ママたち癒す「子育て」カフェ

居場所

<インタビュー・阿部直子さん>

 

ノルマ優先の仕事に、違和感覚える

 

新卒で入ったのは、大手企業のPRなどを手がける会社でした。顧客に向けて、資産活用を案内する冊子の作成が最初の仕事です。編集したり、ときにはライティングしたり。

 

やがて、そこの会社を辞めた先輩に連れられて、小さな編集プロダクションに転職。出版社の依頼を受けて、ダイエット本や主婦向けの本などを手がけます。しかし、ノルマをこなし、とにかく印刷してお金にするというやり方に嫌気がさすというか。誰が読んでくれるか分からない本をつくるより、目の前にお客さんがいる、何か役に立っていると実感が持てる仕事がしたいなぁと。

 

第1子の長男が生まれて、産休、育休、時短をとりつつ勤めていました。第2子の長女を生むという産休に入ったとき、「このまま復帰したくない」という思いがつのり、会社と話し合いの上、退社しました。

 

 

NPOが運営する学童保育のスタッフに

 

今度は、自分でも意外な気がしたのですが、「子どもと接する仕事がしたい」と思い立ちます。そこでNPO法人ワーカーズコープが運営する学童クラブに応募。自分たちで出資し、トップダウンではなく、スタッフ各々が協力し合って現場を回していく姿勢に、すごく惹かれたんです。採用され、当時住んでいた場所から近い小学校で働くことに。

 

長男が小学校に上がるときでした。自分の子どもを別の学童保育に預け、私が別の学童保育でほか子たちを預かるということに違和感を覚え、やりたくないなぁ…と。いつも直観に従うものですから、辞めてしまうんです。2年間勤めました。

 

 

でも、ただただ、家庭には入りたくない(笑)。家で、子どもの面倒だけを見るなんて無理、という性格なので。出歩いているのが好きなんです。

 

給食調理士の職を得るも、続かず

 

今度は、「給食のおばさん」に応募。長男が小学校に行っている間に働け、帰ってくるころには家にいられるから、都合が良かったんです。第3子の次男を妊娠していましたが、「サポートに入ってもらえるなら」と、採用されました。

 

千住の小学校に勤めることになるのですが、たちまち足手まといになってしまう。みなさん、優秀なんです。材料の分量や配分、時間の段取り、力仕事などテキパキやる。チームワークができているところに、不慣れな私がポツンと入ってしまった。やれることは、お惣菜に火を通すこと、ドレッシングをつくることぐらい。妊娠していたので、重いものを持とうとすると、「あなたは、いいから」と気づかわれる。だんだんお腹が大きくなってきたので、会社や周りからも心配され、結局退社することに。本当に申し訳ない3カ月を過ごしました。

 

 

やりたいことは、「コミュニティカフェ」と気づく

 

次男が生まれたときは、長男は小学校、長女は幼稚園に通っていました。3人目だから肝も据わっていて、孫を育てるようなもの。手放しで可愛いし、子どもをどうこうしなきゃといった焦りもない。仕事もやってないし、とかくのんびりしていました。そのうち、ずっと胸に秘めていた「妄想」を形にしてみようと思い始めます。それは、親子が、ほっとできる場ができないかということです。自分自身、子育ての真っ最中のとき、居場所がなく、ずいぶんつらい思いをしましたから。小さい子を抱えて入れる店がなかったり、バスや電車の移動中では子どもがぐずったりしないかと肩身が狭かったり。

 

でもどうすればいいか、何から始めていいか分からない。そこで、ミクシィで知り合った友人のYさんに会いに行ったんです。芯がしっかりしていて、リーダーシップのある人で、当時「親子遊びの会」を開催していました。自然素材で遊ぶシュタイナー教育、布おむつの実践、土手での自然遊びなど、いろいろな企画に引っ張ってくれました。参加するうちに、「私がやりたいのは、どうもコミュニティカフェらしい」ということに気づいたんです。あるときYさんに、勇気を出して、そのことを言ってみると、「NPO活動支援センターに相談してみたら」と教えてくれました。

 

早速、同センターに行って話を聞くと、関連する団体を紹介されて、「これだぁ!」と。早速、団体の一員としてNPOフェスティバルに参加し、足立区庁舎ホールでコミュニティカフェを試しに開いたら、とても楽しかったんです。

 

準備期間は、マルシェ活動を通して、PRと人脈づくり

 

2014年、育児サークルの仲間やNPOの先輩など7人で、「子育てカフェ」という子育て支援の場をつくろうと、「イイトコ(eatoco)」を立ち上げました。まず、同年7月、メンバーの敷地にある駐車場のスペースを使って「イイトコマルシェ」を開催したんです。カフェを開くには、物件を探したり、市場調査したりが必要ですが、準備だけするのはつまらない。マルシェ(市場)をやれば、売り筋が分かり、自然と生産者とつながりもできる。商店街の活性化や、子育てカフェ準備室のアピールにもなり、まさに一石四鳥でした。

 

イイトコマルシェは、パン、無農薬のお惣菜、焼菓子、雑貨など販売し、回を重ねるほどに出展者さんが増え、メンバーの入れ替わりもありました。その人脈が、今の「子育てカフェeatoco」を支えてくださっています。

 

2016年2月まで毎月1回、関原商店街で行いました。同年11月、本木のさくら園芸さんを会場に開催して最終回に。

 

 

物々交換「ものくる」で、家族の垣根を取り払う

 

マルシェと並行して行っていた、モノとモノの交換会「ものくる」は、現在も続いています。お金を介さない物々交換です。人が買ったものでも、自分が買ったものでも、交換してシェアすれば無駄にならない。知恵も資源も、シェアして人に頼る。子育ても同じ。「家族の垣根も取っ払いたい」、そんな思いで始めました。

 

きっかけは、生活クラブ生協の機関紙の記事です。ラジオパーソナリティの方が書いた、自身が行った物々交換のレポートを読んで共感。とりあえず、知り合いを自宅に呼んで、やってみることに。しかし、事前にルールを決めておこうと考えると、いろいろ配慮しなければならないことが出て来て、嫌になってくる。いきづまって、またYさんに相談すると、「当日の成り行きで、まずやってみたら」と言われて、ふっきれたんです。実行してみれば、とても面白い体験となりました。参加した人の評判も上々だったんです。

 

「これはいいぞ」と手ごたえを感じ、今度は知らない人も巻き込みたいと、閉店した中華屋さんの軒先を借りて、路上で開催してみたんです。すると、近所のおばあさんが足を止めて、「これを孫に持って帰りたいから、また別のものを持ってくるね」と言ってくれるようなつながりができる。そんなことが嬉しくて、定期的に行うようになりました。

 

ルールは、回数を重ねるうち、3つに落ち着きました。1回の持ち込みは3点、持ち込み点数と同じ点数を持ち帰りOK、持ち込む物にはエピソードやメッセージを書きつけること。交換できるものとして、ベビー・キッズの衣類やおもちゃ、子育て中のパパママ用の衣類やアクセサリー、マタニティ、雑貨などをおススメしています(衣類は、新品に限定)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました