「全力子ども」のエネルギーが爆発する舞台

アート
2人娘と夫の全面サポートで、「ほしかぜ」発足

2018年に、「足立区キッズパフォーマンス集団ほしかぜ」は発足しました。あのとき小学3年だった長女が、もう中学1年のお姉ちゃんになっちゃいました。次女は当時1年で、現在小学5年、今回もステージネーム「チョメ」として舞台に立ちます。今でも覚えていますが、発足前、「ほしかぜ」の構想を、梅島のデニーズで2人の娘に初めて話したとき、「いいじゃん、いいじゃん、やろうよ!」と言ってくれ、盛り上がって。

 

伊勢さんは、元々自身が提案していたことなので、「待ってましたっ!」とばかり。現在、「ほしかぜ」のプロモーション動画を作成しては発信してくれています。動画を始めたのは、発足から2年後、コロナになってから。出版業界の人間ですが、映画学校卒なので、映画の熱が出てきたのかな。

 

ちょっと余談なんですけど、私と伊勢さん夫婦は、たぶん向き合っているとダメになるタイプなんです。だいたいカップルは、向き合って「好き」になる。でも私たちの場合は「沈没」する。それをしてしまったから離婚したのかな…。「同じ前を向き、一緒にハンドルを持って、一つの目標を目指していた方がうまくんだね」って話してます。

 

子どもたち自身が、第1作『竹取物語』の演目を決める

一番最初は、かぐや姫が登場しない『かぐや姫』をやりました。原作の『竹取物語』を、面白く書き変えたものです。演目は、そのとき入団した小学1年から4年生の子どもたちが、みんなで決めました。私はノータッチです。当初から、自分がやりたいことを押し付けるつもりは、まったくなくて。

 

子どもに対しては、一緒にものをつくる「仲間」だと。何か意見がありそうなら、「なになに、どうしたの? ちゃんと言いなよ」とうながします。普通の大人に対するようにしゃべる。もちろん可愛いですけど、なんだろ…子どもとしてより、役者さんとしての可愛さを感じるというか。

 

…『かぐや姫』ですが、かぐや姫を誰がやるかで、めっちゃもめたんです。配役も子どもたちにやらせていますから。まとならないので、私がいったん持ち帰って考えた末、「なら、出さなきゃいいじゃん」という結論に。原作を読んだり、参考文献を読み漁ったりするうち、かぐや姫は本当にいたのかなと。物語の作者も、存在する設定で書いたのかもどうかも分からない。むしろ、かぐや姫は、「象徴」として読んだ方がしっくりくる。だから出さなかったんです。

 

主題歌の歌詞は、「書きたい!」と言う当時4年生の子に任せると、びっくりする歌詞が仕上がってきました。大人が書いたようで、「なにこの語彙力!」と。『竹取物語』は、YouTubeで半分公開していますので、ぜひご覧いただければと。

(ほしかぜ旗揚げ公演『竹取物語』  https://youtu.be/ag3oJ-L83mI )

 

懐メロ音楽劇『ツッパリ』、卒業公演『銀河鉄道の夜』を世に出す

2021年に公演した2作目の『ゴーゴー!!ツッパリ★トラベラー』は、当時流行っていたテレビドラマ『今日から俺は!!』(原作は漫画)に触発された作品。「あれやりたい!」という子が多くて、「足立区だし、ツッパリいいじゃん。昔どんなだったか、お父さんかお母さんに聞けば分わかるよ」と採用。80年代の懐メロを散りばめた、音楽劇でコメディです。

(ほしかぜ第2回本公演『ゴーゴー!!ツッパリ★トラベラー』

https://youtu.be/yzs1JvT3tYI )

 

また、宮沢賢治の作品を元にした小品2本をオンラインで配信しました。ひとつは、特別ミニ公演の『ぼくのサーカス物語』。『オツベルと象』より着想を得たパフォーマンス劇です。もう一つは、3月に卒業した6年生の卒業公演で『銀河鉄道の夜』。深い物語をかみ砕いて、賢治の心の中を描いたもので、卒業生への思いを込めました。『銀河鉄道』では、公演前に、みんなで原作を読む読書会をやったり、DVDのアニメ作品を見てディスカッションしたり。読み解きながら、つくっていったんですね。そういう時間ってすごい学びになるし、子どもたちが文学に興味を持つきっかけになればいいかなと。

(特別ミニ公演『ぼくのサーカス物語』

特別ミニ公演「ぼくのサーカス物語」【ほしかぜライブ配信】
⭐️キッズパフォーマンス集団ほしかぜ⭐️特別企画ミニ公演「ぼくのサーカス物語」作・演出 KAEDE出演 ほしかぜキッズ柔軟パフォーマンス指導 NoN✳︎2021.10.10 (日)11:10〜 ※上演時間15分程度2019年に足立区内のイベント会場で初披露した「ぼくのサーカス物語」というショートストーリーの演目を...

