ルポvol.19 【居場所1】
6年間の準備を経て、関原商店街に開設
ベビーカーを入れても大丈夫。テーブルをちょっと動かせばいいから。
手づくりのスイーツに舌鼓し、地元の焙煎店で焙煎されたスペシャルティコーヒーの豊かな香りに包まれてほしい。小さなお子さんが元気いっぱいなら2階の和室で遊ばせ、本人はその横でワッフルをつまむもよし。日頃の疲れを癒して、英気を養ってもらえれば。
そう考えて「子育てカフェeatoco(イイトコ)」を、一人切り盛りする阿部直子さん。
「ママたちが、ほっとくつろげる場を提供したい」と、6年の準備期間を経て、2020年9月に開店した。カフェは、足立区の、レトロな雰囲気漂う関原商店街の一角に佇む。
店内を見渡せば、白壁と、天井と柱の木々が、落ち着いた雰囲気をかもす。「家」のようにくつろげるが、よく見れば「ギャラリー」のごとくキュートな小物がいっぱい。壁一面の棚には、絵本・ぬいぐるみ・人形・おもちゃ・子ども服などが並ぶ。「イイトコ」が企画した物々交換「ものくる」で集めたものだ。
2階和室では、 ときにイベントが行われる。刺し子教室、ハンドレタリング、助産師を囲む会など、盛りだくさん。
子育てママが、街のいろんな人に出会う場を
いまだ母親は、子育てを開始するなり、「家庭」に取り込まれ、「社会」から遠ざけられてしまう。阿部さんは、そんな日本の風土にあらがって、子育てと社会参加の両立を模索してきた。「自分は、何がやりたいのか」と自問しつつ、幾たびの転職や試みを経て、たどり着いたのが「コミュニティカフェ」だった。
やりたいことは、自身が苦労した子育ての支援で、それゆえ「子育てカフェ」の看板を掲げる。「親子カフェ」ではない。親子と、街の老若男女が出会って、その「子育て空間」を、みんなが共有できることを目指している。
阿部さんは、悩むよりは、まず歩き出す。自分の胸に「響くこと」を取捨選択し、直観のまま、粘り強く、求めるものに向かっていく。やがて形となったカフェは、まさに生きた「作品」であり、今も成長している。
(阿部直子さんへのインタビューは、2021年7月12日に行いました)
コメント