「イスラム」視点で、 外国ルーツの子をサポート

外国人
外国での子育てに迷い、YSCに共感

子ども支援の仕事にかかわるようになったのは、3年ほど前。まだまだ勉強しなくてはという段階です。私が勤めるNPO法人「YSCグローバル・スクール」は、2010年、海外にルーツを持つ子どもと若者のために日本語学習の支援するために設立されました。ここの職員になったのは2018年で、あだち教室を立ち上げる際の最初のスタッフとなります。まずは北千住で開校し、次に綾瀬、そして現在竹の塚のスクールに。毎年異動してますね。

 

「YSC」の名を知ったのは、イタリアに長期滞在していたときです。小学生にあがる前の息子を一人で育てていたのですが、「今後、この子の教育を外国でするのは大変だな」と悩み始めました。私はイタリア語ができないし、自分で日本語を教えるのもおぼつかない。不安が募る中、たまたまネットで、日本に住んでいる外国人の子どもを支援しているYSCの記事を見て、いい活動だなと。まさに今、私が直面していることが、日本に暮らす外国人と同じだと共感したのです。

 

結局、帰国して子育てすることにしました。当時、ムスリム(イスラム教徒)になっていて、モスク(イスラム寺院)にも通い始めます。ムスリムの親やお子さんに接するうち、大変な苦労をされているなと気づきました。でも、私には何かできるわけでもない。

 

あるとき、ふと、日本語教師になれば、外国人を支援できる仕事に就けるのではないかと思い至ります。それで専門学校に入学。幸い勉強も進み、資格を取得。卒業後、要請があった学校で日本語教師の職を得て、働くことに。半年ほど勤務して、YSC足立支所立ち上げのスタッフ募集広告を見つけ、ダメ元で応募…現在に至ります。

 

「日本語」「母国語」の壁が、親子関係をこじらせる

今は、YSCの「あだち・竹の塚教室」で、多文化コーデイネーターとして勤務。日本の高校に行きたい子どもや、中学校に合流したい子どもに教科を教える先生もいます。私は、支援が必要な子どもたちを探しに出かけます。地域のコミュニティなどいろんなところを訪れ、「困っている子はいないですか?」と尋ね回る。電話相談も受け付けています。相談者には、YSCで勉強した方がいいのか、他の組織につないだ方がいいのかなどアドバイス。ソーシャルワーカー的な仕事を受け持っています。

 

外国ルーツの子どもたちが直面する一番の困りごとは、やはり日本語。子どもの頭は柔らかいので、会話は2、3年で修得しますが、学習言語はやはり7、8年かかる。日本語が上手くならず勉強が進まないと「発達障害ではないか」と疑われ、本当はそうでないのに、支援学級や特別支援学校に送られてしまう事例が結構あります。すると将来の選択肢が変わってしまい、その子のためにならない。反対に、実は知的障害があったのに、親がその事実を受け入れず、物事がなかなか先へ進まないケースもあります。

 

外国にルーツを持つ親にとっても、言葉の問題が大きい。日本に長く暮らすと母語がだんだんできなくなる(子どもの場合も、多くは母国語の学習半ばで国を出ている)。日本で働き出せば、学ぶ時間もないので、日本語も中途半端に。両言語に熟達できてないこの状態を「ダブルリミテッド」といい、子育てをより難しくしています。

子どもは学校でどんどん日本語が上手になっても、お母さんはそうでない。またお母さんの母語が分からなくなるので、うまくコミュニケーションがとれない。特に子どもが思春期となったとき、親子で抽象的な概念を使う対話ができないので、いろんなトラブルが起きる。

でも、生きるのに精いっぱいのお母さんに、「語学をしっかりやりなさい」とは言えない。かつて外国に暮らした私自身もそうでしたから。せめて、母語を維持するなんらかのサポートグループがあればいいと思うのですが、なかなかそれもない。

 

こんなケースもありました。子どもは進学したいけれど、親は進学させずに家の手伝いやアルバイトをさせたい。そんな際、私たち支援者が間に入ります。親には、日本で暮らすには進学が就職に有利なことを、将来受け取る給料の額に換算して示したり、高校の学費が幾らでどんな援助が受けられるかなど、具体的に説明します。理解されるまで、何回も何回もです。

ただ日本では、外国にルーツを持つ子の進学は難しい。そもそも日本語ができないと、授業が分からない。都立高校でも日本語の学びを支援するところはありますが、枠が狭い。行政による支援や制度の整備がもっと必要です。

 

日本語のできない親が、子どもを通訳代わりに使うなど、「ヤングケアラー」の問題も起こりがち。学校を休ませて、役所の手続きなどに付き添わせる家庭をよく見かけます。ひどいのは、医療関連のこと。昔ですが、子どもがお医者さんの間に入り、親に向かって「あと何年しか生きられない…」といった癌の告知などをやらされていました。今は病院の意識も変わって、通訳をつけているところは増えているのでしょうが。

 

学校でトラブルとなるイスラムの習慣

私自身ムスリムとして、在日ムスリムが直面することも目の当たりにしています。子どものことで一番トラブルになりやすいのは、やはり学校給食。ムスリムは、イスラム法で合法である食材や料理である「ハラール」しか口にしてはいけません。有名なものでは、豚肉の他、捕獲のため牙や爪のある動物などです。私の息子が通う東京都北区の小学校はムスリムが多く、完全なハラールではありませんが、給食も初めから豚抜き。異文化に理解のある学校で助かっていますが。

 

制服も問題になります。基本的に肌を出してはいけないので、特に女の子は、露出の多い体操服や水着がNG。イスラムでは「アウラ」といって、体の部分で、見せたり触らせてはいけないところがある。人の体の接触についての作法を子どもの頃から教えるのは、最近流行りの性教育に重なる部分があり、「イスラムは先を行っているな」と。

 

子どもはまだ小学生なので、1日5回のお祈りやラマダン(1カ月の断食)はさせていません。しかし、厳格に実践している家庭もあります。他県では、校長室を借りて、日中のお祈りをさせているところもあるとか。イスラムに対する学校側の理解は、少しずつですが広まってはきているようです。

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