「つながり」育む、“がきんちょ”地域食堂

イベント
貧困家庭の「フードロス(食品不足)」は、
支援の形に問題あり

白いTシャツ姿の実習生2人が「お手伝いします」とおじぎする。社会福祉士の国家資格を取得するために母子支援施設で研修中だという。

「さぁ、娘たち、アスパラガスに豚肉を巻いてちょうだい」と、大山さん。

最初、彼女たちの手つきはたどたどしいが、作業に慣れるうちに口もほぐれて会話が始まる。「ある日、おばぁちゃんから、下宿先に、いきなりフライパンだけ送られて来たんです。『料理を覚えなさい』っていうことかも」と実習生の1人。調理の手を止めたBさんは「私は20歳で結婚したけど、母は一切料理を教えてくれなかった。家庭に入ってから旦那の舌に合ったものを作れるようになればいいって。あれから40年、主婦してます」と笑う。

 

足立区の職員であるSさんが、スーッと現れる。区内の子ども支援事業に精通する行政のスペシャリストであり、プライベートでもさまざまな地域活動にかかわっている。そしてこの地域食堂を、長年見守り続けている。Sさんは、大山さんと議論もする。それが貴重な情報交換にもなる。後日大山さんにうかがうと、「コロナ禍でのフードロス」などを話題にされていたという。内容は以下の通り。

コロナ禍がまん延したこの夏、さまざまな団体や若者たちがボランティアで、足立区内の貧窮家庭・貧困家庭の子どもたちに、食物を届ける活動を盛んに行った。だが、どうも必要な家庭に届いてないケースがある。食物の受け取りに、団体連携ができていないがための重複者が出てもいる。ボランティアする側は、「自分たちは、社会貢献している」という意識が先に立って、自己満足の活動になっていないか。区役所の方でも、本当に必要としている家庭への対応ができているとはいえない。

大山さんは「役所は『個人情報』を盾にして逃げてしまわないで、手立てを考えるべき」、Sさんは「足立区は『森』を見て『木』を見ていない」と指摘。

 

バターのふくよかな香りがただよう。

実習生の1人が取っ手をにぎる大きなフライパンには、たっぷりの卵が艶やかな黄色に焼けている。小柄なAさんが、そこにヘラを挿し込み、「底の方からグッと裏返してから混ぜて」と若者たちにレクチャー。

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