明るい不登校を!

不登校

<インタビュー・佐久間久美子こさん>

いきなり始まった次男の不登校

次男が、小学2年の初日から、「学校に行きたくない」と言い出して。1年生の終わり頃から、体調不良を訴え、休み出してしまいました。仕事が忙しかったので、「寂しいから、甘えているのかな」ぐらいに思っていましたが、いきなりという感じです。その日、2つ上のお兄ちゃんと一緒に行かせたんですけど、帰って来てから、「もう、絶対に行かない!」と。

 

最初は、本当に訳が分かんないので、やっぱり無理やり連れて行きました。学校の先生に聞けば、「教室に入って落ち着き、泣き止んでしまえば、後はケロッとしてますよ」と言う。「じゃあ、大丈夫かな」と、また引っ張って行くことに。学校は家からすぐそこですが、主人に車を出して乗せる。嫌がるのを抱えて、校門で待ち受けている先生2、3人に預けます。泣いて暴れるので壮絶になる。これを何度か繰り返しました。

 

それでも息子と話し合い、私が、教室まで付き添っていくなら登校すると約束します。でも、事情を知らない他の先生が、「お母さんがいると、甘えちゃうから」「帰ってください」と、校門で引き離してしまう。約束が果たせなくなり、子どもにすれば「お母さん、嘘つき!」になるじゃないですか。もう一時は、最悪な状態に。

 

当時は、私の中で「学校は行くもの」という、自分が育った時代の、何か刷り込みがあったので、悩みました。それで、いろいろ試したり、本を読んだり、ネットで情報を集めたり。でも、2年生も半ばとなり、「こんなことをやっててもしょうがない」と。それで、「もう行きません!」と学校に伝えたんです。

 

しばらく休ませると、たまに、「行ってみようかな」っていう日があったりする。今、6年生ですが、そういうときは、いまだに付き添い登校してますね。

 

理由分からず、とにかく「学校が嫌」

学校が嫌な理由? …本人にも分からないんですよ。それでもあえて言わせると、「何となく学校が怖い」と。無機質な建物の雰囲気でしょうか。あとは、「集団が苦手」。活発な子なんです。仲の良い友だちとも普通に遊びますが、教室の中に入っていくことは拒否する。親からいろいろ不登校児の相談を受けていますが、私の子のようなパターンが多い。もう全身で拒否している。本心から嫌なんです。

 

私も小学生時代に、学校に行きたくないときはありました。今も昔もよくあるようですが、女子特有のいじめで、仲間で無視される。そんなとき、子ども心に親に悟られたくない。当時、親の仕事の都合で、車で送り迎えしてもらってましたが、普段は友だちの家で降りるのを、ある日突然、「学校まで行って」と。多分親は気づいていたと思いますが、言えなくて。「お腹痛いな」と思いながら、無理やり行っていました。なので、泣きわめいて、親に「行きたくない!」と訴えられるのが、逆に「すごいな」って。感情をさらけ出して、自分の意志を言えるわけじゃないですか。私は、一切言えないで育ってきていますから。

 

義務教育は、「子どもが学校に行く義務」じゃない

子どもの不登校がきっかけで、いろいろ調べまして。「義務教育」については、私もはき違えているタイプでした。義務教育の「義務」って、「子どもが学校に行く義務」じゃない。「大人が、子どもに教育を与える義務」だ、ということです。また、子どもには、「教育を受ける権利」がある。だから、「学校」が子どもに合わなければ、何かしらの違う形を考えなければいけない。

 

足立区の「こども支援センターげんき」の相談窓口にも通い、スクールカウンセラーにもお世話になっています。でも、私たちとは、どうも目指すゴールが違う。最近、「無理に学校に行かせなくていい」という風には変わりましたが、行政側のゴールは基本的に「学校に戻す」です。「もう学校に行きません」と宣言しちゃえば、それはそれで学校は認めてくれる。ただ、そうなると親自身が、100%教育を保証しなければいけない。結局、親の経済力にかかってきちゃう。それで「なんとかしなきゃ」と、「虹色応援プロジェクト」や「あるこいりす」を立ち上げたわけです。

 

学校は対応してくれず、「登校サポーター」も使えない

息子が、不登校、そして「さみだれ登校」の状態でも、学校から目だったサポートを1度も受けませんでした。いつも相談していた方から、「朝のお迎えや、放課後の家庭訪問はありますか?」と聞かれて、「なんですか、それ?」と。

 

私は、飲食店で接客業をやってますが、店に来た近隣の小学校の先生に、うちの子のケースだと、どうなるか聞いてみたんです。児童が不登校になった場合、その子に対して、学校内で委員会が立ち上がって、「どうサポートしていくか」と対策を考えるという。

 

でも、昨年かな、うちの隣の男の子が行き渋りになっていたのですが、担任の先生が、朝、迎えに来てたんですよ。「こっちは、一度もないぞ~」と。親が積極的にかかわっていると、親任せになっちゃうんですよね。学校も、「あそこの家なら、大丈夫だろう」と。

 

「登校サポーター」という制度もそう。次男の同級生で、隣の学校に通っている子のママから、初めて聞いて知りました。そこで「利用したい」と担任の先生に頼んだら、「無理です」と。「母さんが送り迎えできている」というのが理由です。こちらとしては、致し方ないから付き添い登校しているだけなのに。

 

それでも頑張って「登校サポーター」を利用しようとなると、ものすごくハードルが高い。足立区では「こども支援センターげんき」が実施していますが、圧倒的にスタッフが足りてない。有償ボランティアですが、学校から「お母さんが、ご自身で探してください」と言われ、驚きました。そもそも人見知りの子だからマッチングも難しい。制度はあれど、使えない…。

 

子ども一人ひとりに向き合う時間がない学校の先生

問題は、学校の先生が、とにかく忙しいことにもある。日々、子ども一人ひとりの報告書を作成して、教育委員会に出す。その作成業務に追われて、「子どもにかかわる時間がないんです」と、先生からはっきり言われました。教育システムがおかしいんですよね。

 

私たちが子どもの頃は、わりと先生と生徒の距離が近かった。コミュニケーションが取れてたじゃないですか。でも、なぜ、今はそうじゃないのか。「報告書」にしても、何か問題が起きたとき、「学校側はちゃんと子どもを管理してますよ」という責任回避のために作成している気がします。

 

こうした風潮って、本当に戦後教育の弊害だなと。リスクを引き受けないシステムで育った大人が、学校や社会に蔓延している。感覚の鋭い子どもたちが、それを見抜いて、学校に行かないのかも。

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