ママたち癒す「子育て」カフェ

居場所

メンバーの想いが空中分解するも、「カフェ」開設へ

 

ここ関原商店街の近くに夫が住んでいたので、結婚する前、ときどき遊びにきては「いいとこだなぁ」と、気になっていました。レトロな店が並び、歩きやすいヒューマンスケールが好きなんです。私は、長野生まれで郊外育ちだったので、こうした風景は見たことがない。素敵な商店街のシャッターが、ずっと閉まりっぱなしなのは「もったいない」と思ってしまう。「まちづくり」というテーマが自分の中に、ずっとある。

 

今の「子育てカフェeatoco」の建物は、親戚の持ち物で、土間部分はもともと倉庫でしたが、マルシェの際、一画を物置に使わせてもらっていました。関原商店街沿いに佇むいい雰囲気の建物なんですが、間取りが狭いので「カフェは無理ね」と、みんなで話していました。

 

そのうち、倉庫が引き払われることになったので、その部分を私が使わせてほしいとお願いしました。やはり間取りが狭いし、使えるのは土間部分だけだったため、メンバーは驚きましたが、「とりあえず、私は、ここで何かやりたい」と。

 

一方で、活動が2年目にはいろうかというときに、どんなカフェをやるか、メンバー内で、イメージが統一できずにいました。ある人は、「食に特化し、お惣菜をテイクアウトして、地域のお母さんを助けたい」と言えば、また別の人は「いやそこまで飲食はやりたくない」と反対。この頃、商店街の向こうにある物件に空きが出て、家賃も手頃だったので、「ここでカフェをやろうか?」と議題に上ったのですが、保証人を立てたり、月々の家賃、光熱費が必要になる。では「融資をしよう」となっても、借金の元となり、子育て中で家計も大変なのに…と、結局意見がまとまらず、空中分解してしまいます。それが2016年。

 

この頃、メンバーを集めて「とにかく、カフェをやるから」「物件探しも、資金づくりも、私一人でやってみる。それでカフェができて、またみんな一緒にやってくれる気持ちがあったら合流してほしい」という趣旨のことを話しました。その頃には、みんなも、各々やりたいことを見つけていました。皆それぞれの道を歩み出していたので、ここで解散としました。

 

そこで、しばらく私一人で物々交換のお店をやっていました。そのうち、家主が引っ越すことになり、建物全体を使わせてもらえることに。「自由に使っていいよ」ということだったので、いよいよカフェ改装が現実味を帯びてきました。ここは間取りは狭いものの、狭いからこそ改装費も運営費も抑えられるし、一人で切り盛りするにはちょうどいい大きさだと思いました。

 

2020年3月にリニューアル工事に入るつもりでしたが、コロナ禍で延期に。ようやく6月に開始し、8月末、遅れていた電気工事が完了し、やっと完成。構造材をあらわにし、くつろげる「木の家」にしました。

 

 

子育てママを、地域に開かれたカフェで、甘やかしたい

開店して以来、「子育てカフェ」ということに、ずっとこだわり続けています。初めて小さい子を連れて来て、カフェデビューしようという方は、もちろん大歓迎。しかし、ママ友だけの「親子カフェ」には、絶対したくないんです。私自身、ママ友の集まりが、すごく苦手でした。子どもや旦那さんの話題しかない。だから、話すことがない。ここでは、子どもを介する存在ではなく、「あなた自身の話をしてほしいな」と考えています。

 

そして、いろんな人が出会う場所にしたい。子育ての終わったおじいちゃん、おばあちゃんであったり、子育てもまだ、結婚もまだ、付き合っている人もいない若者、ちょっと怪しいなという人も含めて、イイトコには地域のいろいろな人が来ます。自分とは違った異質な人との接点を、子育て中のママに持ってほしいんです。お隣の子育てに出会うかもしれない。誰かが、お子さんと仲良くなるかもしれない。みんなが無縁じゃない「子育ての場」になれば、とてもいい。

 

時折、昔に子育てしたお母さんが、今の子育てママに厳しいなと感じています。自分だって大変な思いをして苦しかったはずなのに、「これができていない」「こうすべき」と責めてしまう。そんな冷たい言葉に、傷ついたという声をよく聞きますし、私自身も傷ついた一人です。ここでは、子育てママを甘やかしたいんですね。「いいんだよ~、今のままでいいんだよ~」と。批判はしない。「みんな、いろんな事情があるんだな」という想像力を持って、とにかく優しくしたいんです。

 

添加物なしの国産の体に良い食材で、メニューつくる

カフェで提供する食材は、食べる人や環境のことを考え、丁寧につくられたものを選んでいます。「添加物を使わない」「国産のものを使う」「生産者を大事にする」という生活クラブさんのポリシーに共感して、それを実践。メニューは自分で考案しています。インスタ映えを狙うというより、もっとラフな、ざくっとしたクッキーやワッフルとか、焼きっぱなしのケーキとか、シンプルなものにしています。「ごく普通の街のカフェ」が理想です。あとは、ソフトクリームに頑張ってもらって…。美味しいものを食べて、ほっと息をつき、毎日がんばる親御さんを勇気づけたいと思っています。おかげさまで、「すごく美味しかった」と言ってもらえることがありますが、素材がいいからでしょう。実は、飲食の経験はゼロなんです。それでも、なんとかなる。

 

リニューアル工事中、ご近所のおばさんに「ここお店になるの?」と尋ねられ、「カフェにするんです」と答えると、「ええ? あんたがやるの?」と半信半疑。それで思わずカチンときて、「ええ、やるんですよ!」と力んで言ってしまいました。「できるかできないかじやなくて、やるかやらないか」が、私の座右の銘ですから。

 

他と比べたことはありませんが、足立区は、私にとって、子育てしやすいところです。同じ志向を持つ仲間も見つけやすかった。布おむつ、木のおもちゃなど、少数派だけど自然派の人がいましたから。自分から何か探せば、見つかる街なんじゃないかなと。西の方の街みたいに、完成されていないところがいい。私のような素人が、お店をやっていけるのも、街に「余白」があるからかもしれません。

 

とにかく続けて、何か面白いことをやりたい

このカフェが、子どもの職業体験の場になったら面白いかなと思いますね。ものくると同じように、まずは自分の子どもやその友だちから小さく始めたりして。「定休日に中学生カフェやらない?」と長女に持ちかけたりしています。彼女は「将来、パティシエになりたい」と言っていたんですよ。今は絵ばっかり描いてますけど。

 

せっかく店を構えたのだから、とにかく今は、お客様のためにも続けなければなと。それと、商店街を巻き込んでいきたいですね。2年前には仕入れ先のコーヒー豆屋さんやパン屋さんたちと「ナナシノ商店街」を結成しました。まずは思いの通じ合うお店と組んで街に変化を起こして、そのうち既存の商店街も動かしていけたらいいな、なんていう妄想も、実はありまして。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

 

 

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