ヤングケアラーが、訴えたいこと

ヤングケアラー

ルポvol.32 【ヤングケアラー4】

ワンワン泣く3歳の女の子の手を、小さな袖に通す11歳の少年。アイロンをかけ、洗物をたたみ、掃除機をかけるのも彼だ。ひとり親の母が会社勤務している間、妹と5歳の弟を身ぎれいにし、家事を一手に引き受けている。手際もいい。奇妙なのは、彼だけ身なりが、ちぐはぐなこと。エアコンで冷やした夏の部屋で、冬のコートを着こみ、洗わない髪がごわついている…。

 

「自分のかっこを構わないのは、ふてくされてるから?」と尋ねれば、「そうかもね(笑)」と「あだち子ども支援ネット」代表理事の大山光子さん。突飛なかっこをして、母親に自分の存在を訴えてるのでは、とふと思う。

 

「ヤングケアラーLab」に、イラストを5枚描き、実像を紹介

同会がオンラインで行う「ヤングケアラーLab」で使用するイラストを描いてほしいと大山さんより、開催2カ月前に依頼された。ヤングケアラーの状況紹介の際に添えるのだという。会には、支援者や専門家、福祉系のプロの方々が参加されるので、リアルに説明したいとも。そこで、彼らのふるまいの細部をうかがう。取材の後、イラストにするうち、少しだけその気持ちに近づけたような気がした。

 

7月28日に開催された会では、さまざまな立場の専門家によるざっくばらんな意見が交わされた。その内容は、N-styleの野際里枝さんが記録されたグラフッィクレコーディングで閲覧できるので、ぜひ見てほしい(https://97e1j.hp.peraichi.com/)。

 

本ブログにおいては、大山さんによる1時間の講演を採録。これまで何度も取材させてもらったが、ご自身が長年付き合われたヤングケアラーの実像を、公の席で語られるのは初めて。幸い、私が描いた5枚のイラストがそのエッセンスを伝えることになった。ならば講演を文章にし、合わせて記録として残したいと、後日ご本人に申し入れて許可を得た。

 

「事例ではない」という真意を考えてみた

講演の冒頭で、大山さんは、ヤングケアラーの「事例というわけにはいかない」と話を進められた。複雑な家庭事情の具体的事実は、プライバシーの問題から当然公開できない。しかし、紹介したのが「事例」ではなく、「出逢い」という言葉に置き換えるとしっくりくる。行政と専門家に積極的にかかわり連携しながらも、「地域の人」に徹するその姿勢を思えば。

 

また、大山さんを通して語られる子どもたちの声に、耳を傾けてほしい。

 

(以下の記事は、2022年7月28、あだち子ども支援ネット主催「ヤングケアラーLab」での大山光子さんによる講演をまとめたもの)

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