「ありのままの自分」見つけるフリースクール

不登校

ルポvol.66 【不登校】

大きな木の下で、親子が背中合わせで本を開き、思い思いの時間を過ごしている。「フリースクール&あだちファミリースペース every tree」(足立区梅田)が掲げるイメージイラストだ。不登校児と保護者が、その一室で安らう姿そのものである。「あなたは、あなたのままでいい」がモットーと語る同スクール代表の小宮久恵さん。インタビューが進むにつれ、知らぬ間にこちらが話し続けていることに気付く。朗らかな笑い声で受けとめられるたび、つい「こんな話題もある」と言いたくなる。胸の奥をひき出す達人かもしれない。

 

娘の不登校の経験を活かして、親子の居場所づくりを

対象は、小中高校生の不登校・行き渋り・保健室登校などの子どもたち、そして保護者である。活動内容の1つは、「フリースクールevery tree」。「何かやってみる」ことも、「何もしない」ことも選べる、ほっとできる居場所だ。もう1つは、「イベント&コミュニティづくり」。保護者であるママ向けのイベントだったり、子どもたちによる展示会だったり、フレキシブルに展開。居場所でありながら、地域を巻き込んだコミュニティづくりを目指している。

 

子ども本人や保護者からの悩みも、直接受け付ける小宮さんは、保育士の経歴を持つ。公立保育園・こども家庭支援センターを合わせて27年間勤務した、その道のベテラン。sscコーチング認定を取得し、NPO法人「キミトツクル」合同代表理事も務める。退職後に、「every tree」を立ち上げたのは、3人のお子さんの1人である長女の不登校の経験を活かしたいからだという。経緯をうかがうと、二世帯の家族ぐるみで、彼女を支える様子が印象的だった。

 

薔薇の画が物語る少女の心のドラマ

「every tree」の壁に飾られている、子どもたちアート作品。その中に、独特のタッチによる無彩のペン画がある。小宮さんの長女が、高校時代、不登校だったときの苦しい時期に描いた作品だ。

 

無数の薔薇が、蕾を膨らませて花の渦となって流れゆく。かたや、不気味な黒い泡が、大空の左側にうごめいている。それを防ぎ止めるかのように、無数の白い袋が、内に風をはらんで次々と舞う。うねる花の波に、大粒の涙を注ぐのは、カッと見開く大きな目…。

 

結局、広々した大空が2/3残る。「未完成だけど…今からは黒い粒をこれ以上かけない」と、後に娘は母に語った。危険な大波を一つ乗り越えた感じがする。この絵の目が、しかと見据えたのは、「ありのままの自分」だったのではないか。そして清流の下の堅い川底は、きっと「親心」。

 

(小宮久恵さんのインタビューは、2025年6月9日、あだちファミリースペースにて行った)

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