「仕上げ磨き」は、15歳までやっていい

歯科

<インタビュー・宮田滋子さん>

 

「正しい歯磨き法」を身に付ければ、一生虫歯にならない

虫歯は、子どもの病気。その子が虫歯になるか、ならないかは、親の責任です。

 

歯を失う原因は、基本的に虫歯と歯周病。実際は、大人の病気である歯周病の方が確率的には大きい。ただどちらの予防法も、歯ブラシでプラック(歯垢)をとることにつきます。歯ブラシという所作は無意識な動きなので、本当に効果的な歯磨き法は、大人になってから身に付けることがなかなか難しい。しかしそれを、子どものうちに親が「仕上げ磨き」することでサポートすれば、虫歯にならず、同時に、正しい歯磨き習慣を体得できます。そうなれば、一生、歯医者に行かなくてすむ可能性が高くなる。

 

「仕上げ磨き」とは、磨きの残しを防ぐため、大人が子どもに行うケア。子どもの手先の神経は未熟だから、必要なことなんです。歯科医師の立場からすれば、15歳までやっても過保護ではありません。

小学校に上がる前後の6歳のとき、第一大臼歯、別名「6歳臼歯」が生えてから、仕上げ磨きはようやく「本番」となります。乳歯が虫歯になっても、極端な話、生えかわるので問題ありません。保育園までは、親子ともども歯磨きのトレーニングと思えばいい。「え~っ、やっとこれから本番なの~」と、めげそうになる親御さんもおられますが…。

 

なにより、歯磨きに対して、興味を持たせることが大切です。

「はみがきあ~ん」プロジェクトでは、お子さんと親御さんが、歌いながら歯磨きし合う様子を描いた絵本をつくりました。児童心理学に基づいた内容で、子どもの歯の原寸大ペーパークラフト(意匠登録済み)もつけています。また、絵本に掲載している歯磨き歌は、次男(小学2年)の実際の言葉を元にし、幼い子が口づさみやすいフレーズに。これらのセットで、子さんが歯に関心を持ち、楽しみながら歯磨きするようになったと、親御さんから高評価を得ています。

 

「始め」と「終わり」は、親が主導権を握るべし

仕上げ磨きは、離乳食が本格的に始まったあたりからスタートしてください。食事に、ご飯や果物など、虫歯の原因となる糖質が入り出すからです。でも、できればまず、0歳から子の口の中に、親の手をつっこみ、「異物が入る」ことに慣れさせることをすると良いです。次の段階では、歯肉の汚れを、声をかけながら優しくガーゼで拭う。「口の中がキレイになる」イコール「気持ちいい」を、早い時期から体感させることが大切です。

 

1歳から3歳は、歯が生え始めるので、親が歯ブラシを子の口に入れ、本格的に歯磨きします。子どもの歯磨き法は、歯ブラシで歯の表面の汚れを取り、フロスによる歯間の掃除。子どもが動くと危ないので、親の太ももで、両手を押さえつけ、頭を挟み、がっちり固定すること。最初は、つらがって逃げ出す子もいるでしょう。そのままとがめないと、「自分が逃げたら、終わりだな」と思って、次から言うことを聞かなくなります。逃げたら呼び寄せ、「もう1回、口を開けて、お母さんがチェックしたら終わりですよ」と再開すること。楽しく仕上げみがきする方法は、私の講座で紹介しています。

4歳からは、社会性が身に付く時期。仕上げ磨きをしながら、歯を磨く重要性を、言葉で語りかけてください。

 

自分で歯ブラシをしたがるようなら、危なくないように見守りながら自分でやらせる。でも、その後は、親がしっかり仕上げ磨きする。

 

仕上げ磨きは、「しつけ」。自信を持ってやること

仕上げ磨きは、「しつけ」と同じです。しつけは、ミッションを与え、達成したことに対して、褒める機会を与えます。親に褒められれば、子どもは自信がつく。上下関係で、親が子どもにいうことをきかす、というのがしつけではありません。共同生活をなるべくスムースにおくっていくためのルールづくりでもあります。これは、歯のことだけじゃない。

 

はがいじめのようなポーズは、歯科の教科書に記載されているわけではありません。仕上げ磨きの大切さを認識する歯科医や歯科衛生士が、自然と実践していることです。子どもの嫌がる姿を見て、一番身近な家族、例えば夫や姑に、「そこまでやる必要があるのか?」「可哀そう」と言われ、心揺らぐかもしれません。ても、子に対する愛情からやるのだと、自信を持ってやり続けてください。

 

「どっちでもいい」とふらつくと、子どもに見抜かれます。「お母さんの手間を減らしてあげよう」と、あえて嫌がって見せる子もいる。でも、やると心を決めたら、子どもは受け入れてくれます。それで手を抜いてやってると、「もっと、しっかりやってよ!」と、子から叱られることもあったり。

 

健康に関しては、自主性はいらないと思います。大人が管理しなくちゃいけない。子どもは、その必要性や方法を理解していませんから。段階的に言えば、生命の危機は当然守る。次に、健康を害することから守る。虫歯は後者に該当します。命、健康は、何があっても守らなければならない。子どもが、車から道路に飛び込もうとすれば、骨折しようがぐいと引っ張る。それを誰も、「虐待」とは言わないはずです。

 

親子のかけがえのないスキンシップの時間として

仕上げ磨きは、夕食が終わってから寝る前の、ゆったりした時間にやるのが最適です。親子の貴重なスキンシップの機会として、丁寧に行ってください。兄弟姉妹がいる場合は、マンツーマンで接する唯一の時間になります。相手は話せませんが、語り掛けるのもいいでしょう。頬っぺたの内側に線があれば、何かストレスを抱えているのかもしれません。何回も食いしばってできるものなので。「あなたのことを、いつもよく見ているよ」という気持ちが伝われば、子は安らぎます。

 

私の場合、8歳の子は、仕上げ磨きの真っ最中ですが、上の16歳と14歳の子2人は、小学5年生から、全部1人で歯磨きしています。そうはいっても未成年。一見大人びてますが、まだ当然危なっかしい。だから時々、チェックします。「見るよ~」と言えば、「は~い」と口を開ける。できてないところを指摘すれば、即座に磨きなおせるように。

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