仲間でつくる組織で、全国では約700万人、連合東京(同会東京都連合会)では約125万人の組合員を擁しています。「労働組合」といえば、「春闘(春季生活闘争)2024」「賃上げ」などを連想されるでしょう。もちろん実際、政治活動もしています。私が所属しているのは、社会貢献の取り組みをしている部署になります。

 

「連合東京」では、以前から、「子どもの貧困」や「若者の就労問題」に対する課題認識はありました。コロナ禍になり、子ども食堂の運営ができなくなると、何とかしなくてはと。背景にあるのは「貧困の連鎖」です。親の収入減で、子どもたちが受験や就職活動を諦めてしまうような状況を断ち切らなければならない。将来、その子どもたちが、われわれの組合員になるかもしれないわけだし。彼らの未来を、われわれとしてサポートできることは何なのか。そう考えて2021年11月に立ち上げたのが、「子ども若者支援プラットホームHOPE」、通称「ホッペ」です。事業内容としては、「教育支援」と「就労支援」が柱です。

 

学習支援は、NPO法人「キッズドア」と連携

設立後すぐ、「コロナ禍で困っている子ども食堂を支援しましょう」と組合員に呼びかけると、計約230万円ほど集まりました。連合東京のブロックでは「東エリア」にあたる足立区でサポートが必要な団体を募ると、手を挙げた中にNPO任意団体「”がきんちょ”ファミリー」(代表・大山光子)もおられまして。全部で20団体に支援しましたが、その額は各々10万~20万円ほど。

 

では、それでいいかというと、そうではなく。かかわるうちに、子ども食堂と平行しての「学習支援」のサポートを求める声も、「がきんちょ」含めいろいろな団体からお聞きすることに。私たちにはノウハウがないので、この分野で先進的な活動をされるNPO法人「キッズドア」のスキームを提供してもらうことになり、「がきんちょ」のボランテイアの方にも、そのスキームに添った学習支援の研修を受けていただきました。

 

「ホッペ」を支える団体は、母体として「連合東京」、そして日頃から連携している「東京労働者福祉協議会」と「東京労働者福祉基金協会」。さらに児童養護施設を退所したお子さんの就労などをサポートする「ユニバーサル志縁センター」。また、「キッズドア」には団体会員になっていただき、現在子ども食堂10団体を支援。賛助会員は、連合東京加盟組合の29団体。これらの組織から寄付金をいただき、運営しているということです。

 

支援者の研修をサポート

現在、「ホッペ」が、東京都内で学習支援を実施する子ども食堂は3団体。足立区の「がきんちょ」をはじめ、目黒区の「こどもば」、港区の「みなと子ども食堂」です。

 

私たち組合としてのリソース(社会資源)を使い、例えば文具メーカー「コクヨ」の組合を通し、ノートや筆記用具などの提供をお願いしたりも。

 

子ども食堂側が学習支援を利用される際は、まず「キッズドア」から、「運営マネージャー」と「ボランティア」の研修を受けることが前提に。「ホッペ」としては、研修費用を「キッズドア」に、研修への交通費を団体にお支払いします。また、学習支援立ち上げ後半年間は「キッズアド」に伴走支援してもらい、運営のサポートをお願いしています。

 

「学習習慣の定着」と「就労支援」

この「ホッペ」の学習支援は、子どもたちの「学習向上」よりも、「学習習慣の定着」が目的。また、各団体の特性に合わせた内容に。「がきんちょ」は、お弁当を食べる傍ら、居場所づくりを兼ねた「学びの場」を、子どもたちに提供。目黒の「こどもば」では、小・中学生の学習に力を入れ、将来の「受験」に備えるためにも、学習習慣を身に着ける。「みなと子ども食堂」では、小学生が学習指導を受けるため、毎週月曜日通うとのこと。

 

「就労支援」は、私たちの得意なところかもしれません。さまざまな会社の組合員が所属するので、大人の働く姿を見学する機会をつくりやすいからです。2022年は、「ヤマト運輸」の組合に協力してもらい、羽田の「クロノゲート施設(複合物流施設)」にて物流の仕組みを見学。2023年8月には、「日立ビルシステム」の「亀有総合センター」を、「がきんちょ」のお子さんたちとうかがいました。エレベーターやエスカレーターを製造し、その保守点検をしている研修所です。今後も施設見学会の提供を続けていければなと。

 

10年間でやるべきこと

最後に、今後の課題や展開についてお話します。

  • 実は「ホッペ」の事業ですが、10年間の時限立法。支援している子ども食堂が、やがて自立していくことが目的です。当初は、毎年、学習支援を行う団体を1団体ずつ増やしていく計画でしたが、コロナ禍の長期化で軌道修正。やっと状況も落ち着いてきましたので、今ある団体の充実をまずは努めていく。
  • 「居場所づくり」を本格的に実施する。「子ども食堂」だけでなく、いろんな形で協力いただけるボランテイアの発掘や育成を行う。
  • 子どもたちの先の保護者のケア。例えばシングルマザーの就労などにも目を向けていく。
  • 「職業体験会」を実施していく。小学生では「体験会」でいいと思いますが、一方で、若者(中高校生から20歳前後)には、「就労」に向けた体験会や企業訪問を行いたい。
  • 安定的な財政の確保。現在、加盟している組合の寄付金で賄っていますが、それには周知活動が重要に。
  • 「子ども食堂の運営」と「連合の地域活動」を結びつける。

 

ここ足立区の「東部エリア」で働いている組合員さんも何十万人もいます。その人たちが、もっと日常的に子ども食堂とつながる機会があれば、私たちの活動はさらに実り多いものになると思います。

 

(文責/ライター・上田隆)

 

 

 

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