ルポvol.51 【学校】
「お早うございます!」と声をかけると、つぶやくように挨拶する小学生たち。感覚のスイッチを切って、満員電車に吸い込まれていく大人みたい…。朝、校舎の前に立って迎え入れた子たちに対し、そう感じていたと宮島絵里香さんは話す。2年前、足立区の小学校で教員を務めていたときのことである。
足立区議会議員選挙に、元小学校教員として立候補
今、子どもたちにとって「学校」は、とても息苦しい場所なのか。文部科学省の調査は、2022年度、不登校の小中学生が、最多の29万9千人に達したと公表。過去2年間で10万人以上の急増している。これは異様だ。子ども支援関連はもちろん身近な知人に聞いても、コロナ禍において学校の管理体制が、よりきつくなっているという。実際の状況を学校関係者に取材したいと思うも、なかなか応じてくれる人が見つからない。
そんな折、注目したのが宮島さんだった。2023年5月の足立区議会議員選挙で、元足立区小学校教員として「学校を変えたい」と立候補。プロフィールを見れば、10年の音楽活動の後で教職に。つまり「学校」を「外」からの視点でとらえている。また2児の母で「親」という当事者だ。
選挙結果は落選。当選のボーダーラインに惜しくも届かない2886票だった。しかし、この足立区で、3000人近くもの区民が、学校の変革を求めて票を投じた意味は大きい。
外の目線から、今の「学校」を語る
お会いすれば、宮島さんは小柄だが、「ロック魂」にあふれていた。だから自在に、子ども目線に立てるのかもしれない。「学校」で体験した軋轢や違和感を聞けば、とても共感。むしろその感覚が今の学校では、徹底して「異端」とされることに驚く。とにかく、ごく最近まで現役教員だった人の率直な証言は、非常に貴重である。宮島さんの選挙公約は、「特別支援教育の拡充(インクルーシブ教育の推進)」「教員の負担軽減」「不登校児の思いを尊重できる居場所と学びづくり」。これはそのまま学校が抱える課題をついている。キャッチフレーズの「大人に心の余裕とつながりを。子どもたちがワクワクする未来を」は、この人の切実な目標である。
またこの誌面では、選挙の過程についても詳しく記述。「おかしい」と思ったことを世に問い、「変えて行きたい」というエネルギーがすごい。地盤・看板・カバンのない宮島さんが、志を同じくする区民の輪を広げていく過程は、まさに「政治の原点」。
学校が、このままでいいとはとても思えない。子どもが、自身の資質をのびやかに伸ばす「学びの場」、楽しく安らえる「居場所」になってほしい。それには市民による政治の力が必要だ。「学校」を、変えませんか?
(宮島絵里香さんのインタビューは、2023年12月7日、北千住の喫茶店にて行った)
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