「アート的思考」で、はつらつ育て!

アート
描き方は一切教えず。基礎が身に付く美術教育を

素敵な絵を描く底力となることがあります。

 

一番は、「観察力」ですね。それも、みんなで観察すること。お互い意見して刺激し合うと、「こんな視点があるんだ」と発見できます。例えば、パイナップルを裏返したら、「☆の形があったよ」となる。いろんなことに気づいてくると、「あっ、こう描きたい」「ここが印象的」となリ、どの子も白い画用紙に向かうやいなや、バーッと描き出します。描き出しに困らないよう、とくに「色」「形」は、必ず自分で観察して見つけてもらうように。私から、「リンゴはこう描くんだよ」などとは絶対に教えません。色にしても、赤から、混色してつくる茶色まで、さまざまな段階があるはずです。また、「見る」ことのほか、「触る」「嗅ぐ」「音を聞く」など、五感を全部使ってもらいます。リンゴも、触って叩いたり、匂いを嗅いだり。そして「帰ったら、食べて味わってね」と、1人1個プレゼントします。

 

観察したことを、どう表現するかとなれば「想像力」が必要に。その想像力を鍛えるのに、「音楽」を描く講座も行っています。趣味でフルートをやっていますが、クラシック音楽のワンフレーズを何回も吹いて、「どんな風景が見えた?」「どんな色だった?」と問いかけ、思い浮かんだことを描いてもらう。抽象画のような絵が多いかな。コロナ禍のとき、オンラインでやったんですが、お母さんたちは、子どもたちのイメージ豊かな絵を見て、「大人じゃ、音楽を描くなんてきない!」と感動されてました。ただし描く前に、「音楽」を感じる画家であるカンディンスキー(ロシア出身の画家で、抽象絵画の創設者)やパウル・クレー(スイスの画家、美術理論家)の絵を紹介します。その上で、「まず和音だけで色を考えよう」とプチトレーニングをしてから、クラシックのフレーズに。描くまでの導入を、とても大切にしています。

 

「目」が良くないと、上達しない

そして、「目」を鍛えること。食べたものが体になるように、見たものが自分の栄養になると思うんです。日本の子どもたちはマンガやアニメづけになっているから、それ風の絵ばかり描く。でも、名画ばかり見たら、名画に近い絵を描くんじゃないかと。フランスの子どもたちは、幼い頃から美術館などに行っているのか、描く絵がマティス風であったり、バラエティがあります。それで私も「放課後美術館ツアー」というイベントを企画し、六町ミュージアム・フローラ(足立区六町)に子どもたちを連れ、画家たちの絵を見せています。やはり本物の絵から出るパワーは圧倒的。図版の色と全然違う。「この色こそ、画家は選んで使ったんだな」と感じてほしい。どこまで子どもたちが受け取れるかは分かりませんが。

 

かつて書道の先生に、「『目』がよくないと、上達しない」と言われたことが、ずっと印象に残っていて。今は辞めてしまいましたが、小中高、そして会社員になっても、書道を続けていました。25年間はずっと古典の臨書をやり、やっと最後の3年間にお手本なしで自分の作品を書いたんです。古典をまねることで、「いい形」というものを体に染み込ませていくのは必要だなと。それで名画を模写するレッスンも行っています。

 

絵を描くときは、「心の解放」が大切です。ビシャバシャアートは、まさにそうですね。「なんか、こうしなきゃ」「ああしなきゃ」と思っていたら、全然いい作品なんかできない。気持ちがのって、ぱーっと何かが被雷したとき、素晴らしいものが描ける。それを子どもたちに体感してほしいんです。一方で、「観察」は、キューッと世界が詰まっていく感じ。その「収束」と「解放」の2つのバランスが全部うまくいくとき、描く力がものすごく伸びる。

 

あとは、「描写力」ですが、これは「観察」による「発見」に基づいて、ひたすら描くことで身に付くものです。その際、プロダクト製品の描写もいいですが、フルーツや植物など自然のものの方が思いがけない発見があり、より描きごたえがあると思います。

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