外国人問題の根は、日本語の壁

外国人

「読めない、書けない」が、外国人を貧困に追い詰める

生活の中での語学学習は、本当に難しいものです。現在、大人の生徒は、主に外国籍のお母さんたちが多い。日本に来た当初は時間があり、仕事を見つけなければいけないので、日本語の勉強を熱心にやります。しかし、アルバイトでも職を得た途端、勉強を辞めてしまう。忙しくなり時間がとれないからです。いつまでたっても、読めない、書けない。仕事といえば、コロナ禍で人手不足となった病院の清掃など、誰でもできるような誰もがやりたくない業種になってしまう。

 

一番困るのは、入管(入国管理局)との関係です。日本語ができないので、労働ビザを取得することができない。入管に行かなければならなくなっても、行けばビザがないことがバレてしまう。それで、ずっと隠れることになる。

外国籍の人を雇う際、経営者は、入管に知らせることが義務となっています。一方で、ビザのない状態で雇ってもらいたい人がいる。真面目な経営者なら、「ビザを取ったら雇います。そのためにサポートしましょう」と支援するかもしれませんが、そんな人はまず少数。たいていは、ビザのない外国籍の人をしばら雇ってはすぐにクビにして、新しい人を雇う。働きたい人はいくらでもいます。そして、多く外国籍の人は、会社の入管への報告義務すら知らず、知ってからとまどう。

 

外国籍の女性は、労働ビザを持たず日本に出稼ぎに来ているケースが多い。また、労働ビザはもちろん定住ビザを取るには条件がそろわない。そこで悪質な会社は、彼女たちに、日本人社員との偽装結婚を強要して、ビザを取得させる。働けるようになれば、彼女たちは、海外の母国にいる子どもを日本に連れて来る。子どもは日本の学校に通うも、日本語ができない。便宜的な結婚には、当然愛はなく、夫婦間のコミュニケーションがそもそもありません。家庭も不安になり、子育てもうまくいかない。

 

ほとんどの外国人問題の根っこは、日本語です。それが、壁ですね。

 

日本の教育は、外国人を受け入れることで豊かに

ここに来る子どもたちに接していると、外国人ということで、学校でいじめられる子が多いことに気づきます。だからAIAが心安らげる居場所になっている。その大切な場をなんとか維持しようと尽力しているスタッフは、とてもよくやってくれると思っています。

 

私は、日本の教育を見ていると、大きな損をしていると感じています。今、日本にたくさんの外国人が入って、多様な文化や価値観がもたらされている。いろんな才能が集まって、日本の文化にもっと豊かさを増やすことができるはずです。しかし、日本の教育はそれを利用していない。

本来、義務教育は、日本人だけじゃなく、日本に住むすべての学齢期の子どもたちが受けるべきものです。日本の外務省、文部科学省、特に自民党は、外国政府につながる外国籍の子どもを、日本の学校の中に入れることに反対する人たちがいる。そして今の日本には、2万1000人ほどの外国籍の子どもが、義務教育を受けていない。その子どもたちが日本の学校に入っていれば、学校は豊かになるはずなのに。

 

AIAは、イエズス会に関わりあることから、カトリックの価値観を大切にしますが、宗教的なしばりはなく、多様な文化的背景を尊重します。ただ、その宗教に裏付けられた教育の柱は、「人間を尊敬する」ことです。特に、社会の中で、いじめや差別を受けている人を見過ごさず、一人一人を大切にすることを、ボランテイアの人たちに求めています。

 

未知の国「日本」で、多くのことを学んだ人生

私にとって、日本はまったく未知の国でした。

スペインの大学時代、私は日本についての論文を書きましたが、テーマは、第二次世界大戦時の日本兵による「人間魚雷」です。それは、生身の兵が魚雷に入り込んで、敵方の潜水艦に自爆攻撃をしかけるもの。なぜ、こんなことができるのか不思議な国だと驚き、いろいろ調べたものです。

宗教家としては、日本は長いキリスト教の歴史を持つのに、長崎の隠れキリシタンや過酷な弾圧などあり、なぜ信者が広がりにくいのか関心を持ちました。そして、宣教師として活動するには、難しい国だなと。しかし、若いときには夢と理想を持っているじゃないですか。難しいからこそチャレンジしたいと。

あれから60年以上、この国で、暮らし、活動し、経験を重ねました。「謎」は依然として解けていません。でも、日本の良さがたくさん分かりました。外国にルーツを持つ人も、日本にルーツを持つ人も、お互い学び合えることは多いのです。

(聞き手/上田隆)

 

<経歴> 安藤勇(あんどう いさむ)

スペイン生まれ。1959年に来日。1966年に上智大学社会経済研究所入所。1971年に同研究所内アジア間関室室長。1979年に国際NGO JRS(Jesuit Refugee Service)委員会委員。1981年にジャパ・ベトナムNGO代表。1983年7月にイエズス会社会司牧センター長所長。1991-1997年に日弁連懇話会の委員就任。1997年に上智大学退職。2006-2008年ハビタット・ジャパンの理事長。現在、NPO法人AIA理事長。イエズス会社会司牧センター移民デスク担当。

 

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