介護職に、外国人を

外国人

<インタビュー・飯塚ジョシィさん>

利用者さんを、笑わせたい

仕事で使う日本語は、スマホに書いて記録して学ぶ  

これ、読みづらいですね (冊子『インタビュー!  足立の子ども支援』をめくる)。漢字の上に平仮名を書いたら、外国人は読みやすいと思います。漢字は、何回書いても覚えられないときがある。私は日本に来て20年なので、話すのは大丈夫。でも、やっぱり生まれ育っているわけじゃないから、読み書きが…。

 

私が勉強したいのは、いつも仕事で使っている漢字。利用者さんの記録をつくるために覚えたいんです。

 

(自身のスマホ画面を上田に見せると、以下の文面が書かれていた)

「利用者さんは、フロアでテレビを見ながら、楽しそうな様子」「頭を洗うと気持ちがいいとおっしゃっていました」「弁当を届ける」…。

 

合ってますか? スマホの画面に書いてから、職員たちに見せて、間違ったところを教えてもらいます。直して正しい文を、施設のデータに入力します。そして、スマホの記録は残しておき、後で読み返します。

 

とくに「て」「に」「を」「は」の使い方が難しい。利用者さんのことについて説明したいことは頭の中でまとまっているのですが、なかなか記録にできません。もっと書き方を覚えたい! そして、丁寧な言葉使いを勉強したい!

 

初任者研修の試験合格後は、後輩のフィリピン人に教える

この介護の職についたのは、1年半前です。

足立区役所で、「私はシングルマザーです。介護の仕事をしたいのですが、どこかありませんか?」と聞くと、派遣会社を紹介してくれました。その派遣会社から、「良さんの家」(看護小規模多機能型居宅介護)に派遣。2カ月間働いた後、正式にコントラ(契約)しました。

 

これまで、日本では、タレント、居酒屋や食料品店の店員など、さまざまな仕事をしてきました。でも、介護の仕事は初めて。仕事をするようになって、同時に勉強を始めました。

 

初任者研修では、やはり読み書きに苦労しましたね。

(ノートを見せて)「障害者自立支援法」(Disability Independence Support Law)、「人権と尊厳」(Human rights and dignity)など、難しい単語の横に英語を書いて学びます。

それで、なんとか試験はクリア。

 

この会社では、私が一番初めてのフィリピン人です。その後、私の紹介で、他のフィリピン人も入りました。同国人だから、知らん顔するのではなく、助けたいという気持ちがあります。私が先輩として知っていることは、教えたいじゃないですか。だから、勉強会をやりました。3、4人は初任者研修の試験に合格したかな。あと一人、まだ頑張ってているので、応援したいです。

 

利用者には、楽しい会話をして、いい思い出をつくってもらう

介護には自信があります。どうやって利用者さんをケアするか、仕事をしながら勉強しています。例えば、1人でどうやって利用者さんをベッドから車椅子に、またその逆の方向に、無理なく移動させるか、自分の腰に負担がかからないようにするか。一つひとつの動作について、教科書や先輩のやり方を参考にしつつも、自分のやりやすい方法を考えます。ちょっと寄りかかってください(上田の体を支え、椅子から起こす実演をしてくれる)…こうすれば、楽でしょ!

 

フィリピンでは大家族なので、介護は家族でするのが当たり前。慣れています。お父さん、お母さんを、他人には任せられないもの。だから、頑張ってやる。自分の家族だから、してほしくないことはしない。丁寧にケアしたいじゃないですか。気持ちがあれば、何でもできる。

 

利用者さんには、楽しい会話が一番大事ですね。ただの仕事じゃなく、笑わせるの。面白い話をすると、ストレス発散になりますし。

部屋に行っては、お一人おひとり、名前を呼んでは話しかけます。「何人、彼女いましたか~?」と冗談で尋ね、いろいろお聞きするうち、その方は、少年時代を思い出されました。「サッカーボールを女学生のグループの方にわざと蹴って、取りに行った。気を引くためにね」なんて、生き生きと話されて(笑)。

 

私は、体操では、ビデオは使いません。あまり好きじゃない。利用者さんが、映像のインストラクターの動きについていこうと、慌ててしまわれるから。だから私自身が動いて見せて、みなさんには自分のペースで。

 

声も出してもらいます。「元気な声が聞きたいから、『こんにちは~』と、大きな声で挨拶しましょう!」「左側の人の声、大きいよ~! 右側の人負けないで~! 」と励ますと、利用者さん全員が、自然に大声で「こんにちは~!!」って。

 

私は、利用者さんと過ごすとき、その時間だけでも楽しくさせてあげたい。いい思い出をつくってあげたい。この仕事、大好きなんです。

 

子育ては、母国の家族が日本に来てサポート

旦那と離婚して、7、8年かな。子育てで大変なのも言葉ですね。息子は、日本で生まれ育ったので、もう日本人。たまに、通じないときがあります。「ママ、そうじゃないでしょ。こういう言い方だよ」と注意されるたびに、「ごめん、間違いました」と謝る。逆に私に教えてくれます。

 

今、15歳。体も大きくて、お父さんみたい。こないだ新しい家に引っ越したばかりで、その手伝いをしてくれてます。今年、中学校から高校に入学できました。スポーツはなんでも好きで、学校では野球を夢中にやっています。

 

子どもが小さい頃の苦労は、あまりないです。そのときは、結婚していましたが、フィリピンから、お父さんとお母さん、兄弟を、日本に呼んで、子育てや家のことを手伝ってもらいました。何回も呼んで、一緒に住んだかな。3カ月から、長いときで半年ぐらい。

息子も、年に1回のペースで、何度もフィリピンの家族の元に連れて行きました。タガログ語や英語を忘れないようにするためです。

 

彼はもう精神的には自立していて、自分の将来のことは、しっかり考えているみたい。フィリピンと日本を行き来して、なにかビジネスをするかもしれません。

 

日本の方が、働くところはたくさんある

フィリピンは故郷だけど、日本の方が好きかな。フィリピンは、貧しい国です。私も、元々貧乏でした。日本で頑張ったから、生活が良くなりました。日本の方が、稼げる仕事がいっぱいあります。フィリピンでは仕事があっても、やっぱり生活は成り立たないです。

でも、いつかフィリピンで、介護の養成学校をつくることが夢ですね。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

<問合せ>

株式会社 ケアサービス とも

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