「児童福祉司」で「里親」だから、見えること

児童施設
里親・白田さんの提案受け、里親休暇を整備した江戸川区

昨年度、開設1年目にして、あっという間に、一時保護の枠がいっぱいになりました。「こんな定数では、とても足りない」ということに。かといって、一時保護所からの先の施設も満員で、子どもたちの行先がない。だから、「里親を増やさなければ」という話になる。そこで、江戸川区は、里親をしている私の意見を聞いてくれたんです。

 

里親をやっていて大変なのは、看護休暇しかとれないこと。実子であれば、育休をとったり、時短勤務にできたりするのに。研修に行く際にも休暇がとれるなどの手当が必要なことなどを進言すると、「そりゃそうだよね」と、もう一生懸命聞いてくれて。なんと今年度、里親に向けての休暇制度ができたんです! 他の自治体なら何年もかかるでしょう。育休もとれる時短勤務、看護休暇はもちろん育児参画休暇、深夜勤務の制限、時間外勤務の免除などが導入されて。私、嬉しくて、スマホに、制度の文面を写真に収めているんです(笑)。今後、里親会の活動に参加するときは、ボランティア休暇をとれるようにしよういう話も出ています。さらに、「ショートステイ里親」のような新たな事業をどんどん立ち上げています。

こうした制度づくりで、里親の敷居が少し下がるんじゃないかと。

 

里親を増やすためにどうしたらいいか。やっぱり、江戸川区の職員が自ら里親をやるぐらいの勢いにならないとダメじゃないかと思います。「江戸川区の子は、江戸川区で守ります」と言っているわけだし。「どなたか、お願いします」なんて人任せに言ったって、誰も耳をかしてくれないでしょう。

 

里親の揺れる思いを、児童相談所へ伝える代弁者として

私は、児童福祉司にして里親なので、両方の立場でものを見ることができます。「千葉市ひまわり会(里親会)」会長もしていますので、いろんな児童相談所の里親担当者とも話す機会があり、「こんなこと、知らないんだぁ」と思うところが、いっぱいあって。例えば、里親にとって、児童相談所イコール執行機関だから、「下手なことを言うと、子どもを取り上げられるのでは」という不信感が働き、なかなか相談できないという心理が働くことなど。

一方で、里親のメンバーたちが、「児童相談所になんか、なにも期待してない」と言うので、びっくり。「子どもが、発達障害なのかもしれない」と悩んで、相談にしに行ったけど、なにも解決しない。「心理カウンセリングの予約が取れるのは来月」というので、民間のカウンセリングを自力で探したという人もいました。

 

また、里親に対しても、児童相談所という組織について、説明することができます。「なぜ里親に預けた子どもを、また施設に入れなければいけないのか」といった切実な疑問に対して、児童相談所側の、やむにやまれぬ事情を話すことも。里親と児童相談所の間の、それぞれの代弁者、架け橋になれればなと思います。

 

施設職員の経験者が里親になって、新米里親を支える案

もともと親権を持てる養子縁組をしたかったけど、50歳の年齢のラインがあって、里親になった方もおられます。いまはその年齢枠は、撤廃されましたが。もともと養子縁組志向だったけど、もっと広い視野で見て、社会手的養護としてうちも子どもを預かろうじゃないかとシフトチャンジしていく人もいると思うんですね。

「専門里親」といって、普通の里親として経験を積んで、さらに座学や実習を重ねて、認定を受けるものがあります。虐待を受けた子や重い障害のある子、非行歴のある子が受けられる。しかし、今、普通の里親が、そういう子も受けているので、専門里親を目指す人は少ないです。

 

だからこそ、私のように児童相談所や、あるいは児童養護施設や自立支援施設で働いていた人が、もっと里親になってくれるといいなぁと思います。里親会に、そういう経験豊富な里親さんが入ってもらえば、新米の里親さんの相談を受けることもできますし。里親同士がレスパイト(息抜き)で、子どもを預け合うこともいいでしょう。「一泊だけ、あそこのおばちゃんちに、行ってきなよ」と。なんかやらかしたから、「一時保護所にお泊りしてきなさい」と言われるより、里親会の活動で知っているあそこのうちにお泊りする、というのはペナルティにならない。また、子どもがいろんな家を知る機会にもなります。

 

里親って、もう本当に自分の生活を犠牲にして、子どものために尽くす一部の奇特な人がやるものだと認知されるのは、よくないと思うんですよね。もっと気軽で、楽しくするものかなと。それには、草の根レベルのサポート体制もつくっていかないと。

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