ペアレント・メンターが、親を支える

発達障がい

ルポvol.3  【発達障害2】

「発達障がい」のお子さんを持つ親の悩みは深い。「周囲とうまく溶け込めない」「突飛な行動をしてしまう」わが子にどう対処したらいいか…。同じ症状の子を育て上げた親が、今苦闘する親をサポートとするのが「ペアレント・メンター活動」だ。「メンター」は「信頼のおける相談相手」を意味。

足立区では、2016年より東京23区で初となる「ペアレント・メンター事業」を導入した。サポートの対象となるのが、知的障がいのない発達障がいや、知的障がいをあわせ持つ子どもを持つ親だ。この事業を早速受託して活動を開始したのが、「一般社団法人 ねっとワーキング(ペアレント・メンターあだち)」である。2019年10月、同会の代表理事・日笠よう子さんに、親の置かれた状況や活動内容などについて聞いた。

 

相談者には、「指導」でなく「共感」を

歩道に佇む樹々の葉がゆれる。秋風が涼やかに吹き抜ける住宅街、その一角に建つ3階建ての建物が「ねっとワーキング」の拠点である。日笠さんの友人の実家をお借りしているそうだ。畳の部屋に案内され、テーブルをはさんで日笠さんと向かい合うとき、柔らかな空気が流れていた。「家」に訪れたよう。

まず、どんな人たちが活動しているのかをうかがう。

「現在、私を含めペアレント・メンター(以下、メンター)は20人(2020年8月現在は、29人)になりました。主に発達障がいのあるお子さんを育てた経験のある親たちです。すでにお子さんが高校生以上の人が大半ですね。私の子どもは、23歳になりました」。

 

区の受託事業のメインは、2つの相談事業であるという。

「ひとつが、2人のメンターが相談者さん1人の話をじっくり聞く『ぴあトーク』。プロのカウンセラーとの違いは、お互い同じ立場であることで安心して話をしてもらえること。とにかく傾聴します。もうひとつが、グループ茶話会の『ぴあサロン』。2人のメンターが入り、複数の相談者さんとその場を共にして、情報交換したり、悩みを打ち明けたりします。

メンターは専門家ではないので、『こうしたほうがいい』は言いません。相談者さんの今の思いを聴いて、分かち合うことを大切にしています」。

また、サブの事業として「キャラバン隊」がある。メンターらが、障がいの特性や困り感、親の気持ちを伝えるため、子育てや教育現場での研修に出向いたり、そこで意見交換などをするのも重要な活動だ。

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