ルポvol.63 【居場所】
2畳分はあろうか。バサリと広げた、継ぎはぎの模造用紙に、「らんたん亭」代表の中島正行さんの姿が覆われる。首を出すなり、「『らんたん亭』とは何か?」を、スタッフたちでワークショップしたときの記録です」と言う。目を近づけると、さまざまな色のサインペンで書かれた文字がびっしり。「人と繋がりながら在りたい自分で居られる場」「サードプレイス、無欲の領域展開」「わくわくが行動原理だからこそできる場所←超重要かも」などのメモの集積だ。アイデアをぶつけ合う、若者たちの熱気が伝わってくる。
「『らんたん亭』とは何か?』と、2年間、議論重ねる
「らんたん亭」は、2021年9月、足立区の住宅街(梅田4丁目)に、平屋の古い民家を借りてスタート。以降、いろんなイベントを開催しつつも、方向性が決まらない。それで、自分たちの活動を根本的から問い直すことに。五里霧中の状態で、悶々とした模索した期間が、何と2年間。中島さん自身の自問と、スタッフとの議論を粘り強く続けた末、ようやく「形」がはっきりした。スローガンは、「自分と向き合い、人と繋がる、対話の広場を」に。対象は、「中高生から20歳までの若者」に絞る。活動内容は、「日常の中で文化芸術に触れることで、自分をやりたいと思うことを大切にし、生き抜けるようなサポート」となった。
具体的な支援としては、次の3柱。1つ目は、「中高生カフェ」。中高生対象に、なんと週2~3回の子ども食堂を開催する。そこは、ゆったり過ごせる居場所でもある。2つ目は、「寺子屋」。専門講師を呼んで、個性的な講座を行う。3つ目は、「表現の場」。展示会やライブ、パフォーマンスなど、あらゆる表現活動に触れる場とし、地域にも開く。本文で詳述するが、この3柱が組み合う活動は、出会いと発見に満ちている。また「ハコ」は、中島さん自らとスタッフによるDIYで心地良い木の空間となった。素敵なロフトも手づくりだ。
嵐の中でも消えない「心の灯」を
「らんたん亭」の名前は、「人の心に火を灯していきたい」という希望から発案された。当初は、「灯り」という意味で、「キャンドル」などさまざまなワードが挙げられた。「らんたん」に落ち着いたのは、「嵐の中でも火が消えない」機能を持つからで、「一度授けた火を持ち続けてほしい」という思いを込めた。部屋には、そのシンボルである「ハリケーン・ランタン」の実物が飾られている。
インタビューが一段落して、中島さんに、イラストの参考にする写真を撮らせてもらった。朝方まで、助成金の申請書に格闘していたというが、疲れた様子はみじんもない。ファインダー向こうの笑顔が、あまりにも晴れやかなので、何だか愉快な気持ちになる。ふいにこんなシーンが浮かんだ。帆船は、水しぶきを煌めかせ、颯爽と海に乗り出す。舵取る中島船長の傍らには、前途を照らす「らんたん」が…。
(中島正行さんのインタビューは、2025年3月28日、「らんたん亭」にて行った)


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