ルポvol.48 【教育2】
不登校の子たちが集う居場所を、北千住に開設
ゲームの「テトリス」が、大画面に映される。「みんなで遊んでみようか」と、「Dopeeps(ドゥピープス)」代表・松沼孝典さんが声をかけると、子どもたちの顔がほころんだ。「ここは、学校じゃない」と。
昨年1月18日、同団体が主催する「学び舎」の記念すべき第1回は、不登校の子どもたちの心をわしづかみにした。小型ドローンも操作できて大好評。足立区千住朝日の古民家では、終始笑い声があふれる。その場所は、松沼さんが、日本茶カフェを経営する友人より、隔週の水曜日に借りることになった木の空間。子どもたちや地域の人たちに「本物の和文化」を伝える「和文化継承委員会まほろば」のイベントも開催される。
「Dopeeps(ドゥピープス)」主催の「学び舎」とは
「決まったプログラムはありません。子どもたちに、いろんな体験をしてもらえれば」と話す松沼さん。第2回以降、「まほろば」の講師を呼んで、型にはまらない授業を次々に行った。参加するボランティアの地元大学生たちも、子どもたちに慕われている。
ちなみにDopeeps(ドゥピープス)」は、英語のスラング「Dopse(最高)」に「Pepple(人々)」を合成した松沼さんの造語で、「最高の仲間」という意味。不登校児が集うこの「学び舎」は、地域の大人や若者たちも「仲間」として交わる、自由と活気に満ちたフリースクールだ。
PTAを改革し、今の子どもに即した教育を目指す
松沼さんは、PTAの改革者でもある。
わが子が通う小学校のPTAに入ると、組織の不合理な因習を目の当たりに。それを見過ごさず、果敢にも廃止を訴えて実現。さらにPTA活動を子ども主体のものに切り替えた。手腕を認められ、小学校、次に中学校のPTA会長を務める。現在、一般社団法人 東京都PTA協議会の理事として、学校教育全体を視野に活動を広げている。
牧瀬美香さん(vol.45)から紹介された松沼さんからは、設立したフリースクールについてうかがう予定だったが、インタビューの半分はPTAの話となった。2つの活動の根は同じ。「今の子どもたちに、時代のニーズに即した『学びの場』を、社会は提供すべきではないか」という問題提起がある。
松沼さんは、柔和な人だが、合理的思考の持ち主。町工場を親から受け継ぎ経営しているが、日々の「ものづくり」において「無駄を省いて生産効率を高める思考」を培ってきたという。「学校教育」には、こうした多様な地域の大人の参加が、もっと必要ではないだろうか。
(松沼孝典さんのインタビューは、2023年6月22日、北千住の喫茶店にて行った)
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