 

第一期生卒業公演『贋作 銀河鉄道の夜』

https://youtu.be/HlNhA27iWPE )

 

 

『異世界ア・ラ・モード』に垣間見る、KAEDE流の舞台づくり

今回の『異世界ア・ラ・モード』ですが、テーマを決めるのに一番時間がかかりました。最初は、女子から「アイドルものがやりたい!」と強い要望が出るものの、男子は「絶対嫌! SFがいい」、低学年はお姫様が出てくる「ファンタジーを」と、3つに割れたんです。結局、最後の公演となる6年生の希望を優先し、「異世界」に落ち着きました。マンガ、アニメ、ゲームでは流行っていて、広く人気がありましたし。それに「異世界」にすれば、「SF」も「ファンタジー」も押し込められる。

 

その上で私は、「いろんな童話の登場人物を出したら面白くない?」と提案。お姫さまも出せるし、アイドルをメインにせずアイドルグープもつくれる。「オレがアイドルやんないなら、いいや」と、男子たちも納得。それでだんだん決着がついてきて。

 

キャラクターの元ネタは、私が持ってきました。諸星大二郎先生(足立区出身!)のマンガ、『長靴を履いたネコ』『ピーターパン』などの童話、『ハーメルンの笛吹き』、ポーの詩の『大烏』など、いろいろです。そこからキャラクターを引用し、配役を決めて行きました。各々の子どもたちがやりたいこと、とっ散らかった要望を集約して一つの筋をつくり、すべてを収めるのが、私の仕事です。

 

今回は、シナリオを5回書き直しました。1回では、絶対終わらない。まず初稿を子どもたちに渡し、その反応を見る。配役をもらったときの表情もしっかり見ていて、「あんまり嬉しそうじゃねぇぞ」とか。読み合わせをして、私も「この子のイメージと違うかな」と確かめていく。そして細かい微調整をかけながら、公演の2か月ぐらい前まで書き直しを重ねる。それでも、各々の子に渡していない台本もたくさんある。さらに部分的にワークショップをやらせて改めて取り入れたり、ボツにしたり…。

 

舞台で「自分」を輝かせることで、自己肯定感を高める

私は、演出という「お料理」によって、その子だけが持つ魅力を引き出し、素晴らしいパフォーマンスに変えていく。でも自分の魅力って、子どもたち自身は気づいていないことが多い。それを気付かせてあげると、自信を持って舞台に立てるんですよね。

 

新体操を習っていて、大会に出たともなれば「得意なことです」と胸をはれる。しかし、一般的に多くの子どもたちは、自信を持って「得意です」と言えるものがない。そういう子たちは、「舞台に上がっちゃいけない」と思ってるんですよ。「私、何もできないし」って、よく言うんです。そんなことないんですよ。誰でも舞台に上がっていいし、上がったら輝ける何かが絶対あるから。

 

舞台のいいところは、なりたいものに何でもなれること。行きたいところにも行ける。そこは自由なわけじゃないですか。自分も本当になりたい姿に思いっきりなれて、拍手をもらえる。すると、「ものすごく肯定されてる」って感じる。

 

(ちゅんちゃん、部屋の隅にあった太鼓に興味しんしん。KAEDEさん、「あっ、なんかいいものあるじゃん、トントンしてみな」)

 

みんな、私を「先生」だとは思っていません。実際に先生ではないから、何でも言える。でも、子どもたちの言うことを全部受け入れるわけではない。「そうだね、そうだね、はいはい」と聞いていたら、とんでもなく秩序のないものができてしまいますから。「なんで、そう思ったの?」「でも、こっちの方がいいんじゃない」など話し合いながら、私も向こうも納得したら「そうしよう」と。私が判断つかないときもあります。そういうときはみんなに見てもらう、「どっちが、いいと思う?」って。

 

この話し合いが、超楽しい。5歳の子も「こうしたい」と言ってくる。でも、自分では意図してなくても、自然にやったことが意外に傑作で。「今の面白かったから、それ取れ入れてくんない?」って、お願いしたりとか(笑)。本当に、みんなでつくっていく。

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