ルポvol.46 【不登校2】
不登校児を応援する団体「あるこいりす」
駆け登ってみたら、どうだろうか? そう直観して逆走し、すべり台の天辺に達した子どもは、きっと何かを発見するだろう。しかし、大人はそれを許さない。「したからのぼらない」という禁止ロゴ(遊具安全利用表示)をベタリとはり、遊び方のルールを規定する。
「それって、大きなお世話ですよね~」と嘆くと、「まさに、そう!」と力強く相槌を打つのは、足立区・親子サポーターの「あるこいりす(Arco-iris )」の共同代表・佐久間久美子さん。行き渋り・不登校・発達障がいの子どもを応援する団体を運営している(※もう一人の共同代表は、牧瀬美香さん、vol.45)。インタビューさせていただくと、自由に遊べない今の子どもは、「発達する機会が奪われている」と指摘。巷に流布する「発達障害」の意味が頭の中で逆転して、ふいをつかれた。
子どもの「居場所」「基地」をつくるのが目標
佐久間さんは、元々、不登校児にかかわる「虹色応援プロジェクト」を率いている。「子どもの未来を豊かにつなぐ あいりす」(代表・牧瀬さん)と一緒に活動することになり、2023年3月、「あるこいりす」を結成した。名前の由来は、スペイン語で「虹」。一人ひとりの子が、自分らしく輝けるようにと願いを込めた。目標は、子どもの「居場所」「基地」をつくること。2024年4月1日に、法人化を目指している。
「支援」ではなく、「応援」するというスタンスなのは、佐久間さん自身、不登校のお子さんを持つ当時者のお母さんであるからだ。次々と直面する難題は、相談に来る親御さんと同じ。それゆえ実際の経験からアドバイスできる。ただし、ゴールは「学校に戻る」ことにあらず。
子どもが不登校になって知り得た「本当のこと」
ある日突然、子どもが不登校になったとき、佐久間さんは、とまどった。対処法が分からないからだ。以来、お子さんと二人三脚で、学校とぶつかり、世の価値観とぶつかった。その過程と見識を詳しくお聞きすると、だんだん明るい気持ちになる。むしろ「不登校」の方が正しいのではないのかと。そして、相談する保護者が一番勇気づけられるのは、佐久間さんの親としての腹のくくり方かもしれない。キーワードは、「発達」。
取材後、公園のベンチでぼんやり座っていると、目の前のすべり台に気づく。若いママたちが、乳児を抱いての立ち話。その傍ら、5歳ぐらいの男の子が、目にもとまらぬ速さで、すべり台を駆け上がる。天辺に乗って、両足をドンドンドン! この勢い、止めようと思っても止められない…。
(佐久間久美子さんのインタビューは、2023年4月15日、北千住の喫茶店にて行った)
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