生きづらさは、心の「退化硬直」から

発達障がい

ルポvol.5  【発達障がい 3】

「人が怖い」と、悩む子がいる。一、二、三のかけ声で転がしたボールが、向かってくる相手のボールとコツン。その子の胸に、何か暖かいものが流れる…。

発達障害をはじめ、生きづらさを抱える人たちに向けた「イイトコサガシ」のワークショプ風景。グループでの楽しいアクティビティを通じて、話す・聞く・雑談することを体験し、学ぶことができる。2009年10月より活動が開始されて以来、就労支援機関、企業、学校などで1000回以上開催され、全国で延べ10000人が参加した。

 

10年目の2019年12月、これまでのノウハウを、マンガと文章で詳細に解説した書籍 (『発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ』冠地情 漫画/かなしろにゃんこ。講談社 1,500円(税別))が発行された。そこで本を手にし、イイトコサガシ代表の冠地情さんの元にうかがうことに。ご自身が、発達障害(アスペルガー症候群でADHD)を抱えられており、当事者としてつくり出したワークショップの背景にある考え方を聞いた。主に本に書かれなかったことを。

 

互いの「イイトコ」探し、自己肯定感を高め合う

前提として、本が解説するワークショップの概要を紹介しよう。

 

アイスブレイク(会話の準備運動)&ワークショップ全40種を収録。マンガで解説しているので再現しやすい。

参加者は、進行者のファシリテーター1を含む5~6人がベスト。基本は、参加者が互いに「いいところ」を探し、自己肯定感を高め合って進めていくこと。批判やダメ出しはNG。ルールをつくり「安心してコミュニケーションを試せる場」の中で、みんなで楽しく会話力鍛えていく。

ルールの一つに、発言時間を15秒30秒と制限することがある。延々と話すことを禁じる一方、寡黙な人に話すことを促す。また、各参加者がネームプレートに「みんなに呼んでもらいたい名前」を書いて胸に貼る。人と接するのが苦手な参加者の心を前向きにする工夫である。

 

ワークショップは、「自己紹介」→「自分を見つめる」→「会話を楽しむ」→「創造力を伸ばす」という章立てで紹介。章が進むにつれ、ゲームの難易度が高くなり、社会性も増す。

冒頭のアイスブレイクは、単純だがとても魅かれる。言葉以前の、ボールのやり取りやウェーブなどの動作は、人前でドキマギしている子の心を一挙にほぐすだろう。

 

このワークショップにおいて、「『私』と『あなた』が、ここに一緒にいて楽しい」ということを直接体験できたなら、生きづらい人にとって大きな「発見」や「支え」になるはず。

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