どんな境遇の子も、健やかに育つ社会に

居場所

ルポvol.43 【居場所】

「なんでやねん?」「『なんでやねん?』 って、なんでやねん?」。始まった漫才ごっこが、いつまでも終わらない。小学3年の男の子は、私をデッキへ誘って戸を閉めてから、ずっと遊びを仕かけてくる。「もう、帰らなきゃ」と言うと、寂しげな表情。首には、紐を通した鍵が。

 

民家を改修した施設の「子ども食堂」に参加して

2023年2月18日、「こそだて図書館 あだちキッズカフェ」での「子ども食堂」に参加。テーブルに並ぶ一人前は、酢豚、豚汁、ほうれん草のお浸し、ご飯など、量も栄養も満載だ。老若男女のボランティアさんと子どもたちが、ワイワイと食べる。若いママが抱く赤ちゃんの頬を、幾人もがつついてく。2階建て民家(足立区伊興本町)を改修した木造施設だから、親類の集まりにいるような気がしてくる。

 

食事が終わると、子どもたちは階段を駆け上がり、思い思いに遊ぶ。高校生のボランティアに聞けば、「大人は、見守り役」と言うので、こちらも上に行って遊ぼうと足を運ぶ。「男子は来ちゃだめ!」と、上階の柵の前で、5歳の女の子がとおせんぼ。「こそだて図書館」施設長・井野瀬優子さんのお子さんだった。可愛い。テコでも動かない…という意志の強さが母親似かなと、後日、ご本人にインタビューしてみてそう思う。

 

冒頭の男の子は、弾じかれたおじさんの私の手を引き、「下で遊ぼう」と連れ出す。彼は、母子家庭の「鍵っ子」。特に大人の男性スタッフを慕うらしい。亡き父親の面影を求めているのかもしれないという。

 

生活困難な家庭の子に、食・おもちゃ・本を

一般社団法人「チョイふる」(代表・栗野泰成さん、vol.23)の事業の一つである「こそだて図書館 あだちキッズカフェ」の成り立ちは、段階的である。

 

まず、2021年、足立区伊興本町にある「神の家族主イエス・キリスト教会」で開催されていた子ども食堂「あだちキッズカフェ」(創業者・理事・柏倉美保子さん)を、「チョイふる」が統合。2022年、その「あだちキッズカフェ」に、「おもちゃ図書館」が併設。子どもたちに遊びや読書を通じた多くの体験機会を届けることを目的として、おもちゃや本の貸し借りができるようにした。ここで開催される「子ども食堂」の対象者は、「チョイふる」の事業、食支援事業の宅配型パントリー「あだち・わくわく便」の利用者で、生活に困難を抱えるご家庭である。

 

なお、「こそだて図書館」は、地域の親子の誰でも利用できる子育て支援施設だ。子育ての悩み相談窓口を設けている(※文末にて紹介)。

 

「保育士」と「ママ」の視点を生かした子育て支援

子ども支援では、さまざまな遍歴を重ねてきた井野瀬さん。2010年から2020年まで、保育士として現場で活動。2021年から2年間は、子育て広場の「コミュニティkoen」、子どもたちの居場所「cotocaの楽校」の運営にもかかわった。3児(11歳、9歳、5歳)を子育て中のママでもある。親が抱える葛藤は、そのままご自身の課題であり、かつプロの目線で客観視もする。

 

聞けば、「子どもの居場所づくり」は、なんと子ども時代からのテーマだという。一見ほんわかしたお人柄だが、「一徹モノ」とみた。悩める子どもと親の、心強い味方である。

 

(井野瀬優子さんのインタビューは、2023年2月21日、「こそだて あだちキッズカフェ」にて行った)

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