あるフリースクールに通う、不登校の子どもたちにも聞いてみた。インタビューしたのは、朝10時から12時まで。
大勢の前だと、心がふっとうする!
【Mちゃん/小学4年生、女の子】
子どもたちとスタッフとのカードゲームにて、俊敏な動きで1番に「あがり」となったMちゃん。活発で明るい子だ。
「今朝、家で、20画の漢字を3つ覚えてきた(ノートに書いてもらう)『競』と『倉』と…あと一つ、思い出せない。
学校でたくさんの人を見ると、心がパーッとなる。やかんのお湯がふっとうして、パーッとなる感じ(両腕を上げて表現)。3、4人だといいんだけど。親しい女の子は何人かいる。
学校に行ったときは、いつも職員室。アニメでは、『校長先生』って怖いけど、実際には優しい。風邪のとき、『大丈夫?』と声をかけてくれた。特に副校長先生が好き。先生たちは私の味方をしてくれる。勉強では、算数と図工が楽しい。
家ではごろごろしてるかな。食べることが大好き。今日お母さんに、私が考えた『オムハンバーグ』をつくってもらうの!(ノートに書いてもらうと、ハンバーグを乗せたチキンライスに、巨大な卵の黄色い層が覆う!)」。
インスタに熱中、外国ルーツの友だちと遊ぶ
【妹Uちゃん/小学3年生、姉Mちゃん/小学5年生】
2人は姉妹で、大人びた雰囲気。身なりもきちっとして、オシャレ上手のよう。質問には、妹Uちゃんが主に答える。姉Mちゃんは見守る感じで、妹Uちゃんがこちらの意図と違うことを話し出すと、「いや、そうしたことを聞かれてるんじゃなくて…」と注意し方向修正。その様子が微笑ましい。
「男の先生が怒鳴るのが嫌で…私じゃなく、他の子だけど…学校に行ってない。40代の男の先生で、面白くて好きだけど…。他の先生たちも優しいし、声をかけてくれる。
オンライン授業で、金曜日だけ習う先生は教え方も分かりやすい。でも最近は受けてないかな。家では、ママが学校の面談に行ったときもらってきた計算ドリルをやってる。
今、『手ダンス』を自分でつくったインスタにアップしてるの(見せてもらうと、キャラクターで顔を隠した本人が、音楽に合わせて両手を踊らせている。手描きのイラストに色のついた光線が重なる動画バージョンもあり)。お姉ちゃんもインスタやってるよ。将来は、アートの先生か美容師になりたい(姉Mちゃんは「保育士に」)。
家ではやることがいろいろある。親がおばあちゃんの家に行っているとき、弟と妹の面倒を見たし。外国ルーツの子たちが、たくさん遊びに来るのも楽しい。バングラデッシュ、ネパール、中国、韓国の子たちとか。外国のことを聞けるので、話してると面白い」。
「もし今の小学校で、好きなことを学べることになったら行く? 」と尋ねると、「何をやってても行きたくない! 乱暴な子もいるし」と、きっぱり拒絶。「『学校』の中では、ここのフリースクールが一番。ツリーをつくったり、公園に行ったり、ゲームをしたりして楽しい」。
毎日、体育の授業があったら行く
【Kくん/小学2年生、男の子】
他の子と話を聞いていると、目の前の机に、紙飛行機が時々すーっと舞い込んでくる。折っては飛ばしていたのがKくん。物静かな雰囲気だが、動きは活発。
「友だち26人が、『K』『K』と言ってくるので、学校に行きたくなくなった。友だちが多すぎる。1人で遊べないのが嫌。学校に行くときは、個別の教室に行く。少ない人数のクラスなら、学校に行けそうな気がする。
勉強は嫌い。体育が好きで、柔道をやっている。5時から7時まで道場。ランニングをやってから練習をする。いつか、足立区の武道館で柔道をやりたい。弟はやってないよ」。
「学校が、どうなったら行く?」ともう一度聞いてみると、「分からない…」と答えてから、「体育が毎日あったら行く!」と宣言。
家のパーティに、友だちたくさん招く
【Zくん/小学2年生、男の子】
友だちやスタッフの中にいても、ひたすらゲームに没頭。大人しい子かと思ったら、その反対だった。
「どんな学校だったら行く?」との質問には、「1時間目から6時間目まで、体育か算数だったら行ってもいいかな。毎日雪が降って、雪合戦できたらいい。休み時間が10分しかないのがつまらない。仲の良い友だちと、もっと遊びたい」。
家では、生き生き過ごしているようだ。
「ここでもゲームをやるけど、家では3時間ぐらいやる。(手に持つゲーム機を見せて)『スイッチ(Switch)』、やばいよ。(攻略するところが)どこかを発見するのが楽しい。こないだやり始めて2日の夜、クリアするところが『ここかぁ!』と。
家には、めちゃめちゃ友だちが来る。お母さんがパーティしてくれる。今日やんの、イェーイッ! 保育園の友だちも来る。ドミノピザ、マックのハンバーグ、カレー、ポテト、黒いカラムーチョも出てきて、口から火―っ! 僕もお母さんも、辛いものが大好きなんだ!」
<インタビューの感想>
なぜ、学校は変われないのか
今回の事例では、全員が「集団」への拒否反応から「学校に行けない」という点が共通していた。意外だったのは、どの子たちも学校の先生には好印象を持っていること。話の中から、学校なりに「不登校」への対応に苦慮していることを感じる。
お子さんと合わせて話をうかがえた親御さんは、しっかりした価値観をお持ちだった。「不登校」を受け入れ、無理強いせず、お子さんの、その子らしい成長を見守られている。フリースクールのお子さんたちも、このスクールの優れて自由な気風の中で、自分の興味のあることに没頭し、友だちやスタッフとの交流を楽しんでいた。
学校は、体制やカリキュラムさえ変われば、ぐっと「行きたい」と思える居場所になるかもしれない。具体的には、「少人数制」「学びたいことを学べる」といったことを取り入れてほしい。だが、そうした提案や要望は、もうすでに繰り返されている。また、新しい学校の在り方も、近年メディアでどんどん紹介され、フリースクールを奨励することも増えた。それでも、大勢では学校は変われてない。なぜなのだろうか? 学校関係者に聞いてみたいと思う。
(ライター上田隆)
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