どんな境遇の子も、健やかに育つ社会に

居場所
母になって実感する「子ども主体」の難しさ

自分で子どもを産んで母親になってみると、ある感情体験をして、とまどいました。子どもが言うことを聞いてくれないと、イライラするわけです。保育士として学んできたことからしても、大人の都合で子どもをコントロールしようとする自分に、もうすごく腹が立つというか。理想と違ったんです。思い描いていたのは、子ども主体で、子どもの意見に寄り添う「穏やかなお母さん」だっだ。「もっとうまく子どもと接するには、どうしたらいいんだろう」と、改めて悩みます。

 

そこで、通信教育で「チャイルドコーチング」のアドバイザーの資格を取得することに。学んだことを実践するうち、いろんな気づきがありました。

 

子どもには違う意志がある。イライラするのは、自分の意見が通らなかったから。それって自分の問題で、子どもに問題はないなと。じゃあ、自分の考え方を変えればいい。そう意識的に内省を重ねていくと、イライラはなくなりました。「今、この子は、これがしたいんだな」と、そのまま受け止められるように。ただ、本当に危ないこと、人に何か危害を与えるようなことをしたときは、厳しく怒らないといけない。そういうときこそ、わざと恐く怒ります。

 

ママたちに「教える」という、「おこがましさ」に気づく

一時期、山本亜紀子さんが代表を務めている「コミュニティkoen」の運営メンバーにかかわりました。地域のママと子どもの居場所づくりの活動です。資格と経験を生かして「チャイルドコーチング講座」の講師も務めました。

 

当初は、泣いている子どもに、「知らない」と突っぱねるお母さんがいたら、「一度、抱っこすれば泣き止みますよ」などとアドバイスしていました。でも、2年続けてみて、お母さんに何かを「教える」ということが、「何かおこがましいな」と感じてしまって。人それぞれでいいんじゃないかと。子ども一人ひとり人違うわけだから、何か一つの体系みたいなものには、はまりきらない。自分が何かを「教える」と、お母さんも子どもに何か「教える」ようになってしまう。そうではなく、自分がお母さんに「寄り添う」ことで、お母さんも子どもに「寄り添える」ようになるんじゃないかと。

 

不登校児に、やりたいことをして過ごす「楽しい学校」を

「こそだて図書館」の施設長をやる前の1年間、「cotocaの楽校」の代表も務めていました。やはり、ママとお子さんの居場所づくりです。「こそだてシェアハウスcotoca」の元オーナーの改田友子さんや、そこに集まるママたちと話していて、「今の小学校は、一人ひとりの子どもに寄り添ってくれない。ならば、自分たちで『楽校(楽しい学校)』をつくってしまおう」と立ち上げました。みんなでゲームをしたり、何かモノをつくったり、自分たちのやりたいように1日過ごせる場にしました。子どもを真ん中、中心に置くという考えで。

 

ここには、不登校の子どもたちが多く集まります。今の不登校の理由は、いじめなどの直接的な原因だけではありません。「学校が自分の肌に合わないから、行きたくない」という子も、結構増えてきた。メンタルは元気なんだけど、行きたくないと。コロナ禍で、その傾向はより強まっているようです。マスクを強制され、トイレにまで先生が、子ども同士しゃべらないよう見張ってついてくる。学校が、子どもたちにとって、息苦しい場所に。

 

お母さんが集まると、「今日、学校で、子どもがこういう風に注意された」という話題がよく出ます。「柄の筆箱を持ってきてはいけない」など小さなルールが多い。本当の学びの場になっているのか心配してしまう。

 

私自身、学校のテストに疑問を感じています。ただ覚えたことを採点し、評価される。しかも100点から減点されるので、満点を取らない限りバツ印がつく。それに子どもは傷つくわけです。さらに学校から「宿題の丸つけを、親がしてください」と依頼されるが腹立たしくて(笑)。せっかく頑張ってやったところを、「ここが間違っている」と親からと言われるのは、子どもからすれば、とても嫌なことだろうなと。

 

「楽校」を1年で辞めたのは、場所が北千住で自宅から遠く、自分の子どもを連れて行けないからです。私の活動で寂しい思いをさせるのは、本末転倒ですし。

 

