心ゆらし、母子支え

母子支援

 

<インタビュー・橋本久美子さん>

のっぴきならない女性たちに寄り添って

遅れて、すみません。 お時間、大丈夫ですか?

先ほどカンファレンスしていた女性が、夫からDV被害を受けた人で、色々ありまして。帰るところがないので、現在「ポルテあすなろ」で支援しています。足立区では、DV被害者は「区外保護(区の外に避難させる)」としていますが、この方は「加害者が追跡してくる可能性がない」ケースなので、入居が許可されています…。

 

女性たちの中には、さまざまな事情を抱えて、弁護士とつながりながら、ここに子どもを連れて入所してくる方がいます。客観的に見て「離婚」が必要でも、彼女たち自身、簡単に離婚に踏み切れるものではありません。何度も「まだ、どうにかなるんじゃないか」と思い直しつつ、やっぱり「離婚しよう」と決意する。しかしその後も、「これで良かったのか…」と、ゆれ続けます。私たちは、そんな気持ちを受け止めて、一緒にゆれながら、寄り添っていきます。

 

「ポルテあすなろ」には、産後鬱などで女性自身にケアが必要な方もいます。精神症状の波をそのまま受け止め、ときには母子の安全のために、職員が同じ部屋で一晩過ごすなんてこともあります。そういうかかわりも大切なんです。

 

「ポルテあすなろ」では、社会的養護の対象者であった女性たちが、母親となって暮らしています。子ども時代、親からの適切な養護が受けられず、虐待がはびこる環境で育つ。そして少女は、安全安心でない家から逃れるために家出する。外の世界で、不安定な精神状態の中、男性に出会い、妊娠、出産。子どもを連れて、ここで「母親」になる。そんな女性たちが、たくさんいます。

 

親やまわりの大人から、適切な養護や、たっぷりの愛情を受けられず、自分自身が大切にされた経験がない、どのように子どもを愛したらよいか分からない女性たちがいます。「ポルテあすなろ」は、「子どもと母親がどうしたら一緒に生き続けられるのか」というところを、ギリギリのところでつなぎ続けることができる場なのです。

 

生活の土台づくる「ポルテあすなろ」の3本柱

そもそも、母子生活支援施設「ポルテあすなろ」って、どんなところなのか。住む場所がない、経済的に行き詰ってる、何らかの理由で生活に支障があるなどの理由で困っている母子世帯に入居してもらい、サポートする施設です。児童福祉法に基づくので、18歳未満のお子さんの養育が条件に。こうした施設は、全国に232カ所あり、約3,300の母子世帯が入所しています (平成28年現在)。

 

3本柱は、「インケア」「リービングケア」「アフターケア」。

「インケア」は、母子の日々の生活を支えること。お母さんと子どもの全部を受け止め、家事・仕事・子育てなどの相談に乗ります。生活費はお母さん自身が負担するものの、家賃は発生せず所得に応じて利用料をいただきます。働いたお金で貯金し、ポルテで生活をしながら生活基盤を整えて地域へ旅立ちます。

「リービングケア」は、お母さんが地域で生活するのに必要な支援や社会資源をつないでいくこと。「ポルテホール事業」で開催するイベント、サマースクールや地域食堂などを通して、母子ともに、いろんな人や物とつながって、地域とのかかわりを増やしてもらいます。

「アフターケア」は、施設を出た後に月に1回、「ポルテあすなろ」に来てもらったり、職員が自宅へ訪問するかして、関係を継続して、積み残した支援を提供していきます。

 

「ポルテあすなろ」の若年シングルマザーから見えてくる家族の問題

2019年4月、「足立区立あすなろ大谷田」から民設民営「ポルテあすなろ」として再編された際、入居者の傾向を調べてみたんです。すると、20代が83%、未婚・非婚が73%「住宅困窮」が入居の理由の半数を超えていました。

 

「住宅困窮」とは、実家に帰れず、住む場所がないということです。若年であったり、経済力を持たない中で女性たちが子どもを連れて離婚となったときに、親や親族が母子を助けることができない。娘を引き受ける力が、経済的にも心情的にもないという現実が見える。例えば、3世代が生活保護を受けていたり、親や兄弟に障害があったり、親もシングルであったり、ステップファミリーなどの再婚家族もある。家族自体に力がなく、色んな理由でシングルマザーになっても、実家に帰るに帰れない。そういった理由でここに「ポルテあすなろ」に入ってくる。

 

ちなみに沖縄だと若年の妊娠率が高いのですが、意外と施設入居率が低い。若年で妊娠・出産・未婚だと、親族が受け皿として機能しているのでしょう。「ポルテあすなろ」のお母さんが若年で居場所がない傾向は、足立区の母子家庭の特色といえるのかもしれません。

 

また、私が2017年に入所したときに驚いたのは、ここに来てから障害者手帳を取得したお母さんが3人もいたということ。当時は10世帯ほどだったので、数としてはかなり多い。若年で母子家庭となったときに、家族や親族の擁護を受けられないということは、家族の中に貧困の連鎖や、親自体に障害を持つケースが多いのでしょう。同時に、障害を持つ女性の子育てをどう支えるか、こういったことを課題として考えていかなくてはいけません。

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