親が喰らう子、ヤングケアラー

ヤングケアラー

支援するなら、精神疾患の親は子と引き離すべき

今、ヤングケアラーの子どもを、どう支援するかということが議論され始めています。その子が家のことをしないよう、社会的なサポートを家に入れて負担を減らしてあげる。すると子どもらしい時間を持てるようになり、豊かな生活が送れるのではと。でも、精神疾患の親を持つ子に関しては、それはきれいごとに思えます。

 

親が支援を拒否するだろうからです。うちの場合がまさにそうで、病識がないので、病院すら絶対に行かない。「自分が正しくて、世の中が間違っている」と言うくらいプライドが高い。身体的な障がい者であれば、外のサポートには抵抗が少ないように思います。当然の権利だとし、積極的に利用するでしょう。しかし精神疾患の親だと、もし支援が入ったら「なんで家のことを外にもらしたんだ」と逆上し、かえって子どもの立場が危うくなる。

 

思い切りサポートするのであれば、「とりあえず親と子どもを離してほしい」と、私はずっと主張し続けています。本当に親に精神的疾患があれば、入院させて治療してほしいわけです。医療に繋がることは親子にとって良いことだと思います。私は小学生の頃からすでに、近所の手伝いでも何でもやって生きていく自信がありました。親がいなくてもというか、むしろいない方が楽に食べていけると。

 

地域包括ケアは、ヤングケアラーの救いにならず

しかし現在、厚生労働省が進める「地域包括ケアシステム」で、病院から精神科の療養病棟がなくっています。その患者は、地域が受け入れてくださいと。「地域」ってどこを指すのか。結局、「隣近所」であり「家庭」だとすれば大変です。治療目的以外に、精神疾患による問題行動によって親が「裁判沙汰や警察沙汰を起こすような問題ある人物」と見なされる偏見差別もあり、隣近所や家から追い出されて病院に行っているわけだから(ただし、全ての精神疾患を持つ方がこの様な状態ではなく、問題なく生活をおくられている方が多数です)。

ヤングセケアラーの支援では先進国のイギリスでは、学校と地域、そして近所の人も連携してサポートする試みがされています。しかし精神疾患の親のサポートに関しては、近所の人が加わるとかえって話がややこしくなる。

 

また、祖父母を介護するヤングケアラーも最近出てきています。ただ、高齢だから寿命を考えると介護の期間は数年となる可能性が高い。一方、親の場合だと、ケアはどこまでやるのかが問題になる。ヤングケアラーは18歳で卒業しても、その後のケアも引き続き行い、普通一般の介護になっていく。親が亡くなるまで介護を背負わないといけないのか、という話です。地域包括ケアシステムは、ヤングケアラーにとっては、現状をより過酷にするものです。

 

親に愛情はない。憎しみもない

私は、ヤングケアラーとして生き延びました。子ども時代を、それなりにエンジョイもしていました。人から「あなたはタフだ」とよく言われます。でも、人が悩んで「死んじゃいたい」という気持ちは理解できるかな。私は、「親に殺されたい。その方が楽になるから」とよく思っていましたから。妹の場合は、記憶障害で心を防御しているようです。家や親のことに対する記憶が、中学生以前はまったくない。小学校のとき、遠足に行った思い出はあるのに。

 

親の愛情が欲しかったか、それは分かりません。「愛情」自体が分からないんです。本に書いてある愛着障害なのか。親を「モノ」としか思っていません。憎しみはないし、憎んでもしょうがないし。親がいろいろ騒ぎを起こすので、その対処をどうするかしか関心がわかない。絶対こういうことをしてくるから、どう先回りして私の方の被害を最小限に抑えられるか。最悪の想定を立て、最終的に一番楽になる段取りを頭の中で準備しておく。まさにその対処法が、災害ボランティアをやったとき大いに役立ちましたよ。

 

2017年、父親は他界しました。都市霊園に弔ってから、お墓参りも行っていません。本当に興味がないんです。その分、自分の家族に愛情をそそぐのかって? ぜんぜんないですよ。さばさばしてます。うちは子どももいないし、旦那だけですけど、ほっといても生きているなと。あんまり構わないから、やがて諦めてくれて (笑)。

(聞き手/上田隆)

 

参考資料/

◎『あだち子ども未来応援円卓会議2019』(発行/2020年9月 一般社団法人あだち子ども支援ネット)P12~13

◎『月刊 みんなねっと 2020年7月号』(発行/公益社団法人 全国精神保健福祉連合会)P18~19

◎Adachi ちゃりネット 「ヤングケアラー」

Adachiちゃりネット - ヤングケアラー
~ヤングケアラーの現状から~精神疾患の親をもつということ こどもぴあ 平島芳香  はじめに、今回テーマのヤングケアラーについて、私は研究者ではなく、当事者目線でしか語れない...

 

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精神疾患のある親に育てられた子どもの立場の人と支援者で運営しています。家族による家族学習会というピアサポート活動をおこなっています。

 

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精神疾患の親をもつ子どもの集い

 

 

 

 

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