ヤングケアラー支援は、「家族まるごと」で

ヤングケアラー
子に接するとき、心がけてきたこと

こんな私ですが、息子と接する時に心がけてきたことがいくつかあります。

 

一つは、どんなに幼くても、固有の人格を持った1人の人間として接するということです。幼い頃から何かする時には、必ず息子の意見を聞いて決めてきました。また、私の憔悴が激しい時でさえも、「母ちゃんの具合が悪かったり、イライラしたりするのは、病気のせいであって、あなたのせいじゃないよ。今は具合が悪くて、一緒にいられないけど、あなたのことは大好きだからね」ということは、伝え続けるように。また、年齢に応じて、自分の病気のことを説明してきました。「双極性障害」の病名と症状をきちんと伝えたのは、中学生になった時です。

 

今でも、息子が求めてきた時は、できる限り息子を最優先に。現在、19歳ですが、時々、私の部屋に来て、膝枕をして欲しがる時があります。「ハグして」と言ってくる時は、思い切ってぎゅっと抱きしめ、背中をポンポンしてあげます。

 

否定しない、丸ごと肯定する、褒める、感謝するということを、大切にしています。

 

親を責めるのでなく、医療・福祉の支援が必要

以前、「子どもを産む前に、ヤングケアラーをさせてしまうと考えなかったのか?」という質問をいただいたことがありました。しかし、そんなことを考える親は、いないはずです。誰もが、ちゃんと育てたい、ちゃんと親になりたいと思っている。どんなに辛くても、親であろうと一生懸命頑張っていいます。それでも頑張り切れなくて、結果的に子どもにケアをさせてしまう。親を責めるのは間違いです。

 

ヤングケアラー支援は、子どもへの支援だけでは不十分。まずは、当事者である親への支援が先決で、不可欠です。

 

それには、医療的なケアと同時に、日常的な家事援助、育児援助、訪問介護などの支援が必要です。したがって、医療関係者と福祉関係者がチームとなって支援すべき。福祉関係者は、医療的な専門知識を持ち、精神疾患への理解を深め、当事者の病状を正確に把握すること。医療関係者は、地域の福祉関係者とつながって、当事者の地域での生活に、どのような支援の手が必要なのか考えること。

 

子どもが信頼して話せる「第三者の大人」を

また、親にも子にも専門職だけでなく、仲間の支えが重要です。

 

私の活動からいえば、親には「子育てピアサポートグループゆらいく」、子どもには「こどもぴあ」が、それに当たります。当事者が社会につながることで、「1人じゃないんだ」と思うことができ、救われる。他の当事者から、支援のサービスや生活の工夫などの情報も得ることができます。

 

かつての私が強く望んだ支援の形ですが、専門家の立合いの下で、当事者とパートナーと子どもの3者で話し合いをする機会もあるといいでしょう。同時に、3者それぞれに個別の相談相手がいること。特に、子どもが信頼して話せる第三者の大人が重要です。

 

中学の先生がしてくれたように、家族の事情を全部ひっくるめて理解し、受け入れてくれる人がいることは、大きな支えになります。学校、保育園など、子どもが多くの時間を過ごす場所にいる人と連携できればいい。地域に、家族を丸ごと受け入れてくれる場所が必要です。

 

親の病気を子に伝え、周りにもオープンに

Zoom子育てカフェや、生きづらい子育てピアの会の茶話会、「もうがんばらない子育て講座」などで、子どもへの接し方、声のかけ方がテーマになることがあります。そこで繰り返し言うのは、「私の具合が悪いのは、あなたのせいではない」と、子どもに伝えること。病気のことを隠さないことで、子どもの不安を和らげるからです。

 

親が周りにも自身の病気をオープンにすることで、子ども自身が、親の病気について相談できる環境ができます。「精神障害は、誰にも言ってはいけない」という風潮を、自らなくしていくことです。

 

それから、私たちは、精神保健領域での家事支援・育児援助・訪問看護、母子保険領域での保健師の訪問、民間ヘルパーさんなどの情報を伝えています。適切なサポートを受けて、親子とも負担がなくなれば、子どもが親をケアしなくていいわけです。「社会的資源は、できるだけ使う」「使えるだけ使う」ことです。

 

今の時点では、こうしたサポートは、まだまだ一般的ではありません。専門家の方々には、私たちと一緒に、包括的な支援体制をつくっていってほしいと思います。

 

無条件に受け入れ、愛すればいい

子どもに対して、精神疾患を抱える親は何ができるのか。具体的な行動として、何ができなくてもいい。普通の親なんかになれなくていい。十分な世話ができなくてもいい。ただ、子どもの存在を丸ごと無条件に愛している、と伝えられれば、親としては十分なんです。

 

この前、息子の中学時代の同級生のお母さんから、突然ラインが入りました。学校の行事で息子に会ったとき、彼女の娘さんに対して息子がとても温かい言葉を言ってくれて、泣いてしまったそうです。娘さんも、双極性障害でしょう。他人の苦しみにも気遣いできるようになるというのは、すごいことです。最近になって、息子が、「母ちゃんが母ちゃんでよかった」と言ってくれました。私も「息子が息子であってよかった」と思います。

 

(文責/ライター上田隆)

<問合せ>

子育てピアサポートグループゆらいく

代表理事 水月琉凪

事務局:〒590-0496 大阪府泉南郡熊取町朝代台1-1大阪体育大学社会貢献センター辰巳佳寿恵研究室

e-mail : yuraiku0501@gmail.com

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