精神障がい者が、「家庭」をつくるために

ヤングケアラー
外部に相談できず、自分の感情にフタ

しかし、これらの子どもたちは、相談しない。小学生は9割、中学生は8割が、誰にも相談しないのです。これは、精神疾患の親を持つ子だけじゃなく、ヤングケアラー全般の特徴です。スティグマが強く、家族のことを話してはいけないと感じ、社会の認識の乏しさもあります。

一方では、それが当たり前のことで、特別なことという認識がない。それから、親への愛情からするケアなので、志向性があり、必要とされることを一生懸命に行っている。一方、親は、「親の役割を果たせていない」と批判され、子どもを取り去られるという不安から、外部を警戒します。

 

大人になると、生きづらさを感じてしまう。「自分の感情が分からない」「人を信用できない」「自己評価が低い」という傾向があります。これまで誰にも相談できなくて、孤立していたがゆえに、生き抜くために、自分の感情にフタをしてときたわけです。子どもが、信用できる大人に出会うことこそ、本当に大事なことです。

 

生き抜く力のある子どもたち

「精神疾患の親を持つ子どもの会」(子どもぴあ)がスタートしたのは、2018年1月21日。昨日がお誕生日なんですね。ちょうど5周年を迎えたことになる。今、東京、大阪、札幌、福岡、岡山、沖縄など、全国に広がっています。

 

私は、「こどもぴあ」で、たくさんの素敵な子どもたちに出会ってきました。みなさん、本当に素敵に成人しています。何より成熟していますし、良い聞き手です。そして家族との絆が強い。理不尽なことをされ、憎むところがあっても、親を大切に思う。そして、生き抜く力、頑張る強さを持っています。精神疾患って、すごく偏見の強い病気です。しかし、これからの子どもたちが、それを変えていくのではないかなと。

 

子どもの本音は、「居場所が欲しかった」

「ヤングケアラー」は、マスコミから同情を誘う扱いをされてきましたが、「可哀そうな子」でありません。攻撃の言葉にさらされましたかず、親は、わが子を「ヤングケアラー」にしたくて生んだわけではありません。責められるべきは、ケアされる側ではなく、子どもたちの優しさやまじめさに甘えて、何もしてこなかった社会の在り方にあります。

 

20代、30代になっても、ヤングケアラーの問題は続いていく。だから、継続的な支援が必要なのです。子どもたちが訴えるのは、「家族は、親の支援者にはなれない」ということです。親の面倒をみてしまうと、結局孤立してしまう。自分が「子ども」ではなくなる。これは違うんだって。本当にその通りだなと思います。

 

一方で、ある子が言いました。「親の病気を治して欲しかったわけじゃない。両親が仲良くして、その間に自分の安心できる居場所が欲しかっただけ」だと。「あ~そうなんだ」って。

子どもの支援だけしても、幸せになれません。今後も、行政や支援者、住民とつながりながら、この問題に取り組んでいきたいです。

 

 

<問合せ>

精神疾患の親をもつ子どもの会(こどもぴあ)

e-mail : kodomoftf @ gmail.com

 

<書籍案内>

『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り

―困難の理解とリカバリーへの支援』

著書/横山惠子・蔭山正子 (明石書籍) ¥2,750

9人の成人した子ども

 

『静かなる変革者たち』

著書/横山惠子・蔭山正子・子どもぴあ (出版社ペンコム) ¥1,540

4人の支援者となった子ども

 

 

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