「全力子ども」のエネルギーが爆発する舞台

アート

ルポvol.36 【アート2】

原因は、セイラが胸に抱いていた日記帳だった。そこにつづられてた、14歳の少女のモヤモヤが、異世界に禍いをもたらしてしまう…。

 

2022年9月24日、ギャラクシティ・西新井文化ホールで上演された『異世界ア・ラ・モード』の物語は、大入満員の観客を魅了。演じたのは、足立区を拠点に活動する「キッズパフォーマンス集団ほしかぜ」の5歳から12歳までの総勢37人(ゲスト出演&卒業生含む)だ。日常では幼稚園や小学校に通う普通の子どもたちが、アイドルや童話のキャラクターなどに変身し、舞台を自在に飛び回った。魔法をかけたのは、プロによる照明と音楽、衣装だけではない。代表理事・KAEDEさんの熱量ある脚本・演出だ。子どもたち一人ひとりの魅力を強烈に輝かせている。「子どもの劇」の枠を超えた、圧巻の「パフォーマンス芸術」だった。

 

「異世界」の中で、「自分」をさらす子どもたち

舞台全体が、「子どもの居場所って?」と、問いかけてくる。

 

セイラが、のんのんばぁに誘われて踏み入れた異世界は、女王メデューサの王国。彼女は孤独から、現実世界より、話し相手としてセイラを呼び入れた。2人とも自分の世界に「居場所」がない。やはり日々辛い思いを抱くセイラが、日記帳(自身の内面)を見せると、冷徹なメデューサは打ち解けて笑う。ここはそもそも理想郷ではない。いじめも諍いもある。現実世界を裏返したファンタジー圏なのだ。突如、セイラの思春期の混乱した気持ち(厨二病)が、異世界全体に反応して、カオス状態をもたらす。彼女は、この危機をどう乗り切るか。王国にとらわれた幼なじみのカズマと、現実世界へ帰れるのか…。それは、観てのお楽しみ(DVD販売は、2023年秋より)

 

「異世界」とは、子どもが、自身のありのままをさらけ出して、さまざま試練に立ち向かい成長する時空なのではと、ふと思う。そして、「異世界」を懸命にみんなでつくり上げる「ほしかぜ」こそ、ここに集う子どもたちの本物の「居場所」であるとも。

 

クラファン、3回目の公演と、「ほしがぜ」の大躍進に立ち会う

KAEDEさんのインタビューは、公演直前に行った。

 

経緯をいえば、9月3日に開催された、西新井文化ホールで開催された『未来へつながる実験室』(「あだち子ども支援ネット」主催)にて、「ほしかぜ」のパフォーマンスを観て関心を抱いたのが発端だった。KAEDEさんのプロフィールや会のコンセプトを調べると「ぜひ、お会いしたい!」と思い立ち、N-styleの野際里枝さん(vol.31)に紹介を依頼。アポを取るまでに、公演運営のためのクラウドファンディングを実施中(9月30日までに目標100万円達成)で、公演予定が9月であることを知り驚く。意図せず、「ほしかぜ」が大躍進をしようというタイミングに遭遇することとなった。

 

あいにく公演日は日程が合わず、動画にて観劇。素晴らしい映像作品の作成者は、伊勢出版を経営する伊勢新九朗さんである。以前、別の会合で名刺を交わした人だった。その人がKAEDEさんのパートナーで、「ほしかぜ」の動画を次々つくり出す人であることを知り、また「えっ!?」となる。

 

YouTube配信『異世界ア・ラ・モード』の見所

KAEDEさんよりうかがったその歩みは波乱万丈で、「ほしかぜ」の成り立ちや、コンセプトがことのほかユニークだった。作品は、そのときのメンバーである子どもと共に創作されるという。一作一作が入魂のオリジナルなのだ。また、KAEDEさんと伊勢さんとの関係性が面白い。

 

『異世界ア・ラ・モード』は、ぜひ多くの人に観てほしい。見所の一つは、「セイラの魔法」。その意味は、改めて考えると深い。さらに「メデューサに、KAEDEさんの面影あり」という私の見立ても添えてみる。本文を読んでからご覧になると、いっそう興味が増すはず。

 

 

  • 『異世界ア・ラ・モード』は、2023年秋よりDVDとして販売予定。(値段、発売日は、 ほしかぜ公式HPまたはTwitterにてお知らせするとのこと)。

※できれば、観劇前に、以下の、KAEDEさん×伊勢さんによる『本番直前トークライブ』を観れば、さらに楽しくなる。特にKAEDEさんによる出演者の子ども1人1人への愛情込めた紹介が聞きどころ。https://youtu.be/xrRqdgEI-a8

 

(KAEDEさんへのインタビューは、2022年9月22日、子育てカフェeatocoにて行いました)

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