子どもたちの「いじめ防止大作戦」

いじめ

人を助け、人とつながる「辰沼しぐさ」

2013年1月、パトロールが定着した頃、次の活動についてTKR班長たちが話し合った。「いじめをなくすには、大人は『思いやりの心を持つことが大切だ』と言うけど、『思いやりってそもそも何か』という議論になりました。喧々諤々の末、『思いやりは、優しさを感じる行動があって、初めて分かる気持ちだ』と結論。そこで、具体的にどんな行動なのかを、全校生徒にアンケートで聞いてみようということになりました。質問は『あなたは、何をされると、人の優しさを感じますか?』です」。

 

アンケートの結果は3つに集約され、後に「辰沼しぐさ」と呼ばれるものに結実した。「仲良ししぐさ」「手伝いしぐさ」「挨拶しぐさ」である。

「ある子の文が印象的でした。小学校1、2年生のとき、足立区一広い校庭の真ん中で転んだ。その時に先輩が『大丈夫?』と助け起こしてくれ、ケガしたところにハンカチを当て、保健室に連れて行ってくれことが、とても嬉しかったそうです。このエピソードが、困った人を見かけたら手助けするという『手伝いしぐさ』になりました。『仲良ししぐさ』は、泣いている人を慰め、一人で寂しくしている人があれば『遊ぼう』と誘おうと勧めるもの。

『挨拶しぐさ』は、おはよう、こんにちは、さよなら、ありがとうを言うこと。相手から挨拶を返されると、自分が認められたと感じて嬉しい、一人ぼっちじゃない、人とつながっていると思えるからだそうです」。

 

「挨拶しぐさ」の理由が深い。しかし、もともと辰沼小学校では、挨拶運動などは実施していなかったそうだ。

「強制しないのが良かった。もちろん朝、門前に、校長である私をはじめ教師が見守りで立ちますよ。だから、いつもは挨拶できる子が、挨拶しないことに気づける。『あれっ、家で何かあったのな?』と思って、担任に頼んで聞き出してみたら、家で虐待を受けていた、ということが分かった。もし、形ばかりの挨拶を強制していたら、その子は『校長先生、お早うございます』とやってしまって見逃していたでしょう。ルールに従わせるなど管理することでなく、子どもの心のありようを見守るのが教育の役割です」。

 

いじめと反対の、楽しい気持ちをつくるイベント

2013年4月以降は、第1期のTKRのメンバーが抜けてしまう。そこで活動テーマは「継続」にシフト。

 

「毎年隊員が変わります。その度に、必ず一つは新しいものを作ってねと。マンネリ化を防ぐと同時に、自分も積極的にかかわっているという主体性を持たせるためです。先輩からつくられたものをなぞるだけではダメ」。

 

強烈で面白いイベントが次々に生まれた。

 

「例えば『フラッシュモブ』。予告なしに音楽を流して、みんなで曲に合わせて踊る、というものです。提案があったとき、さすがの私もとまどい、『いじめ防止とどういう関係があるの?』とリーダーに尋ねました。すると彼は言います。『校長先生、甘いですね。今、妖怪ウォッチがはやって、その中の妖怪体操第一をほとんどの子どもが踊れることが分かったんです。みんなで踊って、楽しかったね、またやりたいね、と楽しい気持ちになったら、昼休みにボコボコにしていじめようということにはなりません。いじめと反対の気持ち、学校楽しいよね、この人優しいよねという気持ちをどんどんつくりたいのです』と」。

校長先生、1本取られてしまった。

 

他には、「TKRブロードキャスティング(いじめ関連のニュースや校内の出来事を、昼の放送で流す)」「いじめ相談・思いやり報告ポスト」「ゆるキャラ『辰ピー』活動(テーマ曲が流れると、辰ピーがハプニング的に登場)」「けん玉選手権」「うどん作り大会」などが実現。

 

「私は子どもたちに、『辰沼小学校では何をやってもいい』と宣言しています。ただ、危ないこと、下品なこと、人に対する悪口、差別的なこと以外は」。

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