グラレコで、つなぐ

コーディネーター
対面相談や団体支援で使えるグラレコ

コーディネーターの仕事では、人から話を聞くことが一番な部分だと思っていて。まずその人が、何をやりたいのか、どう考えているのかを聞き出すこと。私の場合、対面で相談を受けるときにグラレコを使うと、それがよりうまくいく。

 

ある団体代表の方の相談では、「図入りで1枚のチラシにしたら、こんな感じですか?」と活動内容をまとめると、「考えがスッキリした」と。その紙を持って、つながりたい相手に説明しにも行けます。

 

私がアドバイスする必要はまったくありません。ただ話された中で、「こういう部分に熱量を感じましたよ」と指摘するだけ。あるいは、「本人はこう言っているけど、本当に琴線があるのはここかな」というポイントを、文字と絵でフィードバックする。相手がそれを見て、「これが答えだったんだ」「では、こうしてみよう」と、ご自身で気づき、行動に移されます。他人から一から教えて「気づかされる」じゃダメなんです。

 

他者のアイデアを触発するグラレコの神髄

会議やセミナーなど大人数で行う議論を進める上で、グラレコはとても役に立ちます。

 

「まつどみらいカイギ2021」(まつど市民活動サポートセンター主催)で、新しい暮らしスタイルを生み出す対話イベントをまとめたときのこと。銀座環境会議の平野将人さんが、「食料分かち合い」と「食品ロス軽減」を合わせたSDGsの実現として、誰もが余った食料を入れて販売できる「コミュニティ自動販売機」を提案。また、同じような発想で、先進国では「コミュニティ冷蔵庫」があるという話も出ました。イベント後、そのアイデアをシンプルに描いた私のグラレコを見たある方から「ぜひ、『コミュニティ冷蔵庫』をやりたい!」という連絡がありました。このときは、キッチンカーを持つ人に声をかけようということになりまして。

 

グラレコは、みんながそれぞれに思考できるよう、話されたことを見えるところに「置いといてあげる」というイメージです。こちら側が何かコントロールするわけではありません。私が深い考えもなくかき出したものを、いろんな人がさまざまな視点で眺め、アイデアを膨らませていくことができる。

 

「見える化」することで、思考を集中させる

実は、絵を入れないまでも、ホワイトボードをしっかり使えば、会議はスムーズに進みます。「今日のテーマは〇〇」というタイトル、そして「ゴールは〇〇」を書くだけでも全然違う。結構、みなさん、聞いているようで、そうでない。頭の中で違うことを考えている。「今日のお昼、何食べようかな」と思考が飛んだり、ちょっと長くなれば「今、なんの話だっけ?」となったり。その度、ボードを見返すと、話に戻ってこれるわけです。あと、私の方は、会議で出た内容を3つぐらいの議題に分けて書き出しておく。

 

ボード上には、終了時間を「10時から12時まで」と書けばなおいい。すると誰かが気にし出すので、きっちり予定通りに終わります。「ホワイトボードを制するものは会議を制する」と私は思っていて(笑)。

 

脳のキャパシティは限られています。あることについて考えようとするとき、他の記憶が浮かんでくると集中できません。そこで会議では、出された議論を次々に書き出すことで記憶の負担をなくし、思考を新しいテーマに向かわせる。例えば、オセロにハンカチをかぶせると、二手ぐらいしか指せないはず。次の手を出そうとするたびに、盤の上の白黒の配置を全部思い出さなければならないからです。すでに考え出されたことを「見える化」するから、新しいことが考えられる。グラレコは、文字化できない情報も絵にし、さらに意見の関係図を示すことで、その機能をより強く発揮します。

 

個人情報をぼかしつつ、中身を外部に示せる

また、グラレコの利点には、意見を公平に扱えることもあります。議論の場では、権力のある人、声の大きい人の意見に引っ張られがち。しかしグラレコだと、どの人の意見も同じ大きさに並べて書けます。ときたま、独演会のように長く話す人がいますが、私は「書きませんよ。あなたにだけ、スペースを広くとれませんから」と手を止めます(笑)。

 

「コネクトリンク勉強会」でのグラレコでは、新たな気づきがありました。同会で話されたことは、センシティブな内容や個人情報が混じったりするので、報告書の形ではなかなか外に出せません。でもグラレコなら、「この人が言った」とはっきりと特定しないまま、「こんな立場の人から、こういう意見がある」ということを示せます。そのことが「ありがたい」と言われたときは嬉しくて。

 

会議の後、私が仕上げたグラレコを、参加者の皆さんがスマホで撮っていきます。「議事録として誰かに報告したい」とか「SNSに載せたい」とか。どうぞ、どうぞと。そのときは快感ですね。

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