外国人問題の根は、日本語の壁

外国人

ルポvol.8  【外国人1】

障子の光が穏やかになる午後4時。小学生帽をかぶった、アフリカにルーツを持つ女の子が、「こんにちは」とはにかみ挨拶する。畳の上のテーブルで、国語の教科書を広げるのはボランティアの日本人女性。背筋をピンと伸ばしたその白髪の人は、祖母のような眼差しで、マリ共和国からやって来た少女と向かい合う。

NPOインターナショナル・アカデミー(AIA)の授業の一コマである。

 

東京都内の外国人比率において、足立区は第9位(総人口約70万人のうち約3万人)。その人たちは、どんな課題を抱え、家族や子どもの支援を必要としているのか。まず、AIAの活動や主催者への取材から探っていこうと思う。

 

語学学習を中心に、日常の困りごとも相談

AIAは、梅島駅から徒歩10分の住宅街にある2階建ての家屋にある。

足立区やその周辺に住む外国にルーツを持ち、生活苦に悩む人たちへ、主に日本語の学習を支援。子どもは小学から中学が対象で、国語(日本語)のほか、学校の全教科を教える。大人には、日本での生活に必要な知識も提供。求められるボランティアは「日本語が話せること」で、年齢は大学生から80歳位までと広い。

教育事業を行う4つのカトリック団体よって、2008年7月に設立。その教育理念は、「人としてのかかわりを大切にすること」。授業のスタイルは、生徒とボランティアが一対一となって行うもの。

 

同会事務局の織田智子さんは、個別対応だからできる多様な支援内容について話す。

「日本に来たばかりの人は、『あいうえお』から教えます。日常的なことでは、会社の健康診断、学校からのお知らせなど、漢字で読めないものを読んであげたり。お手紙や履歴書を書くお手伝いもします。一方で、日本語検定を取りたいという人には、学校関係のOBや日本語教師のボランテイアの方に対応してもらうことも。

日本で生まれた子は、親より日本語を話せるケースは多いですが、暮らしや家庭の中で日本文化を学ぶ機会がありません。例えば『襖』『障子』が分からない。国語の教科書にある文章で、『小川がさらさら流れている』の『さらさら』が理解できなかったりする。そうしたことを、ボランテイアが一つ一つ教えます」。

 

現在生徒は、子ども20人、大人10人で、国籍はアジアやアフリカなどさまざま。足立区は中国人が多いが、ここではフィリピン人の割合が高い。ボランティアは、同会設立以来、約100人が登録され、常時30~40人が稼働している。

 

外国人の生きづらさを、安藤理事長にうかがう

AIAの成り立ちは、理事長の安藤勇さんが、カトリック梅田教会の神父だった頃に始まる。同教会に集うフィリピン人の信者たちが、日本語ができないばかりに、仕事や家庭で大変な苦労していることを見かね、キリスト教関連の複数の教育機関に、自ら足を運んで支援を呼びかけたという。安藤さんに、AIAの活動の経緯や内容をうかがうと、日本社会の中での「外国人」という生きづらさが、具体的に浮かび上がる。

 

※AIAの取材は2020年9月11日、安藤さんのインタビューは同年9月14日にイエズス会社会司牧師センターにて行った)。

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