足立で、「出張託児」を事業化したい!

託児

<インタビュー・山岸桃香さん>

 

シングルマザーでも専業主婦でも、厳しい現実に直面

長男が12歳で、小学6年生。その子は、未婚で出産してるんです。生まれたときから、私がシングルマザーなので、孤独を感じることが多かったのかな…。0歳児のときに保育園に預けつつ、ワーキングママとして、保育士の仕事をバリバリしてました。そうせざるを得なかったたんです。

 

保育士として働いていて、子どもの発達とか、愛着関係の形成の大切さを意識しながら、保育園の子どもと接していました。一方で、「果たして自分の子どもに、愛情をたくさん注げているのかな」というモヤ~とした気持ちがわいてくる。何も解決しないまま、仕事に育児、猫の手も借りたいほど忙しい毎日を、何年か過ごしていました。

 

やがて、いい人と巡り会って結婚もし、今度は専業主婦として生活するように。2016年に長女が生まれました。「三つ子の魂百まで」と言いますけど、今度こそ、絶対3歳まで手元で育てて、たっぷり愛情を与えよう思いました。

 

でも、これがまぁ大変。「大好きだよ~、あなたのことが大事よ~」「大丈夫、私がいるから」と言った後、「いい加減にしなさいよ!」「今、ちょろちょろしないで!」と、叱りつけてしまう。思っていたのと、少し違うぞと。

 

それに、専業主婦をやってみると、社会からの疎外感というのがすごくある。働いていると、「あなたが必要だ」と求められます。でも、家にいると、泣いてる子どもを一日抱っこして終わってしまう。何をしても、誰からも感謝されない。子どもから「抱っこしてくれて、ありがとう」とは言われませんよね。気が付いたら、宅急便のお兄さんに、「はい、分かりました」という一言しかしゃべっていない。母親としての生活は、孤独ですごく寂しい…。

 

「子育て」か「仕事」かではない、第三の選択を

当時、保育園には、家庭状況を示すポイントが、「42点」ないと入れませんでした。でも、フルで仕事をしないと合格点に達せず、子どもが預けられない。イヤなら専業主婦しかないという二者択一です。それって間違いじゃないかなって。

 

仕事を優先して、子どもと過ごす時間が少なくなるより、子どもに一生懸命接しながら、社会参加をしていくような選択肢がないといけない、と思ったんです。

 

また、「子どもがいるなら、来ないでください」「静かにしてください」という施設や場所ばかりなのも、悲しいことでした。社会の中でも、子どもは健やかな笑顔で育つべきだし、母親が笑顔でいなきゃいけない。そうするためには、お母さんが子連れで出かけたいところに、保育士の私が、託児する場所をつくればいいんじゃないかと考えました。

 

この2つの想いから、2017年、「NPO出張キッズスペースmamato」を設立。「mamato」は、「ママと(一緒)」という意味です。始めてみれば、お母さんのクチコミで仕事は少しずつ増えています。

 

活動と並行して、保育士としても働き出しました。同じ想いを持つ方と出会い、五反野に託児所付きのワーキングスペースをつくったのです。保育園に入りづらいフリーランスとして働くお母さんも、そこに子どもを預けつつ、仕事ができる。一番下の男の子が生まれる去年まで働いていました。子育ても仕事も、大切にできる場所をつくることに挑戦したのです。

 

保育士の子どもを、託児の仕事に連れ行く「新手法」

出産間もないので、「mamato」の活動は、まだ本格的には動けていません。バンバン現場に行きたいんですけどね。今は、講座を主催されている方からの仕事が多いかな。会場に、保育士を連れて出張して、受講者のお子さんたちの相手をします。

 

最初の頃は、美容院に託児を持っていきました。やってみて分かったんですが、0、1、2歳児だと、セット中のお母さんが向こうに見えるので、そこに行きたがる。お母さんとべったりいたいという子を、保育士が無理やりはがして泣き叫んでしまうのは、本末転倒ですよね。そこで同室の場合、パーテーションを置いて、子どもが遊びに集中できる環境にしました。

 

子育て中の保育士には、あえて子連れで現場に行ってもらっています。大人の保育士が「おいでおいで、遊ぶよ~」と呼びかけるより、その場所に楽しそうに遊んでいる保育士の子がいた方がいい。お預かりしたお子さんは、「何してんのかな?」と興味を持って近づきますから。子ども同士の方が、すぐになじみますし。保育士は、遊びが盛り上がるように仕向けます。

 

「それで仕事なの?」と疑われる人には、自信を持って言います。「すごくいい方法なんです」と。お子さんは遊びを満喫し、親御さんも満足する。また、出産後に仕事をあきらめていた保育士は保育に出られ、自分の子どもも外の世界に触れさせて成長できる。大人にとっても、子どもにとっても、いいことなんです。

 

出張託児の会社をつくり、足立区を「子育てしやすい街」に

託児をつけることで、リフレッシュできたという感謝の言葉をよくいただいています。お母さんが、「ああ、今日は充実した一日だった。自分の時間を持てたから、子どもに優しくしよう」という気持ちになればいいかなぁと。

 

野望があります。足立区のスーパー全部に、託児場所を配置したいですね。30分で終わる買い物も、子どもが「あれが欲しい」「カートに乗りたい」と走り回れば、なかなか終わらない。保育士がいれば、お子さんは充実した時間を過ごし、お母さんも買い物がぐんと楽に。次は、美容院。私もそうですが、託児がついている美容院を、必死に探しているお母さんがたくさんいます。月に一回は行きたいですから。さらに、整骨院。「産後に骨盤矯正に行きなさい」と言われますか、手のかかる赤ちゃんがいれば、行けるわけないじゃないですか。歯科医院もそう。「歯が痛いけど、子どもが診察室にもついてきて…」と、困っている人が多い。

 

素敵なレストランの一角に、お部屋を借りて、託児室にもしてみたいです。そうしたら、1時間2時間、夫婦が子育てを離れて、2人の時間を楽しめます。いつかは全国各地に、部署をつくりたいです!旅行先や出張先などにも、対応することができますから。もちろんその地域の方にも!保育士が出張することで、いろいろな可能性が広がります。

 

料金の設定は、おもちゃの設置料、1回につき5000円。保育士料は、保育士1人につき1時間1700円(保育士は、安全のため2人以上)。現在、足立区で登録している任意団体から保育士に来てもらっていますが、いずれは会社にして、スタッフとして迎えたいです。

 

足立区って、なぜか子どもが、とても多いじゃないですか。うちも4人、妹も5人。知り合いでは、6人、7人いたりとか、子だくさんがざらなんです。この区は、子どもを育てやすい環境ではある。託児の仕事をたくさん増やせば、「子育てしやすい街」として、さらに盛り上がっていくんじゃないかな。私、「足立区愛」も強いんです。

 

なんとしても、事業化して、会社をつくりたい。絶対やります、私!

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