 

「チョイふる」に参加し、家庭の中に働きかける支援に

「チョイふる」は、友人を通じて紹介してもらいました。最初は、「わくわく便」のボランティアからかかわることに。

 

朝、出発前に、20分ほどのミーティングを行います。その際、「食品を届けるだけでなく、玄関のドアを開けてもらうのが目的。その先、各家庭を見守ることに意味がある」という話をしていて、すごくいいなと。家の中に入って、直接ご家庭に働きかけるというのは、自分がやりたかったことですから。

 

実際に行ってみると、玄関から散らかって、足の踏み場がない家がある。かたや、立派でキレイな邸宅も。部屋のキレイさと心の余裕は連動していると感じています。しかし、キレイさが「完璧主義」につながり、子どもにとって厳しい家庭であるかもしれない。また、一度訪れただけでは、何も分からない。お母さんの雰囲気もよく、玄関が片付いていても、次に行ったら乱れていることもある。息の長い、継続的な訪問が大切なんです。

 

ケース会議で、心に届く支援の形を模索

月に1回、「ケース会議」を行います。ちょっと気になる家庭、子どもについて、スタッフで話し合うもの。専門家の方と相談し、そのつなぎ先を検討したり、自分たちでできる「ネクストアクション」を一緒に考えたりもします。

 

冷蔵庫がないご家庭がありました。アウトドア用のクーラーボックスで代用している。どんな対応をするか、いろんな意見が交わされました。冷蔵庫を寄付することは、すぐにできます。しかし、電気代を支払えず、かえって困らせてしまうのではないかと。そこで、お母さんに、冷蔵庫の寄付と電気代のことを、直接尋ねてみる案が出たんです。その前に、散らかったお部屋を片付ける無料掃除サービスをお勧めしたら、「汚すぎて、人に見せるのも恥ずかしい」と断られ、冷蔵庫のことは言い出せず。「わくわく便」でかかわりは持てたけど、その先の支援に、なかなか行けない歯がゆさがある。

 

一方で、食品を届けられていない人たちがいる。他の団体さんと連携し、「お家の近くに、こういう団体さんがいますよ」と、つないでもらうことも必要です。自分たちだけでは、前に進めません。

 

私自身、「居場所づくり」の活動をいろいろ経験しましたが、1つの場所で何かやっても、ダメだなと思うように。小さいことしかできないからです。平たく言えば、もっと大きなことがしたい。「チョイふる」、「こそだて図書館」では、それができる。ここでの活動で、いろんな団体、いろんな人たちとつながり、みんなで協力して広い範囲で、たくさんの子どもたちに貢献できればいいなと思います。

 

子どもたちが、自分を成長させてくれる

家族は、私の活動を応援してくれてます。土曜日は、終日家を空けますが、その日は夫がフォロー。「チョイふる」のメンバーの方にもサポートしていただいてます。息子がミニバスケットをやっているんですが、試合の遠征についていくとき、スタッフのみなさんが仕事を受け持ってくださって。両方にお世話になっています。

 

自分の子どもに対して、「してあげてる」っていう感覚は、あまりありません。反対に、どれだけ臨機応変にできるのか、日々、常に試されているようで。例えば、夜遅くに、「何かが欲しい」と求めて譲らないとか。「こそだて図書館」に来る子たちも同じです。スタッフが少ないのに「公園に行きたい」と言い出したり。無理難題を、大人としては応じたくない。そこで、どういう対応をするのがベターなのか、考えさせられる。「全部ダメ!」と切り捨てることは絶対しない。「なぜ、そうなのか」を聞いて、「なるほど」と思えれば、こっちもちょっと妥協して「ここまでならできるかな」と提案してみる。向こうもだんだん柔軟になって、「じゃあ、それでいいよ」みたいな。子どもたちが、私を成長させてくれてます(笑)。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

<問合せ>

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〒121-0807 東京都足立区伊興本町2-8-11

ホームページ(一般社団法人「チョイふる」)

一般社団法人チョイふる
一般社団法人チョイふるは、「生まれ育った環境によって子どもの将来が左右されることのない社会」を実現するため、3つの事業を実施しています。 ‍ 

mail:info-npo @choice-ful.org

 

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