不登校で成人しても、義務教育の学業は取り返せる
今の職場で、一緒に働いている22歳の男の子ですが、18歳の時、アルバイトで入ったんです。不登校で、幼稚園、小学校、中学校とずっと行ってない。小学生の時は、給食だけ食べに行ってたとか。実は、きょうだい4人とも不登校なんです。ご両親は小さい頃に離婚。お母さんが子どもたちを養い育てていましたが、病気で突然亡くなってしまう。残されたきょうだいと自分が生きて行くために、彼は働く決心をしたわけです。
それまで社会と分断されてきているから、とても仕事ができる状態でない。はじめは文字も、ちゃんと知らない。例えば「入」という漢字を、妙に角ばって書くなと思ったら、パソコン画面の文字の形をそのままに覚えていた。当然、コミュニケーションも苦手。
でも1年間も職場でもまれていると、「人間」らしくなってきまして(笑)。人って変わりますね。その間、いろいろ話を聞いてきたんですが、ある日、「あなたは、ずっとここで働くわけにはいかないんだから、将来どうするの?」と尋ねました。彼は、「高校の卒業資格が欲しい」と。それで「こども支援センターげんき」の所長さんに相談すると、「いきなり高校は無理。まず夜間の中学で、義務教育課程を習得すれば」とアドバイスを受けました。彼にその話を伝え、卒業した中学の先生にも連絡。母校の中学校に1年間通うことに。その後、高校の定時制を受験して合格。今、3年生です。成績もトップクラスで、生徒会長もやってます。
また、今、不登校している子に、会として聞き取りをしたことがあります。ある子は、「学校に行かないことで困ってることは、なにもない」と断言。「どんな学校だったらよいか?」と聞くと、「自分のやりたいことが、義務教育の段階で選択できればよい」と答えます。また、「国語と、簡単な計算だけは、勉強した方がいい」とも。その基礎学力があれば、必要なことはすべて自分で学べるとわけです。大人が先回りして心配することはなにもない。
「休みたいなら、休ませれば」と親御さんにアドバイス
そんな子たちをまじかで見てるから、不登校であっても、「まっ、大丈夫かな」と。「勉強が遅れる!」とお母さんが不登校のわが子を心配しても、「まだ小学生(中学生)でしょっ!」と思うわけです。本人が本気を出したとき、義務教育の9年間なんて、あっという間に取り戻せる。ましてや、この人生100年時代の中の一期間です。その間、学校に行かなくたって、後年、社会人として自立できればいい。
「虹色応援プロジェクト」では、「親の悩みを語り合う交流会」を行ってます。実際の相談は、交流会でより、私個人の電話に直接がかかってくることが多いですね。学校の行き渋りが始まったとき、「休ませていいのか?」とよく聞かれます。私はたいてい「休ませれば~」って。しばらくしていると、結構子どもは飽きてきちゃうんですよね。休んでいても、することがないじゃないですか。最初はゲームに没頭するんですけど、やがて何か違うことをしたくなる。それで、学校に行きたくなるかもしれない。
その子がずっと不登校をずっと続けるとする。私たちは、学校に戻すことをゴールとしないので、保護者と子どもがどう接していくか、寄り添って考えていくことに。
「発達障害」とは、大人側が貼るレッテル
子どもが本来伸ばすべき能力を、発達させない社会になっている。これは、子育てしている私の実感です。
例えば、「エジソンの箸」という補助器具。親指、人差し指、中指を通すリングがある。長男が2歳のときに使わせたのですが、成長後、かえって本当のお箸が握れないように。下の次男、長女は、最初からお箸を使わせたので問題ない。だから、長男には、余計な作業を1個はさんでしまったわけです。一方で、危険な道具、遊具が、どんどん排除されて、そのことでも子どもから発達する機会を奪っている。
最近よく言われる「発達障害」は、「定型発達」に対しての「非定型発達」を指します。「非定型発達」は、「自閉症」や「ADHD」などにくくられますが、それ自体は「障害」ではない。その特性ゆえに、社会がその子に「被害」を与えることが問題なんです。子どもは「障害者」なのではない。むしろ社会が「障害物」になっている。
「発達障害」というのは、本来、存在しないと、私は考えます。「発達障害」と呼ばれるような症状はありますよ。でも、それには必ず何らかの原因がある。だから、その原因を少しでも取り除き、発達を促してあげれば、そのでこぼこが丸くなり、能力を伸ばせるはず。「この子は『発達障害』という障害者です。一生治りません」という目でその子を見てしまうと、もうここまでじゃないですか。私は、そういう見方はしたくない。
学校では、チェックシートで、発達障害を判定します。生徒1人ずつに行うのですが、それは先生の主観で行うもの。どんな子も、いろんな特性を合わせ持ってて、そのうちどれかバランスが悪いところに、症状名をつけてるだけなんです。私にしたって、「ADHD」と判定されるでしょう。いつも話がポンポン飛ぶから、そういうタイプじゃない人としゃべれば、「訳が分からない」とよく言われますから(笑)。
家の外に居場所を求める思春期の子たちに「子ども食堂」を
「あるこいりす」では、子どもの「居場所」づくりに力を入れています。まだ拠点がないので、一般社団法人「チョイふる」さん(vol.23、栗野泰成さん、にて詳述)の施設をお借りして、いろんな活動を展開中。ここは、住宅を改修した2階建てなので、普通の家のようにくつろげます。だけど、男の子たちはとにかく活発で、エネルギーが有り余ってる。家の中でずっと過ごすのは、無理なんです。本当は、倉庫みたいなところで、柱からロープをぶら下げて、もう自由に遊べるような場所をつくってあげたい。
月1回、子ども食堂も開催。まだなかなかマンパワーがそろわず、夜ごはんだけ。そのうちに、不登校の子たちに、昼ごはんも出したいなと。食事はいつもお母さんたちがつくるのですが、子どもたちにすれば、よその家庭の味体験できる。カレーにしてもこんなに違うのかと。
今、お兄ちゃんの友だちも来てくれて、中学生の子たちが多いかな。この年ごろになると、親と距離ができる。だから、家の外に居場所を求めます。ここでは、男の子たちは食後、かたまってゲームやってます。飽きてくると、「公園に行ってくる」と。やはり体を動かしたいんですよね。女の子たちの集まりも、楽しそうにしてます。小学生でも、メイクの話なんかしたり。
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