学校のいじめ対応、何が問題か?

いじめ

ルポvol.56 【いじめ】

 

教師も学校も、「いじめ」にかかわろうとしない?

今、学校は、はたして安全な場所なのか?  そんな思いかられたのは、「いじめ」について首を傾げる対応をあちこちで耳にするからだ。「『いじめられて死にたい』とすがる生徒児童に対し、教師は黙って席を指さし、授業を受けるよううながした」「部活の顧問(!)によるわが子の執拗ないじめを、その父親が学校や教育委員会に訴えるも、取り合ってくれない」「そもそも教育現場は過重労働と人員不足なので、見て見ぬふり」などなど…。

 

学校が子どもたちにとって「きつい場所」であるのは、データも裏付ける。「いじめ件数が過去最多の約68万人超え(2023年)」「不登校児童生徒数は約30万人近く(2023年)」の数字は、もう子どもたちの「悲鳴」そのもの。一方で、自分の中の教師像は、何人かの知り合いの教師の方々に基づく。みなさん、真摯に子どもに向き合われている。冒頭のような教師の行動が、とても信じられない。

 

辰沼小「いじめ防止活動・TKR」を構築した仲野元校長に聞く

ちぐはぐな感じの教師・学校像の実際を確かめてみたいと思い立つ。幸い身近に、それを深く知られる方がおられた。いじめ問題に取り組まれている「ヒューマンラブエイド」共同代表の仲野繁さんだ。小中学校の校長を長く勤められた教育界のエキスパートである。以前、このブログvol.6にて取材。その記事で、足立区立辰沼小学校での校長時代に「たつぬまキッズレスキュー隊(以下、TKR)」を構築された模様を紹介させていただいた。

 

「TKR」は、子ども主体の、画期的ないじめ防止活動である。生徒児童の隊員たちは、「いじめ反対」を宣言してその多数派を形成し、校内での「いじめ防止活動」などを行った。結果、いじめが激減。しかも子どもたち自身の発案によるイベントをたくさん催し、学校の雰囲気自体を明るく楽しいものにした。法政大学特任教授・尾木直樹さん(尾木ママ)がこのTKRの活動を調査し、「世界最高レベルのいじめ防止活動」と太鼓判。NHKや民放が番組化し、文部科学省の「いじめ対策」の事例にも掲載された。TKRの詳細は、私がまとめた記事を、ぜひ読んでいただきたい

https://adachikodomo.ioh.tokyo/archives/96    「子どもたちの『いじめ防止大作戦』」)。なぜいじめ対応に苦慮する足立区が、この著名な、しかも地元・足立発のTKRをモデルにしないのかと、いつももどかしく思う。

 

質問は、いじめ対策の「課題」と「解決法」

今回は、TKRの活動を念頭に置きつつ、事前に以下の質問を仲野さんに送った。

 

  • 学校のいじめ対応の欠点とは?
  • 学校のいじめ対応で、一番必要な対策は?
  • いじめにおいて、校長の役割とは?
  • なぜ教師は、子どもの立場に立てないのか?
  • 「学校総合危機管理研究会」の設立意図とは?

 

⑤は、偶然であるが、仲野さんが提唱者である「学校総合危機管理研究会」発足(3月16日)直前だったので、項目に入れた。同会は、日本大学の危機管理学の先生方ほか専門家と、いじめの当事者が2本柱となって活動することに。また、インタビューの過程で質問は増える。

 

「学校のいじめ対応」における課題と解決法について、具体的かつ豊富な知見をうかがうことができた。特に「被害者と加害者の和解でもって初めて『解決』」という指摘は、新鮮だった。今後のいじめ対応のゴールとすべきだと思う。さらに、TKRのいじめ防止活動は、昨今求められる「シティズンシップ教育」の最先端でないかとも。学校は、「学業を身につける場」であるとともに、「市民としての社会生活を学ぶ場」としての認識が、もっと広く浸透してほしい。その基礎に、「子どもたちにとって、まず学校を安全・安心な環境にしなければならない」という仲野さんの考えに共鳴する。そして「いじめ防止教育」は、「反戦教育」でもあった!

 

(仲野繁さんのインタビューは、2024年3月4日、北千住の喫茶店にて行った)

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