血のつながらない「大家族」の団らん風景
18時前から、参加者が集まって来る。この日は、小学生や中学生、幼子を抱いたり手を引いたりするお母さん方が姿を見せる。ポルテホールでの、母子の参加者は、近隣に滞在する人たちが多い。幼稚園のママ友が誘われたりすることもある。また、地域食堂には、地域のおじいさんやおばあさん、独り者など、さまざまな境遇の人がフイと訪れることも珍しくないという。
料理ができた。実習生たちが、並ぶ参加者たちの茶碗にご飯と味噌汁をよそう。Aさん、Bさん、Hさんが、代わる代わるゆだったジャガイモやスクランブルエッグなどを皿に盛る。私もいただく。「家」の優しい味がする。ご飯もオカズも山盛りでおかわりしてしまう。
大山さんは、子どもたちに次々と声をかけていく。
最前列に座った小学4年5年の兄弟に、「夏休みの宿題、片づけたか?」。
兄が「も~終わった」と元気に答えるなり、ジャガイモにぱくつく。「偉いじゃん!」。弟の方は、おっとりタイプか、ゆっくり口をもぐもぐ。
中学生の女の子が「彼氏できない~!」と、スプーンをぶらりとさせて唐突に嘆くと、「それが青春ってもんよ」と大山さん。
若い女性スタッフを、小学6年の男の子が見上げて「髪染めたね、色変わった?」と、少し生意気。「座ってないで、自分でごはん取りに行きなさいよ」といなされる。
「おかえり~!」とスタッフと子どもたちが一斉に言う。振り返ると、小学5年男の子Rくんがテーブルの間を歩いている。席に着くなり、「お母さんまだ帰ってないの?」と聞く。「まだみたい。今日、お母さんに誕生日プレゼント、あげるんだってね」とスタッフ。「うん」と答える彼に、小学3年の男の子と女の子がまとわりつく。みんなの優しい「お兄ちゃん」であるようだ。
食事を終えた中学生組は、フロアーに隣接する相談室に入りこんでたむろし、スマホをいじったり、冗談を言い合ったり。小学生組は、廊下に出てはフロアーに入って、歓声を上げつつグルグル走る。くつろいだ楽しい雰囲気を前に、「まるで、親戚、いとこ同士みたいですね」と言うと、大山さんは「『兄弟姉妹』以上じゃないかな。何カ月も、同じ時間を過ごしているからねえ」と、しみじみ。
生きづらい者同士、笑って、騒いで、祝福して
大好評だったアスパラガスの肉巻きも、山盛りのツナも、底がつきかけた19時少し前。お開きにしようとしたら、ある母さんが中学生を連れて到着。一町向こうのマンションに住んでいるらしい。この日、「私の仕事の都合で遅れるかもしれませんが、何時には…」というメールを大山さんと何度も交わして、なんとか間に合った。
不登校児で、家から一歩も出ない生活が続いていたらしい。「”がきんちょ”に行く?」と試しに尋ねたら、「行く」ときっぱり言うので、かえって驚いたという。来てみれば、食事もそこそこに、同じ年かさの中学生たちとふざけ合う。あんまりみんなで騒ぐので、「もう帰れよっ、お前たち!」と大山さんが声を張り上げても、笑い声は増すばかり。
そんな喧噪の中、やはり6歳の女の子が、来年小学校に入学するので、買ってもらったランドセルを披露したいと会場に。それを背負ってはにかむ小さな姿に、子どもも大人も口々に「おめでとう!」「可愛い!」と賛辞をおくる。
「あんな残りもので満足したのかしら?」と気になった大山さん、後で不登校児のお母さんに電話で様子を尋ねると、かえってきた返事に微笑む。「あの子、また『行きたい』って…」。
(文責/ライター上田隆)
<問合せ>
“がきんちょ”地域食堂 ちらし(PDF)
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“がきんちょ”ファミリー
Adachiちゃりネット
あだち子ども支援ネット


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