「いていい」場所、つくる

ネットワーク

ルポvol.15  【居場所1】

「迷ってたでしょ?」と、朗らかな声。引き戸を閉めて振り返ると、大山光子さんが机の向こうで笑ってる。不思議と、初対面の感じがしない。

 

昨年の、まだ肌寒い3月のこと。指定された「母子生活支援施設 ポルテあすなろ」の場所が分からず、うろうろ自転車をこいでいた私の姿を、ガラス戸の向こうで見かけたと言う。同施設は、看板もなく、一般のマンションみたいで、住宅街に溶け込んでいる。

 

さまよう取材方針が、定まる

当時、取材方針でも迷っていた。「発達障害児」(ルポvol.2)についてライターとして関心を持ち、少しずつ取材は始めていたが、どう斬り込めばいいか模索中だった。まずは、足立区の子どもの現状をリサーチしたいと思い、町田さん(ルポvol.4)に相談すると、ぜひこの人に会うべきだと紹介されたのが、「あだち子ども支援ネット」(以下、「支援ネット」)代表の大山さんだった。

 

「『発達障害』の子って昔からいたし、かつてはどんな障害を持つ子も、み~んな一緒に育ってきたじゃない。問題は家族。発達障害だとしても、その子の特性を認めてあげて、楽しんで暮らせればいいわけよ」。こともなげに指摘され、「そうか…」と。自分は、「分子」ばかり見てて、「分母」を見損なっていたと気づく。

 

話をうかがううちに、「支援ネット」が連携する「子ども」「家族」への支援を行うネットワーク、それを担う人たちを訪れたらどうか、エリアは自分が住む足立区を中心に、という考えが浮かぶ。迷子の子は、「道」を見つけた。以後、このルポは、大山さんの活動を何度か取り上げつつ、そのネットワークの内外を行ったり来たりしながら、出会った人やその活動を書きつないでいる。

 

「ルポ! 足立の子ども支援」が、冊子になる!

「支援ネット」の集大成のイベント「未来につながる実験室」が、今年3月27日に開催された直後、大山さんから、「これまでの記事を、『支援ネット』で冊子にしていいよ」と、提案してくださった。では、当ルポの出発点であり、いつか改めて再取材したいと思っていたその人を、この機会を借りてインタビューしたいと思い立つ。冊子の最後の記事として納めれば、「子ども支援」に携わる他の方々の証言の、それぞれと響き合うことにもなる。

 

今回、前半に、「支援ネット」の活動。地域、学校、行政のかかわりから見えることもうかがった。後半は、生い立ちから家庭人としての歩みまで、個人的なことも語ってもらう。「公」と「私」と合わせた軌跡から、子どもたちの「いていい場所」をつくり続けてきた大山さんの真情を示してみた。

 

(このインタビューは、2021年4月13日、ポルテホールにて行う。

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