被災地支援の「現場力」で、子ども食堂を

子ども食堂
初日はリサーチ不足でさんざん。でも、徐々に経験重ね

コロナ禍なので、親御さんの声も受け、安全を配慮して店内で食べることはせず、弁当を配布することに。そのスタイルは、今もまだ続いています。

 

第1回目は、2021年3月14日(土)。大雨が降り、かつ近場の小学校の登校日が重なってしまい、集まりがいまいち。まさか土曜日に授業があるなんて…。私たちが新しいことをやろうというので、ボクサーや格闘家の方、ボランティアの方もたくさん来ていただいたのですが…まさに私のリサーチ不足。後で気持ちがドヨ~ンと落ち込みました。

 

第2回目は、登校日でない日を入念に調べました。学校のホームページで登校日をチェックしたり、保護者のふりをして直接学校に電話で聞いたり。近隣住宅へのポスティングにも力を入れました。それでなんとか60食を配布。手ごたえを感じました。

校長先生に問われた「継続性」と「平等性」

スタートして半年を迎える頃、本当に支援が必要な子にちゃんと届いているのか、改めて振り返りました。その頃には、80食配布のペースに。足立区公益活動げんき応援助成事業の対象になるというので申請すると無事通り、年間60万円の助成金を受けることに。

 

小学校との連携が課題でしたが、地元の民生員の方と知り合うと、それがスムーズに。彼女が懇意にしている校長先生に、こちらのチラシを置いてもらうよう依頼すると、あっさりOK。ただ、お会いした校長先生の質問が鋭い。

 

1つ目の質問は、「この活動をいつまで続けますか?」。もちろん私の答えは、「続けられる限り。スタートした限り、絶対止める事業ではありませんから」。2つ目は、「限定80食とされていますが、81人目に、すごくお腹を空かせた子どもが来たら、どうしますか?」。それに対しては、「ボランティア20人分の食事も一緒に用意しています。だから、『ごめんね、今日はもうないよ』ということにはなりません」。すると「もし、さらにプラス21人分になったら?」と問われる。そこで、日本航空のCA(キャビンアテンダント)時代の話をしました。「最後のお客様が、『どうしても洋食が欲しい』と言われます。でも和食が2食しかない。そこで和食の中の洋食の具材をかき集めて、1食分の洋食をつくりました。私どもは、こうした臨機応変で乗り切ります…」と(笑)。

 

また、こちらからは、「本当に困っている子たちを取り漏らしてしまってはいけないので、全生徒にチラシを配らせてください」と要望。それで校長先生は、納得されて許可。直接私が出向き、1年1組2組…と、組ごとのプリント箱に、クラスの人数分のチラシを入れ、配布することかできました。

その後、中学校ともつながりができました。小学校とは違い、思春期の悩む子どもたちと日頃かかわる保健室や養護の先生たちに、ピンポイントでチラシを配布。こうした地道な活動で、徐々に認知度も広がって、多くのお子さん、親御さんに足を運んでいただくようになり、現在は120食ほどに増えました(2022年10月現在)。

 

格闘界の方々はじめ、かかわる人たちもさまざまに。天才マジシャン「つくし」さんのパフォーマンスは、子どもたちに大人気でした。「友愛会」(山谷での生活困窮者の支援団体)の田中健児さんは、いろんな分野の方を紹介してくださいます。

 

「子ども舌」に合うメニューを、体に良いレシピに改良

レシピは私が考えますが、メニューを決めるのは、理事長の加藤とイングラムの顧問です。2人は同い年ですが、良い言い方だと「『子ども』が分かる舌」、そうでなければ「お子ちゃま舌」。やきそば、オムライス、ハンバーグ、唐揚げ…とオーダーしてくるたびに、「えっ、偏る!」と。一度、googleで検索してみたんですが、「子どもの好きな献立メニュートップ20」に全部当てはまってました(笑)。

 

そこで私が、バランスの良い食事になるよう、野菜などを多めに入れるなど、副材を決めていきます。足立区の助成金では、健康に良い食事をとサンプルも出していますし。私自身、MSGアレルギー(グルタミン酸などアミノ酸系のアレルギー)を持つこともあり、化学調味料はなるべく使わないよう気を配っています。

 

メニューの中でステーキ弁当は出色で、「ピース食堂」の名物に。アウトドアの巨匠でユーチューバーの田中ケンさんとのつながりで実現しました。彼自身、北軽井沢にキャンプ場も所有されています。また、オージービーフの支援を受け、肉を提供されているとのこと。実は、「ピースプロジェクト」の活動で、東日本大震災や、南相馬の炊き出しでも、田中さんの協力を得てバーベキューをやりましたが、いずれも大好評でした。被災地では、メニューが単調になりがちですので。

 

文教大学「ぶんこ食堂」の立ち上げて、学生をサポート

活動が軌道に乗った1年目のある日、足立区の子どもの貧困課の職員さんから、「学生のボランテイアさんを応援してほしい」と連絡をいただきました。文教大学で国際教養や福祉を学ぶ学生さんが、有志を募り、大学内で子ども食堂を企画していると。私たちと一緒ですよね。まず経験者に聞いてみようというわけです。職員の方からは、「ボランティアさんを受け入れるキャパはありますか?」と尋ねるので、「人手はウェルカム! 1回、こちらの調理を見ていただいて…」と表向きは愛想よく。で、学生さんが来たら、「働け~! 」(笑)。作業後、一緒に「こんな感じ。もし来月、予定が空くんだったら、仕込みの日に来てね」なんてお願いし。

 

2021年12月に「ぶんこ食堂」がスタート。文教大学の「学食」で開催しますが、「ぶんこちゃん」というキャラクターにちなんだ名前だそうです。

 

ただ、立ち上がりが大変でした。初日の前日に、学生さんから私の方に電話がかかってきて、「大学の調理室が使えなくなっちゃったんです!」。調理室を委託してる会社が、「衛生的な問題が起きたら、責任を取りかねる」というわけです。早速、げってんの店長に、調理室を貸してほしいと依頼してみましたが、つくった弁当を運ぶには、大学からはかなり遠いなと。そこでNPO支援活動センターや区役所に連絡して聞けば、「そういう活動なら、割安で借りれる調理センターが近くにありますよ」と教えてもらい、事なきを得ました。

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