「依存症者家族」から「支援者」に

依存症

ルポvol.53 【依存症】

 

ソファに寝そべったり、肘を接して座ったり。年配も中年も若者も、ワイワイと談笑。事務局の応接室にくつろぐのは、Y-ARAN(横浜依存症回復擁護ネットワーク/横浜市磯子区)に通い、依存症からの回復を共に努力する人たちだ。木造平屋の民家を再利用した建物の雰囲気もあって、おおよそ「施設」らしくない。彼らへ気さくに声をかけながら、こちらを数歩先の玄関まで見送るのは、同ネットワーク・スタッフのナラン直子さん。先ほどまで、半生を本音で語ってくれたその人だ。

 

同ネットワーク・スタッフの田中健児さん(vol.39)の紹介でY-ARANと繋がってから、ナランさんとは幾度もお会いし、その明るく魅力的な人柄に惹かれていた。依存症者家族から支援者になった方で、その両面から「依存症」を語ってほしいと依頼すると快諾される。

 

依存者家族ゆえのつらさを知る

「Y-ARAN(横浜依存症回復擁護ネットワーク)」は、アルコール、薬物、ギャンブルなどの依存症の本人、家族のための回復支援と、同時に社会に向けたアドボカシー活動(回復擁護活動)を行う。そのパンフレットには、ナランさん夫婦の写真が掲載されてるバージョンもある。夫のロンさんが、アルコール依存症者。優しそうな顔立ちで、南国の島モーリシャス出身の人だ。そしてナランさんは依存症者を支える家族としての経験を、支援活動に生かしている。

 

話をうかがってみて、依存症者の家族のつらさ、そのケアの必要性を改めて知る。夫が回復するまでの苦難の暗いトンネルを、ナランさんは20年も歩み続けた。その経験が、現在のさまざまな活動にもつながっている。Y-ARANはもちろん、「川崎断酒新生会」にも参加。AKS依存症予防教育アドバイザーでもあり、依存症家族講座を行う講師も務める。

 

海外ルーツの家族を圧迫する日本社会

ナランさんは20代で海外に飛び出してロンさんと出会い、モーリシャスにも10年暮らす。娘さんを産んで後、家族で帰国し暮らすと、「異質」に厳しい日本社会に悩む。その豊かな国際感覚からすれば、この国の風土はとても窮屈。

 

「依存症」で「外国ルーツ」の家族を抱えるという二重のマイノリティ(少数派)の立場から、「多様性」の重要性が身に染みた。最近では、相模原市で活動する、LGBTQ支援団体「からふるテラス」にもかかわられているという。

 

これまでの歩みで培った「多様性」力が、ナランさんの活動を支えている。

※イラストは、Y-ARANのメンバーでアルコール依存症の漫画家「いいちまる」さんのイラストを参考に作成。

(ナラン直子さんのインタビューは、2024年1月18日、Y-ARANの事務所にて行った)

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