タビスルオヤコの「学校」

教育

ルポvol.47 【教育】

マルタ共和国に一家で移住。帰国後は小学校を選ばず

佇む「おかあ」と「おとう」の姿。どことなく哀愁漂う。こまやかな観察眼を感じる。その魅力的な絵の作者は、なんと小学3年生の女の子。改田友子さんの愛娘・結さんである。0歳で絵筆を握って以降、いつも夢中で何かを描いているそうだ。

 

「タビスルオヤコ」を宣言する改田家の教育方針は、一般家庭の感覚からすれば、相当に思いきったもの。小学校入学を目前にして、一家でマルタ共和国に移住。わが子を、世界中から生徒が集う語学学校に放り込む。帰国後は、宮崎県のオルタナティブスクールを選び、ときに東京の自宅で「ホームスクーリング」。今も地元の公立小学校には、通っていない。しかし、日々の「タビ」という「学校」で、生活に直結した学びの中、豊かな時間を過ごしている。

 

「義務教育」も、親が選択していいはず

最近、「不登校児」をテーマに、何人かの方を取材。その中のお一人、当事者の親で支援者でもある牧瀬美香さん(vol.47)から紹介されたのが、改田さんだった。画一的な義務教育に疑問を持ち、「行かない」ことを親として選択。いまだ学歴社会の日本においては、かなり勇気がいることだ。

 

改田さんのインタビューの中で、私立の中学受験に臨む小学生が増えている話題が出た。「周りが受験するので、わが子も」と突っ走る親たちの話を、人づてに聞くと言う。不合格となり傷つく子もいる。「行列があるから並んでしまう」心持ちを、つい連想してしまう。「何の店か分からないが、一生懸命待ってたどり着いたら、食べたくもないラーメン屋だった…」みたいだなと。店選びなら罪はない。しかし、子どもの教育や成長に関して、この心性で行動することは、相当に危ういことではなかろうか。柔らかい心に重大な影響を与える「義務教育」こそ、親が自覚的に選択していくことは「あり」だと思う。

 

ジクザグ人生で、流されない「価値観」を持つ

それには、世の中の「アタリマエ」に流されない胆力が必要だ。改田さんの場合、幼少期に複雑な家庭環境に悩むなど、平坦でないジグザク人生がそれを培っている。自身の子を得てモンテッソーリ教育を実践し、また「子どもの居場所」を地域につくりもした。といって、「教育、教育」と、まなじり決しているわけでもない。親ではあっても、パートナーと共に、日々、自身の夢に力いっぱい挑戦している。特にいいなと思うのは、わが子が自分らしく成長する姿を、「邪魔」せずに見守る姿勢だ。だからか、娘・結さんの自画像は、真っすぐ「自分」を見つめている。

 

(改田友子さんのインタビューは、2023年6月20日、北千住の喫茶店にて行った)

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