介護職に、外国人を

外国人
介護施設が外国人を受け入れる壁は、日本語の試験

今、頭を悩ませているのは、人材不足です。どこの業界でもそうかもしれませんが、日本人が、働きに来てくれません。必然的に、外国の方の力を借りざるを得ない。方向として一つは、日本に定住している外国の方で、介護の仕事をしたいと希望する人を採用し、教育すること。これは行っている最中です。もう一つは、ゆくゆくですが、留学という形で海外の若い方に、こちらに来てもらうことを考えています。

 

留学の場合、日本の介護福祉学校で2年間勉強し、卒業後5年間、日本のどこかの介護施設に勤務すれば、学費が免除される制度があります。だから外国の若い人が、  たくさん日本に来ている。壁となるのは、試験、ペーパーテストです。介護福祉士では国家試験、ヘルパーでは介護職員初任者研修(以下、初任者研修)に受かる必要があって、その試験をどうやって突破するかというのが、外国人の介護職を確保するためのハードルになっています。経済連携協定(EPA)で、中国やベトナムは、かなり優秀な人を送り出していますが、それでも合格率は高くない。

 

日本の介護福祉学校に通って卒業すれば、ペーパー試験に合格しなくても、介護士と同等だと「みなし」、在留資格も認められます。だからか、介護福祉学校では、外国人の生徒が多い。

 

千住にある介護福祉の専門学校を見学したことがあるのですが、新入生20人の生徒の内、15人、つまり3/4は外国人なんです。フィリピン、ベドナム、ミャンマー、韓国から来ていました。日本人は5人、1/4だけです。学校側からすると、留学生に対して、試験に受からないから母国に帰ってもらう、となると学校経営が成り立たない。現状から「みなし」は認められています。

 

しかし「みなし」の人が介護施設に入ってくるにしても、そこで働くためには、初任者研修を終了するか、介護福祉の資格を取るか、どちらかが必要になります。初任者研修は、130時間の受講時間が求められる。実技は、食事や車いすの介助、ベッドからの移譲のやり方など。学科は、3巻の教科書を渡され、理論的なところを自分で理解してくださいと求められる。

 

介護現場で、評価の高いフィリピン人職員の働きぶり

うちの施設で採用した外国の方も、初任者研修の最後の試験に苦労される。日本人の配偶者がいる人で、日本語が話せても、漢字で書かれた介護の専門用語を読み解いて解答するのはかなり難しい。しかし、1人のフィリピン人女性職員(飯塚ジョシィさん)が、独力で合格したんです。その後、彼女に通訳者を務めてもらって、僕が解説する形で、フィリピン人職員数名と勉強会を開きました。その結果、みなさん合格してモチベーションも上がり、会社にとっても、良いことでした。

 

現場でのフィリピン人職員の働きぶりには満足しています。母国では大家族の中で育っているのか、高齢者に対する対応は適切で、評判がいいんです。利用者さんが職員を呼びとめたとき、日本人職員だったら多忙さから「また後で来ますね」と言ってしまいがちです。しかし、フィリピン人職員は、言っていることがよく分からない場合は、傍に行って話を丁寧に聞く。利用者さんからすると、自分の話をきちんと聞いてくれたと感じる。うまく言葉が通じないということが、かえってコミュニケーションを深めることにもなる。

 

ベトナムの留学生を、足立区に受け入れる体制づくり

『ベトナムの風に吹かれて』(角川文庫)と、いう小松みゆきさんの本に感銘したことがきっかで、ベトナムに関心を持ちました。認知症になった母親を介護するために、1人娘であった著者が自分の仕事場であるハノイで、周囲のベトナム人の力を借りながら、介護をする様子をつづったエッセイです。「認知症介護に言葉は必要か」という問いに、「必ずしも必要ない、むしろ優しい心こそが必要」ということを教えてくれました。

このことは、認知症の人たちが暮らす当社のグループホームで、フィリピン出身の介護職の方が活躍している姿とも一致します。

そのベトナムから留学生から来てもらえるよう、少しずつ準備を始めています。2019年には、ベトナムのホイアンに行きました。ベトナム中部に位置し、朱印船貿易のころから日本とつながりのある町です。そこの日本語学校を訪れたのですが、日本語を学ぶ子どもたちは、将来は日本で働きたいという希望を持っていました。先生は日本人でしたが、「技能実習生としては出したくありません。留学して学んだ後、働き手として、あなたの施設で受け入れてくれるのであれば、ぜひ協力させてください」と、言ってくれました。

 

足立区に来てくれれば、なんとかなるかなと、僕は思っています。専門学校は区内にあるし、住む場所としては花畑団地が最適です。この団地はエレベーターがないので、高齢化が進むにつれ年配の人が低層階に移り住み、4、5階は空室に。ここに若いベトナム人が入居すればいい。団地の事務室に行って打診したら、「借りてくれる人がいるなら、誰でもいいです。社宅にしてもらってもかまわない」とのことでした。

 

10年20年後、僕らが退去しても、会社は存続していきます。介護を望む人たちは、減ることはないでしょう。しかし、介護する人材は、確実に減ります。長期的な視点に立てば、毎年、確実に、何人か海外から留学生を定期的に受け入れる仕組みを、今からつくっておく必要があります。そのときになって、「人がいない!」と慌てても手遅れですから。

 

外国人職員の子ども含め、会社としてサポートしたい

日本に定住して働く外国人の職員は、子育て中のお母さんが多いですね。あるフィリピン人職員のお子さんは、日本で生まれ育ったので、普通に日本語が話せ、今年、中学から高校へ上がれました。別のフィリピン人職員は、産休に入っていますが、3歳と5歳の子どもがいます。ご主人もフィリピン人なので、家庭内の会話は英語かタガログ語でしょう。だから、「とにかくお子さんを、保育園に出しなさい」と言っています。なるべく早く、日本語を話せる環境に身を置いた方がいいからです。介護職であれば、入所もわりと優先的に受け入れてくれるはずですし。

 

このあいだ、日本語講師の養成講座を受けたんです。「言語をどうやって獲得するか」「日本で外国人を受け入れるのはどういうことか」など、相手の立場に立った内容だったので、聞けて良かったなと。外国人の職員に働いてもらうには、お子さんも含めて、会社としてサポートしていく姿勢が大切になります。「子どもが学校になじめず、心配で仕事が手につかない…」と、なってはいけない。課題はもう分かっています。それにちゃんと向き合って、取り組まないと。

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