「つながり」育む、“がきんちょ”地域食堂

イベント

ルポvol.7  【イベント2】

とくに告知はしない。しかし、当日になると、わさわさ子どもたちが来る、母子が来る、近所の老若男女が来る。そしてテーブルを囲み、ボランティアの人が作った手料理をワイワイ食べる。今、よく耳にする「子ども食堂」のようだが、そうではない。まちの多世代交流の場にしたいからと、会名は「”がきんちょ”地域食堂」。「食堂」の前に「地域」がつく。

 

原点は、近所の子どもたちの「ごはん食べていく~ぅ!」

足立区で、今は毎月1回、第1水曜日に開かれるこの食堂は、2017年から開始された。孤立する若者、高齢者、家庭の課題に対応しつつ、人がつながれる場づくりを目指す「”がきんちょ”ファミリー」の活動の一環として行われている。足立区の保塚地域学習センターとポルテホールを拠点とする。

 

運営するのは、大山光子さんだ。「”がきんちょ”ファミリー」の代表であり、「あだち子ども支援ネット」代表理事で、「こども”ど真ん中”プロジェクト」代表にして、「Adachiちゃりネット」の仕掛け人、そしてこども支援士でもある。いろんな顔をお持ちだが、その実体は…「子どもも大人も団体も、みんな集まれ! 何かやろう!」と両腕を広げて呼びかける、「足立の『大きな広場』のようだ、この人は」と、私はひそかに思っている。

 

そもそも「”がきんちょ”地域食堂」の原点は、「子ども食堂」という言葉もなかった30年前の出来事にあるという。大山さんのご自宅に遊びに来たお子さんの友だちが「ごはん食べていくぅ~!」と歌うように言って、夕飯を美味しそうにほうばった…。それから近所の子どもたちに温かな食事をふるまう自前の活動がスタートし、今に至るまで発展的に続いている。大山さんの多彩な活動の基本は「地域食堂」にあるのではないか。そう考え、9月2日、「ポルテホール」で開催された”がきんちょ”を見学させてもらった。

 

助成金を当てにせず、「お代わりできる」量の食材を調達

15時30分に会場に入る。磨かれたフローリングの上に、食事用の机8台を、講義型の前向きに並べているのは、新型コロナ禍による「ソーシャルディスタンス」対応のため。いつもなら向かい合わせに食卓を囲む。参加人数は30人を予定。

大鍋の水に火を入れ、野菜を刻む作業が、もう始まっている。調理スペースにてエプロン姿で立ち働くのは、3名のボランティアの方。大山さんのお子さんの同級生の母親Aさん、かつてPTA活動でいっしょに活動していた主婦Bさん、別の支援活動団体を主宰するHさんだ。

 

テーブルに山と置かれた食材。費用はどうしているのか。

「ほぼかかっていません。私の知人のシニア層たちは、買い物すると食材を使い切れない。それで余ったものをこちらに回してもらったりしています。提携先の団体から無料でいただくものもあります。『地域食堂』と名乗っていますから、かつて助成金は出ませんでした。でも、地域のモノとお金の循環でなんとかやりくりできてます」と、大山さんは語る。大人の参加者は、スタッフ含め全員が200円を出し、次回の費用にもする。そうした仕組みだから、30人募集したとしても、お代わりできるように作り置くことができる。

 

この日の食材は、こんな感じ。

新鮮で艶やかな卵が60個。これは、大山さんの子どもの同級生のパパが、勤め先の茨城の農家から買って提供してくれたもの。大きなフィリピン産のツナ缶6個は、NPOセカンド・ハーベスト・ジャパンから(ちなみに缶を手にしたHさんは「昔、親戚が法事なんかで集まったら、大きな缶詰の中身を分け合ったわねぇ」と感慨深げ)。また、ハーベストは、お土産用のお菓子も提供してくれる。米は、あるご夫婦から「実家から送られてくる分が余ってしかたない」と持ってこられたもの。レタスや玉ねぎは、子ども食堂支援協議会から…などなど。

メニューは、調理するみなさんの主婦としての経験で、集まった素材から決められる。足りないものは、スーパーへ走って買い足す。

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