「食・場・情報」で、貧困なくす

フードパントリー

 

ルポvol.23  【フードパントリー1】

宅配準備は、教会の大ホールで

朝9時前。ホールで立ち働くボランティアさんの一人に、食材の仕分け作業を手伝いたいと申し出る。「どうしたら…?」と聞くなり、「これ、1個ずつ、入れてって!」と指示が飛ぶ。

 

新鮮な食品を抱えては、長机に並ぶ65個のケースの中に添えていく。一息ついて見渡せば、そこは磨かれた床が広がる大ホール。普段は、神の家族主イエス・キリスト教会(足立区伊興本町)の食堂である。月2回、同教会が、一般社団法人「チョイふる」の事業「あだち・わくわく便」(子育て家庭への配食サービス)のために提供している。きびきび動く20人ほどの老若男女に交じって、ケースを車5台に詰め込み、配送準備を終えたのは9時55分。汗が吹き出る。出発が10時なのに、提供予定の卵がまた届かない…。

 

腕まくりした代表の栗野泰成さんに、声をかけられたのは10時過。パソコン画面の配送リストをにらみ、スマホでの対応に追われていた司令塔の顔が、やっとゆるんだ。落ち着いた雰囲気の好青年である。

 

事業立ち上げ3年で3回バージョンアップ

社会活動を始めてまだ3年だが、その経過は密度濃い。

1年目は、小学校講師、JICA海外青年協力隊の子ども支援の経験を活かし、低料金の幼児教育向け英語教育事業を行う。2年目に、足立区 NPO法人「あだち・わくわく便」を開始。3年目、一般社団法人「チョイふる」を設立し、前者の事業を統合した。事業内容である「食支援」「居場所支援」「情報提供」の3本柱に、栗野さんの体験と思考が結実している。

 

現在、他のNPOに勤務して生計を立てつつ、ボランティア段階の団体を公益法人に成長させようと奮闘。教師の経歴から、教育の機会均等が、貧困の子どもを救うというぶれない軸を持つ。これからの日本の子ども支援事業を支えるキーパーソンである。

 

(栗野泰成さんへのインタビューは、2021年9月16日、神の家族主イエス・キリスト教会にて行いました)

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