公務員だからつくれる支援の「形」

行政

コロナ禍で、江戸川区の祭消え、見守り機能が弱まる

江戸川区は、下町人情のあふれる地域です。お祭りが多く、露店を出すのも露店商ではなくて、地元の人たち。子ども会、町内会、青年会などさまざまな会が、お祭りを支え、盛り上げています。

 

今コロナで、この地域の行事がなくなってしまったことが心配です。若いお父さんお母さんがはっちゃけたり、子どもが気分をリセットできたり、日頃のうっぷんを晴らせ、救われる家庭がたくさんあるからです。また、お祭りによる地域の人間関係が希薄となり、個々の家族の見守り機能が弱くなっているのも気がかりですね。

 

インド人増加で、コミュニティに家庭内相談が増

在日インド人コミュニティがあることで有名な江戸川区ですが、これまでの外国人支援では、ひとり親家庭支援などでフィリピン人の母子家庭にかかわることが多かった。しかし、最近の傾向では、インド人家庭からの相談が増え、対応することが増えましたね。

 

よくお話するインド人で前江戸川区議会議員のヨギ(プラニク・ヨゲンドラ)さんにうかがうと、元々、インド人同士のトラブルは、コミュニティ内で解決していたそうです。夫婦喧嘩があれば、誰かが仲裁に入って止めていました。しかし、近年インド人が急増し、さばききれなくなったということです。在留インドコミュニティーでは一般的に女性が男性についてきます。でも夫婦喧嘩の場合、女性の気が強ければすさまじいことになる。インドの子育ても独特で、体罰でのしつけもあったりする。所得の高い人も含めてです。

 

言葉の問題もあります。私たちが介入しようとしても、英語で通じるといいのですが、タミル語などの他言語になると、もうお手上げ。そこでヨギさんに、通訳に入ってもらいます。インドでは地方によっても言葉が違う(約22の公用語)ので、同郷のインド人の方に通訳をお願いすることも。

 

江戸川児童相談所は、昨年に開設して2年になりますが、外国人のお子さんを保護することもあります。そのときは言葉と食べもの対応に困る。インドでも地方によって食べてはいてけないものが違いますから。私が食の支援で対応したバングラデッシュ人のお子さんの場合は、ハラールフード(イスラム法で許された食材や料理)が必要に。そうしたことも、ボランティアさんが、苦労しつつ勉強しながら、文化圏ごとに違う離乳食も含めて、よく対応されています。

 

行政の仕事は、どうやってコーディネートしていくか

行政に変えてほしいこと?…そうですねぇ、ありきたりですが少し頭が固いところですかね。

大切な税金で動くので、前例のないことはやりにくいところはあります。でも、行政がやるとなれば、民間に比べて事業に対する信頼感がぜんぜん違う。だからこそ、民間のように、もっと自由にアイデアを出し、効率よく回るといいなと思っています。

 

内部の人材を、うまく活用できてないところもあります。やはり縦割り組織であることは否めないので、新しい事業を立ち上げるにしても、なかなかスムーズにいかない。ただ、各部署に、すごく想いのある職員がいます。「あの人だったら、分かってくれるだろうなぁ」という方と、どう出会ってつながるかが、とても重要なことかなと。

 

民間側が行政に提案したところで、「こういう課題があるからダメ」と言われて終わってしまうことがあると思います。本当は、別の切り口があって、アプローチの仕方によってはできる方法がある。「こうすれば、ちゃんとできますよ」と言えるのが、本来は行政職員の強みであるはずなんです。

 

『えどがわっ子食堂ネットワーク』の立ち上げにもかかわらせてもらいました。江戸川区が、区内の子ども食堂をネットワーク化をお手伝いし、‘えどがわっ子食堂ネットワークとして応援することで、安心して子供たちが行けるようになればと企画しました。幟もつくりました。

子ども食堂を一つひとつ訪れたんですが、みなさん、本当に子どものためにと無償で活動されていました。しかも自分の私財を持ち出している方もたくさんおられます。私なんか、お給料をもらって働かせていただいているのが申し訳ないと思うぐらい。

 

これからの行政の仕事は、民間に事業をお任せしながら、どうやって支援をコーディネートするかということになると思います。それゆえ職員は、現状維持の姿勢ではなく、課題はなんなのか、いつも問題を意識をして仕事をしていかないと。

 

また、よく地域の方々から、支援事業に対して「担当者が変わると、すぐに変わってしまう。今はいいけど、将来が心配」と言われます。担当である自分がいなくなった後も、事業を維持するには、民間委託が有効だと思います。もちろんスキームづくりは、こちらがしっかりやる必要があります。

 

行政の視点を地域に伝えるのは、公務員の仕事

私は、公務員として民間団体からの勉強会や講座などに呼ばれると、喜んで行っちゃいます。参加しただけで、とても喜ばれますし。すぐに何かできるわけではありませんが、行政としての視点を伝えることで、誤解が解けるじゃないですか。せっかく声をかけられても応じなければ、「行政は、あれもこれもしてくれない」と、悪口大会になるかもしれない。むしろその場で、「こういう理由で壁がありますが、こんな方向で頑張ってます」と率直に言えば、みなさんも「では、協力しましょう」という気持ちになってくれるはずです。

 

結局、私は、自分がどうのこうのというより、「いい仕事をしたい」と思うだけなんです。こうすれば、こんな人や家族をうまく支援できる、こんなに素晴らしい民間の活動をサポートできると。多分、私は、異端児なんでしょうね。とくに管理職ではあまりいないタイプかもしれません。「公務員らしくない」と言われるのが、最高の誉め言葉と思っていて(笑)。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

<問合せ>

  • 江戸川区食の支援事業

『食事支援ボランティア派遣事業 ~できたて食べてね~おうち食堂』

『子ども配食支援事業 KODOMOごはん便』

申し込み/江戸川区児童相談所 はあとポート

TEL 03-5678-1810  受付時間・平日8:30~17:00

食の支援(子ども食堂・食事支援事業) 江戸川区ホームページ (city.edogawa.tokyo.jp)

 

  • 江戸川区0歳児家庭サポート事業

『よちよち応援隊』

申し込み/江戸川区児童相談所 はあとポート

TEL 0120-646-634

0歳児家庭サポート事業「よちよち応援隊」利用にあたって 江戸川区ホームページ (city.edogawa.tokyo.jp)

 

  • 江戸川区子どもと家庭の支援事業

『江戸川区子どもと家庭のおとなりさん』

申し込み/江戸川区児童相談所 はあとポート

TEL 03-5678-1810  受付時間・平日8:30~17:00

 

  • 江戸川区児童相談所(えどがわメンタルフレンド)

『子どもたちの「心の友」 かもめせんぱい』

申し込み/NPO法人ワーカーズコープ東京東部事業所本部

TEL 03-6806-1567  携帯080-4459-2270(内藤)  070-1555-5403(鈴木)

mail  tokyo-tobu@roukyou.gr.jp

 

 

  • 江戸川区が応援する子ども食堂

『えどがわっ子食堂ネットワーク』

問合せ https://edogawakko.net

 

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